今日の1枚(117)
バイエルン放送交響楽団 Symphonienorchester des Bayerrischen Rundfunks の創立60周年記念セットの2枚目は、1961年から1978年まで首席指揮者を務めた第2代ラファエル・クーべリック Rafael Kubelik が指揮した1枚で、ブルックナーの交響曲第8番。
BR Klassik レーベル、品番は 900703 。長大な作品ながら1枚に収まっています。収録時間は78分12秒。
ブックレットの記載データによると、1977年5月12日、ミュンヘンのヘラクレスザール Herkulessaal, Munchen でのライヴ。アナログ方式によるステレオ録音。
プロデューサーは Friedrich Welz 、エンジニアは Martin Woehr で、ヨッフム盤のスタッフとは変っています。
ホールの響を重視した録音コンセプトはステレオになって一層自然なものになっていますが、放送録音故の限界が感じられるのも事実でしょう。
オーケストラの配置は明瞭で、特に弦楽器はクーべリックが好んだ対抗配置になっているのが良く判ります。即ち弦群は左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、右端に第2ヴァイオリンと並び、コントラバスは左、第1ヴァイオリンの奥に置かれています。
ブックレット解説(Alexander Heinzel)にはバイエルン放響の日本公演についても触れられていますが、このコンビは1965年と1975年の二度、我が国を訪れていますね。
私は最初の来日はテレビとFMで、二度目は実際にナマで聴きました(一回は日比谷公会堂で!)。
(1975年公演の際のプログラム誌には同団創立以来の演奏曲目が掲載されていて、とても貴重なもの。上野文化会館の資料室で閲覧することをお勧めします)
当盤に収められているのは、二度の来日より後のもの。クーべリック時代の最後を飾る演奏会でのライヴです。
ブルックナーの第8交響曲は初来日の演奏会(大阪国際フェスティヴァルの開幕コンサート)でも取り上げられましたし、私も放送をオープンリールのテープ・デッキに録音して繰り返し楽しんだものです。演奏はその時とほとんど同じだと思いますが、テンポはやや遅くなっているような気もします。
この盤も会場ノイズは全くと言って良いほど無く、演奏終了後の拍手も入っていません。レコード用に収録した演奏とほぼ同じレヴェルで、技術的なミスもほとんどありません。オケの性能の良さが証明できるディスク。
ブックレットにはレオポルド・ノヴァーク版使用と書かれていますが、これは真っ赤な嘘で、ハース版に一切手を加えずに演奏しています。スコアを参照して聴けば判ること。
ドイツと雖も、内容をキチンとチェックせずに商品化してしまう体制の劣化が窺われて面白いですね。
版については曲により良し悪しがありますが、私は第8交響曲に関しては断然ハース版が好きです。ノヴァークが何と貶そうとも・・・。
その意味でも、当盤はハース版第8交響曲の重要な記録と言えましょう。
参照楽譜
ブライトコプフ&ヘルテル Nr.3622
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