今日の1枚(144)

BMG Classics が1999年に発売した Arturo Toscanini, The Immortal の2CDシリーズ第6巻、様々な交響曲を収録したセットの2枚目は以下のもの。

①シューマン/交響曲第3番
②ドヴォルザーク/交響曲第9番

全てアルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団の演奏で、CD番号は昨日と同じ 74321 59481-2 。20ビット・リマスター盤です。

それぞれのデータは、
①1949年11月12日 NBCスタジオ8-H(放送録音)
②1953年2月2日 カーネギーホール

なおトスカニーニの録音は、プロデューサーやエンジニアの名前はクレジットされていないのがほとんどのようです。

①は当セットでは最も古い録音。他に比べて高音も硬く、オーケストラ各パートの分離もイマイチで、やや聴き辛いのが難点です。あまりアンプのヴォリュームを上げると煩く感じますし、下げ過ぎると細部が明瞭に聴き取れません。

悪名高いスタジオ8Hで行われた放送用コンサートのライヴ録音らしく、聴衆のノイズも入っています。

時代を反映してシューマンのオーケストレーションにかなり手が加えられているのが特徴。かつて知人からマーラー版による演奏だと指摘されたことがありますが、ブックレットを読むとマーラー版ではないようですね。
私はマーラー版を所有していないので具体的には判りませんが、第63小節から70小節までのファゴットの音型にホルンを重ねる箇所とか、367~370小節のホルンをゲシュトプフで吹かせる所など、噂に聞くマーラー版とよく似た処理がなされているようです。

他に第1楽章ではティンパニを省略させる(例えば第3小節から13小節まではずっと休ませています)改訂もありますし、確認はできませんが、第2ヴァイオリンのパートをヴィオラに移行し、第2ヴァイオリンは第1ヴァイオリンに重ねて旋律線をより明瞭に際立たせるというテクニックも使っている由。

第2楽章の繰り返しは全て実行。
第3楽章の最後では、第52小節の第2ヴァイオリンとヴィオラのピチカートを1小節前倒しして51小節目の8分音符をピチカートで奏させているのが面白いところでしょう。
第5楽章のコーダでは、第1楽章とは逆にティンパニの追加が聴かれます。

②は、LPで発売された時から同曲の決定盤とされてきた名演。現在でも最も誠実でスタンダードと呼ぶに相応しい演奏でしょう。

トスカニーニはこの曲を1938年、1941年、1950年にも録音しているそうですが、当盤に含まれる1953年盤は録音としても当時の最高水準の音質と言えましょう。
ティンパニの生々しさなど真にスリリング。

繰り返しについては、第1楽章は省略、第3楽章は実行。当時のスタンダードな処理です。

参照楽譜
①オイレンブルク No.408
②オイレンブルク No.433

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