今日の1枚(141)

暫くメンゲルベルクを聴いてきましたが、私の手元にはあと2枚、巨匠の録音が残っています。いずれもテレフンケン原盤をナクソスがCD化したもので、れっきとしたセッション録音。

その1枚目がこれ、ブラームスの大曲をカップリングしたものです。

①ブラームス/交響曲第2番
②ブラームス/交響曲第4番

どちらもウィレム・メンゲルベルク Willem Mengelberg 指揮、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団 Concertgebow Orchestra of Amsterdam の演奏で、ナクソス・ヒストリカルのモノラル盤は 8.110158 という品番、2001年の発売でした。

録音データは、①が1940年4月4日、②は1938年11月30日。いずれもコンセルトへボウでの収録。プロデューサーやエンジニアの名前が記されていないのは、これまでのメンゲルベルク録音と同様です。
ただ、当盤にはナクソス自慢の復刻プロデューサーとして Ward Marston の名が刻まれ、ブックレットには彼の経歴についても紹介があります。解説(Ian Julier)は英語のみ、他にメンゲルベルクのブラームス演奏に関してと、当盤に関する Producer’s Note が掲載されています。

両曲とも収録は1日で終了しているようですが、当時はSP盤の面毎にテイクしていたはずで、相当にハードな作業だったと想像されます。
各曲のSP初出は、①がテレフンケンの SK 3075/9 の5枚10面、②は SK 2773/7 の同じく5枚10面で、当データはジャケットに記載され、WERMでも確認できました。
更に当ジャケットにはマトリクス番号も表記されていて、①は SCH 024858-67 、②が 023703-12 となっています。

いずれも録音年代を考慮すれば当時の優秀録音でしょう。戦前のテレフンケンは最も優れた技術を擁するレコード会社でした。

①と②を比べると、1年半ほど先行している第4交響曲の方がマイクを近くに設定しているようで、各パートともオンに録られています。一方第2交響曲はホールの響をより多く取り入れた設定で、ホール中央で聴くようなバランスに仕上げられているのが判ります。

メンゲルベルクのブラームス演奏は、ベートーヴェンのようにスコアに手を入れることはほとんどなく、ほぼ楽譜通りに演奏されています。その点ではフルトヴェングラーやトスカニーニ以上にスコアに忠実な解釈と言えましょう。
また全体的にテンポが速目なのも意外なところで、メンゲルベルクに対する先入観を修正させられます。

①では、第1楽章の繰り返しは省略。この楽章では展開部後半のトロンボーンが他の演奏以上に大きくクローズアップされているのが特徴。具体的には、254~257小節、266~269小節、274~281小節が該当します。

②も思いのほか淡泊。特に第2楽章の弦楽アンサンブルの美しさは特筆すべきでしょう。
第3楽章のトライアングルも出過ぎることなく捉えられ、聴き取り可能。実演ではもう少し聴こえるはず、という位のバランスです。

第4楽章では、フルート・ソロ(バルワーザーでしょう)の直前の変奏(89~92小節)のヴィオラ→チェロの動きが美しく、最後の変奏に入る手前(213~216小節)のヴィオラがクッキリと浮かび上がるのも聴きどころ。

また170小節のトロンボーン(sf)をスコア指示の1拍目ではなく2拍目に移動していますが、これが私が気付いた唯一の改編。このフレーズは他が全て2拍目にアクセントがあり、メンゲルベルクは不自然だと判断したのかも知れません。漠然と聴いていると見逃してしまいそう。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.131
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.133

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