今日の1枚(54)

暖かいのを通り越して暑い位になっています、今日の東京。反動が怖いですね。
さてベイヌムのデッカ録音シリーズ、いよいよ最終回。明日からはフィリップス録音に移りますが、その前にこれです。

UCCD-3527(440 0632) オール・ブリテン。
①ブリテン/「春の交響曲」作品44
②ブリテン/歌劇「ピーター・グライムズ」四つの海の間奏曲作品33a
③ブリテン/青少年のための管弦楽入門作品34

全てエドゥアルト・ファン・ベイヌム指揮コンセルトへボウ管弦楽団で、デッカのモノラル録音。このディスクでは「ロイヤル・コンセルトへボウ」となっていますが、当時「ロイヤル」は付いていませんでしたから、訂正しておきましょう。

①1949年7月9日
②と③は1953年9月

①はブックレットにも紹介されている通り、この作品の世界初演時のライヴ録音です。従ってデッカが収録したものではなく、以前に連続して取り上げたベイヌム・ライヴ録音集と同じ放送用の記録音源と思われます。
アムステルダムのオランダ音楽祭の一環で、共演しているのはジョー・ヴィンセント(ソプラノ)、キャスリーン・フェリアー(アルト)、ピーター・ピアーズ(テノール)、オランダ放送合唱団、ロッテルダム聖ヴィリスブロルドゥスケルク児童合唱団とクレジットされています。
児童合唱団との表記ですが、原語では Boy’s Choir of the St.Willibroduskerk in Rotterdam 。少年合唱団と表記した方が正しく、彼らは口笛も吹きます。

世界初演の記録ということで極めて史料価値の大きな録音ですが、録音状態は劣悪で、普通に鑑賞するには無理があります。
初演ながら極めて正確な演奏で、その感動は十分に伝わってきます。
第4部フィナーレ、練習番号23の7小節目で大きなノイズが入ります。熱演のあまりマイクロフォンに指揮者の手が触れてしまったのでしょうか。
最後の拍手の感じから、演奏は成功だったことが伺われます。

②と③は、デッカのモノラル最後期の収録だけに、当時のハイファイ録音。クレジットされていませんが、恐らくカルショー/ウィルキンソンのコンビでしょう。
演奏も気迫満点。特に②はこの曲のベストに挙げても良いでしょう。
第1曲で練習番号2の7小節目、ヴァイオリンの一人がフライングして1小節早くEの音を出してしまったり、第3曲の最後から9小節目で木琴が音を一つ余計に叩いたりするミスがそのまま収録されていますが、演奏の流れと勢いを重視してそのままディスク化したのが成功していると思います。恐らく編集なし、一気にテイクしたのでしょう。

③はナレーションの無いバージョン。本盤表記の「青少年・・・」というより、「ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ」と称すべき内容。スコアでもナレーション無し版を完璧に演奏しています。
なお②と③はオリジナルのLPでは LXT 2886 で初出したもの。ピーター・グライムズでは間奏曲集の他にパッサカリアも含まれていました。これが当CDではカットされているのが真に残念。
また②はベイヌムにとって二度目の録音で、旧録音も間奏曲集とパッサカリア。同じくコンセルトへボウとの録音で、K 1702/4 のSP3枚6面に収められていました。こちらもCD化されているはず。
このブックレットには「春の交響曲」の対訳が附されていて大変に便利。
貴重な記録と名演・名録音、お得な1枚。①については初CD化と謳われています。

参照楽譜
①ブージー&ホークス No.66
②ブージー&ホークス No.83
③ブージー&ホークス No.606

 

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