RPトロフィーと英終戦

昨日の土曜日、イギリスはドンカスター競馬場とニューバリー競馬場でパターン・レースが行われました。パターン・レースのクラスとしては、シーズンのフィナーレです。

ドンカスターのレーシング・ポスト・トロフィー(GⅠ、2歳、1マイル)は英国平場シーズンの最後のGⅠ戦ですが、翌年のダービーを占う上でも重要な一戦。ここ10年を紐解いても、2001年のハイ・シャパラル High Chaparral 、2004年のモティヴェイター Motivator 、2006年のオーソライズド Authorized と3頭がレーシング・ポスト・トロフィー/エプサム・ダービーのダブルを達成しています。

今年は10頭が顔を揃え、2対1の1番人気に支持されたカサメント Casamento が見事に期待に応えました。
4分の3馬身差2着に粘ったセヴィール Seville と更に2馬身差の3着に追い込んだマスター・オブ・ハウンズ Master Of Hounds は共にエイダン・オブライエン厩舎の馬。勝馬と共にアイルランド勢の上位独占で終わりました。
カサメントの相手と看做された2番人気ダンボイン・エクスプレス Dunboyne Express は、道中で他馬と接触する不利もあり5着敗退。こちらは期待を裏切っています。

勝ったカサメントは前走ベレスフォード・ステークス(GⅡ)に続いてのパターン・レース連勝で、これで4戦3勝。唯一の敗戦もナショナル・ステークス(GⅠ)の2着(勝馬パスフォーク Pathforkとは頭差)と、来年のクラシックを狙う存在としてクローズアップされてきたことは間違いありません。

この日はセヴィル1頭がスタンド側を選び、デュバウィ・ゴールド Dubawi Gold が外のグループを引っ張る展開。今回初騎乗となったランフランコ・デットーリは最後の50ヤードでカサメントを先頭に立たせましたが、ここで馬が若さを見せて右に寄れます。そこは名手デットーリ、直ぐさま右ムチで進路を修正し、同馬を勝利に導きました。

調教師ミック・ハルフォードにとってはGⅠ初制覇。馬主シェイク・モハメッド殿下の勝負服がイギリスのGⅠに勝つのは1996年のシャントゥー Shantou (セントレジャー)以来のことです。

しかしカサメントはモハメッド殿下とゴドルフィンの間で合意が成されており、冬場をドバイで過ごした後はゴドルフィンに移籍し、来年のクラシックに備えることが決まっています。もちろんデットーリとのコンビで観衆を沸かせるでしょう。

血統よりはレース振りから見てカサメントの目標はダービーですが、2000ギニーに対応するスピードも充分。2000ギニーには8対1、ダービーには10対1のオッズが出されました。

一方同じ時間帯に行われたニューバリー競馬場では2鞍のパターン・レースが組まれ、これがイギリスの平場シーズンで行われる最後のパターン・レースとなります。

先ずはジョン・スミス・エクストラ・スムーズ・ステークスと表記されていますが、かつてのホリス・ヒル・ステークス(GⅢ、2歳、7ハロン)のこと。旧名で通すことにしましょう。

1頭が取り消して10頭立て。1番人気は7対2のダックス・スカラー Dux Scholar でしたが、ゴール前は逃げ粘ったエルザーム Elzaam を外から追い込んだダックス・カラーと、内を掬ったクランマー Klammer が挟むように並ぶ大接戦。

写真判定の結果、優勝は内のクランマーで、ハナ差2着が外のダックス・スカラー、真ん中を通ったエルザームは首差3着の順。勝馬のオッズは6対1でした。

クランマーはジェーン・チャップル=ハイアム厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗。前走のロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ)ではあのフランケル Frankel に10馬身離されながらも2着した馬。この結果は、フランケルが如何に強いかを証明する好材料でもあります。

騎乗したスペンサーは、“リチャード・ヒルズ(エルザームに騎乗)のムチで叩かれなければ半馬身で勝っていたよ” とコメント。スペンサーにとって残念なのは、クランマーは馬主の意向でこの後は香港に移籍が決まっていること。同馬のイギリスでの最後の一戦となりました。

そして2010年パターン・レースのグランド・フィナーレは、ジョン・スミス・ステークス。と言ってもピンときませんが、旧名セント・サイモン・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン5ヤード)のこと。

8頭立て。ここは7対2の1番人気に支持されたクローワンス Clowance が貫禄を見せ付けました。2馬身差2着はポエト Poet 、更に1馬身半差3着にドリームスピード Dreamspeed の順。

ロジャー・チャールトン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗のクローワンスは、これが今シーズンの2戦目。4月以来のレースで見事復活です。
この日は後方の内でジックリ待機、直線で馬なりのまま進出し、最後の1ハロンで鋭い脚を使っての楽勝でした。

以上でイギリスの平場シーズンが事実上閉幕しました。アイルランドも明日の一戦を残すのみ。11月まで続くフランスも残すは2週間ほどになりました。

間もなくヨーロッパのシーズンは終わりますが、この後は舞台をアメリカやアジアに移し、大舞台はまだまだ続きます。

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