重馬場も快速マシーンを止められず
9月第2週の週末、ヨーロッパ競馬は恐らく1年で最も忙しい週末を迎え、この土日にイギリス・アイルランド・フランスで行われるG戦は全部で20鞍を数えます。内GⅠ戦は8鞍。
これから二日間でそれを全てレポートしていくと思うと気が重くなりますが、焦らずゆっくりと取り掛かりましょう。
ということで、9月9日はイギリスとアイルランドからのレポートになりますが、この項は英国版。最も気になるアイルランドは少しお待ちください。
その英国は二つの競馬場で4鞍のG戦。先ず heavy の馬場で行われたヘイドック競馬場は、いきなり短距離GⅠ戦のスプリント・カップ・ステークス Sprint Cup S (GⅠ、3歳上、6ハロン)から。馬場を嫌って1頭が取り消しての11頭立てとなり、ここは前走ジュライ・カップ(GⅠ)を圧勝したハリー・エンジェル Harry Angel が2対1の1番人気。ニューマーケットは夏の高速馬場でしたが、不安材料は秋の重馬場でスピードが活かせるかにあります。
スタートからエンジン全開がこの馬のスタイルで、スタートからぶっ飛ばしたハリー・エンジェル、陣営と馬券購入者のハラハラドキドキを全く問題にせず、追走する2番人気(9対2)のタスリート Tasleet に4馬身差を付ける圧巻の逃げ切り勝ちでした。4番人気(11対2)のザ・ティン・マン The Tin Man が1馬身半差の3着に入り、紛れが介入する余地はありません。
クライヴ・コックス厩舎、アダム・カービー騎乗のハリー・エンジェルは、これでGⅠ戦2連勝。馬場状態の如何に拘らず、機械のような正確さで6ハロンを駆け抜けました。これにより10月アスコットのブリティッシュ・チャンピオンズ・スプリント・ステークス(GⅠ)のオッズはイーヴンの1番人気。今回2着のタスリートも2番人気で続きます。来年も現役続行が宣言されたことから、2018ロイヤル・アスコットのダイアモンド・ジュビリーのオッズも2対1が提示されました。
ヘイドックのもう一鞍は、スーペリアー・マイル・ステークス Superior Mile S (GⅢ、3歳上、1マイル37ヤード)。こちらも1頭が取り消して9頭立て。ロイヤル・アスコットでハンプトン・コート・ステークス(GⅢ)に勝ち、前走キングジョージに果敢にも挑戦して5着だった3歳馬のベンバトル Benbatl が3対1の1番人気。
8番人気(14対1)のカスペルスキー Kaspersky が逃げ、これを2番手でマークしていた4番人気(8対1)のバレー・コンチェルト Ballet Concerto が捉え、逃げ馬に1馬身4分の1差を付けて優勝。2番人気(9対2)のモランド Morando が4分の3馬身差で3着に入り、先行したベンバトルは6着に沈んでしまいました。
サー・マイケル・スタウト厩舎、リチャード・キングスコート騎乗のバレー・コンチェルトは、これで3連勝。G戦も前走ソールズベリーのソヴリン・ステークス(GⅢ)に続く連勝で、ジワリ、スタウト厩舎の晩成4歳馬の1頭に育ってきました。
土曜日のイギリス、ケンプトン競馬場でも恒例のオールウェザー・コースでG戦2鞍が行われています。タペタ・コースなので馬場状態は standard to slow という発表になっています。殆ど注目されることのないG戦ですので現地からのレポートも無く、ここは簡単に結果だけ。
最初のセプテンバー・ステークス September S (GⅢ、3歳上、ポリトラック1マイル3ハロン219ヤード)は6頭立て。前走はマッセルバーグという無名の競馬場で勝ち上がったケミカル・チャージ Chemical Charge が13対8の1番人気。
3番人気(7対1)のデインヒル・コディアック Danehill Kodiac が逃げ、2番手を追走した本命ケミカル・チャージが抜けると、先行した同じ3番人気のスカーレット・ドラゴン Scarlet Dragon を頭差抑えて人気に応えました。3番手を進んだ5番人気(8対1)のワイルド・ハックド Wild Hacked が4分の3馬身差で3着。
レイフ・ベケット厩舎、オイジン・マーフィー騎乗のケミカル・チャージは、前走がマイナーな競馬場だったとはいえ、5歳の今期はジョン・ポーター・ステークス(GⅢ)で2着、ロイヤル・アスコットでもハードウィック・ステークス(GⅡ)で3着している実績があり、ここでG戦に初勝利しても不思議ではない実力の持ち主と言えるでしょう。
続いてサイレニア・ステークス Sirenia S (GⅢ、2歳、ポリトラック6ハロン)は、1頭がレースを拒否して除外となり8頭立て。芝のG戦で連続2着している実績馬インヴィンシブル・アーミー Invincible Army が11対8の1番人気。
2番人気(11対4)コリンシア・ナイト Corinthia Knight の逃げを3番手でマークした本命インヴィンシブル・アーミー、期待に応えて抜け出すと、粘るコリンシア・ナイトに1馬身半差を付けての快勝です。2番手追走の4番人気(10対1)レイク・ヴォルタ Lake Volta が3馬身4分の3差の3着。
勝ったインヴィンシブル・アーミーは、ジェイムス・テイト厩舎、マーチン・ヘイリー騎乗。6月にニューマーケットで初勝利を挙げ、これが2勝目でのG戦初勝利です。その間ジュライ・ステークス(GⅡ)4着、モールコム・ステークス(GⅢ)と前走ジムクラック・ステークス(GⅡ)は共に2着で、堅実な所を見せていました。
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