今日の1枚(40)

夜明け前、東京では軽度の地震がありました。寝惚け眼で「五七の雨に・・・」などと考え、“七つだから雨だ”など思いついたら本当に雨が降り出しました。こういう「謂れ」も案外当たるもんです。

さて今日の1枚、ベイヌムが一段落したので他を、と考えましたが、思い直して暫くベイヌムに拘ります。今回からはライヴではなく、正規にスタジオ録音したもの。古いものから取り上げることにして、まずデッカ最初期のSP録音です。

①バルトーク/管弦楽のための協奏曲
②ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

いずれもエドゥアルド・ヴァン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団。このディスクは、確かデッカ創立50周年を記念して古いカタログを廉価で再発売したシリーズもの。日本独自の企画だったと思います。
ポリグラムの1998年12月の発売、POCL-4588(460 914-2) という品番。データ等は、
①1948年9月20日
②1946年6月と7月
いずれもアムステルダムのコンセルトへボウでの収録。プロデューサーは Victor Olof 、エンジニアは Kenneth Wilkinson とクレジットされています。

どちらも1940年代の終わり、録音としては現在では鑑賞に堪えるレヴェルではありません。従って、歴史的価値に意義を見出せるモノ。
因みに、①の英初出は、AK 2042/6 の5枚組SP、②は K 1727/30 の4枚組み8面のSPでした。

①はレコード音楽百科事典第一巻には3種の録音が掲載されており、ベイヌム盤はライナー/ピッツバーグ響(米コロンビア)、コロディ/ブダペストフィル(スプラフォン)と共に最初期の録音の一つ。
第5楽章のコーダは、普通に演奏されている長い方のエンディングが使われています。
第2楽章中間部の手前(122小節と123小節の間)と、第5楽章の316小節と317小節の間にパウゼが入るのは、あくまでもSP録音の収録時間の関係。実際には続けて演奏されるはずです。

②はストラヴィンスキーが絶賛したと言われる録音。これを聴いて改訂を思い立ち、現行の1947年版が出来る切っ掛けになったもの。
ということは、ベイヌム盤はオリジナル版(1921年版)による演奏。
手元の1947年版と比較すると、最後の「いけにえの踊り」のラスト、練習番号186から189までの弦楽器が、1947年版では弓(アルコ)なのに対してオリジナルではピチカートで演奏されていることが聴き取れます。

この日本盤の解説(F氏)では、“21年版と47年版との差異はさほど大きくない”という記載があるだけ。改訂の経緯やベイヌム盤の使用楽譜に関する言及は一切ありません。
劣悪な録音状態にも係わらず、歴史的資料としての存在意義の大きいディスク。特にストラヴィンスキーは、歴史家や好事家にとって避けて通れない録音。

参照楽譜
①ブージー&ホークス No.79
②ブージー&ホークス No.638(1947年版)

 

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