デットーリのアスコット

今週末はアスコット競馬場のセプテンバー・ミーティング、金土日の3日間開催です。初日の金曜日にはパターン・レースは組まれていませんが、土曜日は3鞍が行われました。

ところでアスコットのセプテンバー・ミーティング2日目と言えば、ランフランコ・デットーリ騎手が1日の全7レースを制覇した開催。1996年のことでしたが、あれから14年が経ちました。
そして今年、その時ほどではないものの、又してもデットーリ旋風が吹き荒れています。

しかしここはレース順にレポートしていきましょう。

ロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ、2歳、1マイル)は1頭取り消して5頭立て。早くからセシル師がその能力を高く評価していた無敗のフランケル Frankel が3対10の圧倒的1番人気に支持されていました。

そしてレースも一方的、直線に入る手前からトム・クィーリー騎手が抑え切れない勢いで先頭に立ったフランケル、直線では他馬をぐんぐん引き離す圧勝劇。何と2着クランマー Klammer に10馬身の大差を付けて楽勝しました。
4分の3馬身差3着にオブライエン厩舎のトレジャー・ビーチ Treasure Beach 。

フランケルはニューマーケット(新馬戦)、ドンカスター(条件戦)に続く3連勝。ヘンリー・セシル厩舎が久々に送り出すクラシック候補で、師によれば、35年前のウォロー Wollow 以来の2歳チャンピオンの由。
この2カ月で目を瞠るほどの成長を見せ、名伯楽もフランケルの能力を決して隠そうとはしていません。

アメリカで馬主カーリッド・アブダッラー殿下の馬を管理していた故ボビー・フランケル師に因んで命名されたフランケル、2000ギニーには2対1、ダービーには9対2と冬場の本命になることは間違いないでしょう。
今シーズンは、デューハースト・ステークスかレーシング・ポスト・トロフィーを使って締め括る予定です。

フィリーズ・マイル(GⅠ、2歳牝、1マイル)は、来年の牝馬クラシックを占う重要な一戦。1頭取り消して5頭立てでしたが、3頭のクラシック候補が揃いました。

4対5の1番人気は、前走メイ・ヒル・ステークス(GⅡ)を含めて3連勝中のホワイト・ムーンストーン White Moonstone 。2番人気(9対4)にプレスティージ・ステークスのサイスケンズ・セオリー Theyskens’ Theory 、シルヴァー・フラッシュ・ステークスに勝ち、モイグレア・スタッドでは4着に終わったオブライエン厩舎のトゥギャザー Together が5対1の3番人気で続きます。

レースも期待どおり、最後は人気3頭の叩き合いとなり、ゴール前1ハロンで最後方から伸びたホワイト・ムーンストーンが先頭に立ち、食い下がるトゥギャザーの追い上げを首差抑えて優勝。1馬身4分の1差でサイスケンズ・セオリーが3着と順当に納まりました。

ホワイト・ムーンストーンはゴドルフィンのクラシック候補。もちろんサイード・ビン・スロール厩舎の管理馬で、鞍上はランフランコ・デットーリ。
スイート・ソレラ・ステークス(GⅢ)、メイ・ヒル・ステークスと順次クラスを上げながら4戦無敗のホワイト・ムーンストーン、スロール師は同馬をドバイに帰して冬を越し、来春にニューマーケットへ戻ってくる予定。

1000ギニーには6対1、陣営としてはより期待の大きいオークスへは8対1のオッズが出されています。

さてこの開催のメイン・イヴェント、今年のマイル・チャンピオン決定戦とも言うべきクィーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル)。

実は最終登録が締め切られる前、二つのサプライズがありました。第一はオブライエン厩舎がケープ・ブランコ Cape Blanco を登録してきたこと。
凱旋門賞の有力馬と見做されていた同馬、マイル戦への登録は意表を突くものでしたが、結局は出走を断念しています。

第二は、出れば本命に推されたはずのキャンフォード・クリフス Canford Cliffs が取り消してしまったこと。ハノン師は出走を表明していましたし、事前の調教も満足を行くものでしたが、最終登録の直前になって獣医からストップが掛かっての取り消しです。馬体に不安が見出されたとのこと、同馬の目標はブリーダーズカップに変更されました。

ということで最終的にスタートを迎えたのは8頭。イーヴンの1番人気は、今年の2000ギニー馬で前走ジャック・ル・マロワ賞でゴールディコヴァ Goldikova を破っているマクフィー Makfi 。前年の覇者リップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle が11対4の2番人気、ゴドルフィンのポエツ・ヴォイス Poet’s Voice が9対2の3番人気で続きます。

レースはオブライエン軍団のペースメーカー、エア・チーフ・マーシャル Air Chief Martial が引っ張り、これを追走したリップ・ヴァン・ウィンクルが早めに抜け出して逃げ込みを図ります。

しかし最後、後方で待機していたポエツ・ヴォイスが大外から追い上げ、ゴール寸前でリップ・ヴァン・ウィンクルをハナ差捉えて優勝。半馬身3着に伏兵レッド・ジャズ Red Jazz が食い込む大健闘です。
マクフィはまるで別の馬のように動かず、5着敗退。アスコットは相性が悪いのでしょうか。(セント・ジェームス・パレス・ステークスも7着と凡走でしたね)
4着はチーム・オブライエンのもう1頭、ベートーヴェン Beethoven 。

ポエツ・ヴォイスを管理するサイード・ビン・スロール師は余程自信があったようで、事前にデットーリ騎手に勝利宣言をしていたほどでした。
前走グッドウッドのセレブレーション・マイルに続くパターン・レース2連勝。もちろんGⅠは初制覇です。

ところでデットーリ騎手、この日はこれで第3レース(フィリーズ・マイル)から3連勝。メインの後のリステッド戦(第6レース)も含めて1日4勝の快挙です。
14年前の1日7勝には及びませんが、再びアスコットのデットーリ・ディを再現して見せました。

名物のフライング・ディスマウントにも、いつもに増して喝采が贈られたハズ。

ところで土曜日は、アイルランドのゴウラン・パーク競馬場でもパターン・レースが行われています。デニー・コーデル・フィリーズ・ステークス(GⅢ、3歳上牝、1マイル1ハロン100ヤード)。

デニー・コーデル Denny Cordell はポピュラー音楽ファンには馴染の名前で、ロック・ミュージックのレコード・プロデューサーとして高名な方。競馬が趣味で、一時期アイルランドで調教師としても活動していた変わり種です。

そのコーデルの名を冠したパターン・レース、1頭取り消しの12頭立てで行われました。

結果は9対1の伏兵3歳馬シャリーン Shareen が、7対4の本命シーズ・アワ・マーク She’s Our Mark を短頭差抑えて優勝。2馬身差3着にミス・ラー・ディ・ダ Miss laa Di Da の順。

シャリーンはジョン・オックス厩舎、ナイアル・マッキュラー騎乗で、パターン・レースは初制覇となります。
前走ダンス・デザイン・ステークス(8月カラー競馬場のGⅢ)ではオバマ・ルール Obama Rule の2着惜敗でしたが、今回は雪辱を果たしました。その時の3着もミス・ラー・ディ・ダで、今回はオバマ・ルールはドン尻12着惨敗に終わっています。

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