オーストラリアは何処へ行く?

8月20日から4日間、イングランド北部のヨーク競馬場で伝統のイボア開催が行われます。昨日はその初日、大注目のダービー馬オーストラリアが秋に向けて始動しましたが、その前にもう2鞍のG戦からレポートして行きましょう。
ヨーロッパ北部は比較的天気が安定しているようで、馬場は good to firm 、所により good と走り易いコースだったようです。

最初は2歳戦のアコーム・ステークス Acomb S (GⅢ、2歳、7ハロン)。2頭が取り消して10頭立て。各陣営が有力馬を試してくる中、リチャード・ハノン厩舎のバサティーン Basateen が6対4の1番人気に支持されていました。前走2戦目のドンカスターで初勝利を挙げた馬ですが、2着以下に8馬身差という圧勝で本命に祭り上げられています。
レースは人気薄(33対1、7番人気)のトゥークールフォースクール Toocoolforschool が逃げ、ゴール寸前まで粘ってあわや大穴かと思われましたが、先行していた5番人気(16対1)のダッチ・コネクション Dutch Connection がゴール寸前で頭差逃げ馬を捉えていました。1馬身4分の1差でバサティーンが漸く3着、いずれにしても波乱の結末です。2番人気(2対1)ジャマイカ Jamaica は4着、3番人気(6対1)のグロウル Growl も7着。

チャールズ・ヒル厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗のダッチ・コネクションは、ソールズベリーのデビュー戦が3着、そのあとヘイドックで2着、前走グッドウッドの7ハロン戦で初勝利と、経験を重ねる毎に成長してきた1頭。陣営は今期既に4戦を消化したので、あと1戦で終戦にする由。1マイルをステイする可能性はあるものの、それを試すのは未だ先のこと。フランスかニューマーケットでGⅠに挑戦することになりそうです。

続いてセントレジャーのトライアルとして最も権威のあるグレート・ヴォルティジュール・ステークス Great Voltigeur S (GⅡ、3歳、1マイル4ハロン)。10頭の登録がありましたが、本命になるはずのダービー2着馬キングストン・ヒル Kingston Hill が取り消したため9頭立て。繰り上がるように前走ハミルトン競馬場のリステッド戦に勝ったポストポーンド Postponed が5対2の1番人気に上がっていました。
レース前に激しく焦れ込んでいた最低人気(40対1)のオデオン Odeon が逃げ、ポストポーンドは先行策。残り2ハロンで先頭に立った本命馬は、最後方から追い込む2番人気(7対2)でゴードン・ステークス(GⅢ)勝馬のスノー・スカイ Snow Sky に2馬身4分の1差を付けて人気に応えました。8馬身もの大差が付いて逃げたオデオンが3着、上位2頭の力が抜けている印象です。というか、3着以下は問題外。

ルカ・クマニ厩舎、アンドレア・アズテニ騎乗のポストポーンドは、前々走ロイヤル・アスコットのターセンテナリー・ステークス(GⅢ)に挑戦して3着だった馬。これがG戦初勝利となりますが、セントレジャーには登録が無く、出走する場合は多額の追加登録料を支払う必要があります。クマニ師は同馬の距離適性を1マイル半と見ていて、セントレジャーに向かう可能性は低そう(いずれにしても最終判断はオーナーがすること)です。
一方2着したスノー・スカイは間違いなくセントレジャーが目標で、オッズは7対1となっています。

そして愈々ジャドモント・インターナショナル・ステークス Juddmonte International S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン88ヤード)。6頭が出走し、冒頭に紹介した英愛ダービー2冠馬のオーストラリア Australia が8対13の1番人気。
相手は決して楽ではなく、5対1の2番人気に並んだ2頭はエクリプス・ステークスを制したムカードラム Mukhadram と、キングジョージ2着のテレスコープ Telescope 。何れも古馬で、オーストラリアには初めての挑戦でもあります。更に4番人気(12対1)ながらザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby は仏ダービー馬、今年の欧州ダービー3勝の豪華メンバーでもあります。
更にオーストラリアにとっては難問も。主戦騎手のジョセフ・オブライエンは背が高いこともあって体重が重く、今回の8ストーン12ポンドは騎乗できるギリギリ最低限の負担重量。陣営ではジョセフに余り無理をさせたくないこともあり、乗り替わりを検討していた時期もありました。
それに加えオーストラリア自身も食欲が旺盛で、英ダービー制覇時点から比べて20キロほど体重が増加、明らかに太目残りの状態であることをエイダン・オブライエン師が公表していたほど。そんなに人気にしないで欲しい、という意向もあったのでしょうが、事前に馬体重増を数字で示すのは、ヨーロッパの競馬では珍しいことと言えるでしょう。

しかし、そうした死角は全て杞憂に終わりました。本命馬のペースメーカーを務めるキングフィッシャ Kingfisher がペースを作り、オーストラリアは一つ前のザ・グレイ・ギャッツビーをマークするように最後方待機。2番手を進んでいたムカードラムが残り3ハロンで先頭に立ちましたが、大外に回したオーストラリアが一気に末脚を爆発させると、一足遅れて追い込んだザ・グレイ・ギャッツビーに2馬身差を付ける圧勝で人気に応えています。更に2馬身4分の1差でテレスコープが3着に入り、ムカードラムは4着。
騎乗したジョセフは、“エプサムで騎乗した時には2歳馬か、やっと3歳になった馬という印象だったが、今日は5歳馬みたいな風格があった”とコメント。太目残りというより馬の成長度を感じていたようです。

そこで凱旋門賞、というのが日本の感覚でしょうが、陣営では次走をレパーズタウンの愛チャンピオン・ステークスに置いていることを明言。そのあとはクィーン・エリザベスⅡ世かチャンピオン・ステークスで、マイル王キングマン Kingman との夢の再対決(英2000ギニーでは2・3着)を視野に入れている様子。実現すれば今期最大の話題になることは間違いないでしょう。
凱旋門賞に向かう可能性もゼロではありませんが、ヨーロッパでは必ずしも凱旋門賞が最大目標になる訳ではありません。それでもオーストラリアの凱旋門賞オッズは6対1に上がり、オーナーがフランスの賞金に目が眩む可能性が無いわけではなさそうです。日本のファンもオーストラリアが何処に行くのか気になるところ。

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