今日の1枚(113)

BISのチョン・ミョンフン Myung-Whun Chung 指揮イェーテボリ交響楽団 Gothenburg Symphony Orchestra によるニールセン・アルバムの第3弾に行きましょう。

①ニールセン/歌劇「仮面舞踏会」序曲
②ニールセン/クラリネット協奏曲
③ニールセン/交響曲第3番

これはミョンフン/ニールセン全集の第2弾で、品番は BIS-CD 321 。録音データは、1985年12月13・14・16日となっていて、3曲のどれがどの日の録音かは明らかにされていません。
これまたスウェーデンのイェーテボリ・コンサート・ホールでの収録で、プロデューサーは Lennart Dehn 、エンジニアは Mickael Bergek であることは全てに共通。アルバム・デザインを社長ロベルト・フォン・バール自身が行っているのも同じです。

データでは同じ三日間のセッションで録音されていますが、CDでは3曲にやや収録音量に差があります。
即ち①が最も大きな音量で収録されていて、②③の順に録音レヴェルが下がってくるのが難点。アンプのヴォリュームを低めに設定して①を聴き、②、③の順に徐々にヴォリューム摘みを上げていくと、恰も一晩のコンサートを聴いているように楽しめます。

実際に①と③は、ニールセン自身が初めてイェーテボリ交響楽団を指揮した時のプログラムで演奏された作品の由。また②と③は、ニールセンのイェーテボリ交響楽団との最後のコンサートで演奏されたのだそうです。
以上は Knud Ketting のブックレット・ノーツで最初に紹介されています。

当盤に記載されている使用楽譜は、①②が Samfundet til Udgivelse af Dansk Musik  、③は Kahnt 。

②のクラリネット・ソロはオール・シル Olle Schill という人。イェーテボリ交響楽団の首席クラリネット奏者です。
また後述する通り③の第2楽章にはソプラノとバリトンが使われますが、ソプラノはピア・ラーノヤ Pia Raanoja 、バリトンはクヌート・スクラム Knut Skram とクレジットされています。何故かブックレットには声楽家のプロフィールは一切掲載されていません。

①は4分半ほどの楽しい序曲で、オーケストラの彼方此方から高笑いが聴こえてくるような楽しく馴染み易い音楽。コンサートの開始としても、CDの最初としても絶好のオープニング・ピースですね。

②は、世界初演では難解さ故にあまり評判が良くなかったそうですが、現代の耳で聴くと決して難解ではなく、ニールセン独自の語法が実に魅力的な素晴らしい協奏曲だと思います。

明らかに①③より弦のメンバーを減らして演奏していることが聴き取れる素晴らしい録音。
この曲で使われる打楽器は小太鼓だけですが、まるで「クラリネットと小太鼓のための協奏曲」と呼んで良いほどに大活躍します。クラリネットが中央にクッキリと定位し、小太鼓は中央奥のやや右よりという音場が如何にもホールの良席で聴く感じ。
単一楽章の作品で、前半と後半に現れる二度のカデンツァにおけるクラリネットの鋭くも暖かい音色は蓋し聴きもの。BISを代表する名録音でしょう。

③は「シンフォニア・エスパンシーヴァ」(拡がりの交響曲)という愛称でも親しまれている作品で、そのタイトルのように左右一杯に広がるスケールの大きな音場が聴きどろ。特に金管は左にホルン、中央にトランペット、右にトロンボーンが配置され、ホール後方というより舞台に近い席で聴くイメージに収録されています。

ニールセンはブラームスに影響を受けたとされていますが、第3交響曲は最もブラームスに近い音楽だと思います。特に第2、第4楽章はブラームスのあの名曲を連想させ、ニールセンの6曲ある交響曲では最もメロディックで親しみ易い作品。

第2楽章の最後でバリトンとソプラノの歌詞の無い歌声が入って来ますが、知らずに聴くと度肝を抜かれること間違いなし。スコアには声のパートは夫々クラリネットとトロンボーンで代用しても良いと書かれていますが、当盤はオリジナル通り声を使用しています。声は舞台裏に置くように指示がありますが、ここでは中央奥の遠方から聴こえてくるように設定されています。

参照楽譜
①ウィルヘルム・ハンセン Nr.3230 b
②サムフンデト(品番なし)
③カーント(品番なし)
(③は現在ではウィルヘルム・ハンセンから新全集が出ていますが、当盤の収録はライプチヒのカーント版を使用。ハンセン版のスコアを参照する場合には若干異なる個所があるかも知れません)

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