今日の1枚(134)

オランダQディスクのメンゲルベルクのラジオ・レコーディング集10枚組、いよいよ最後の1枚になりました。貴重なマーラーの交響曲第4番のディスク。
1939年11月9日の演奏、8枚目に収録されていたブロッホのヴァイオリン協奏曲と同じ日のライヴです。

ソプラノ独唱は、ヨー・ヴィンセント Jo Vincent 。当セットの解説には詳しい紹介はありませんが、以前ベイヌムのライヴ録音を取り上げた時に何度か登場したソプラノです。
1898年生まれ、1989年に91歳で没した方で、宗教音楽やリードが活動の中心。ベイヌムとはシューベルト(シリーズ25)やブリテン(「春の交響曲」の世界初演)で共演していました。

メンゲルベルクは最も早くからマーラー作品に注目した巨匠。マーラー自身を何度もコンセルトへボウの指揮者に招き、共にその作品の紹介に努めてきました。
マーラー本人もメンゲルベルクを高く評価し、自分の指揮以上の素晴らしさと讃えています。

メンゲルベルクのマーラー演奏もまた作曲者の意図を忠実に反映したもので、その意味でも第4交響曲の録音が残されていたのは幸いです。
当ディスクの録音も、セット中では音質良好の部類。マーラーを如何に演奏すべきかの絶好な手本と言えましょう。

現在一般的に行われている演奏よりテンポは速目。拍手や楽章間の休止を含めて57分半に収まっています。
後継者ベイヌムはこれを52分で演奏しましたが、メンゲルベルクは歌うべき個所はたっぷりとしたテンポを採っているので、ベイヌムよりは時間を長くかけています。(これと比較すると、ベイヌム盤が素気なく聴こえてしまうのは止むを得ません)

ベイヌム盤(シリーズ42)で指摘した第2楽章のトライアングルの位置と、第3楽章のヴィオラ・ソロについてはメンゲルベルクも全く同じ処理です。
ということは、これはコンセルトへボウの伝統、即ちマーラー自身(コンセルトへボウで何度も第4を振っていました)の書き込みを踏襲している証拠だと思われます。

比較のためにコンセルトへボウ以外の演奏を聴いてみましたが、トライアングルについてはスコア通りの演奏もあり、ヴィオラ・ソロについてはコンセルトへボウ版と同じ処理もあるようです。あるいはヴィオラについては手元のスコア(インターナショナル・ミュージック版)の単純な印刷ミスかも知れません。いずれ最新の改訂版などで検証してみたいと考えています。

参照楽譜
インターナショナル・ミュージック・カンパニー(ニューヨーク)

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