アメリカ競馬に挑戦

ヨーロッパの平場シーズンが始まるまで未だ大分間があります。その間の退屈凌ぎ、と言う訳でもありませんが、今年からアメリカの競馬についても取り上げていこうと思いましてね。
新たに「アメリカ競馬」というカテゴリーも作りました。

とは言ってもヨーロッパ競馬が始まれば忙しくなるでしょうから全てを追いかける時間は無いと思います。あくまでも風の向く儘、気の向く儘。

そもそもアメリカ競馬は詳しくありません。ど素人と言ってもいいほど。
1970年代はセクレタリアート、シアトルスルー、スペクタキュラービッドなど錚々たる名馬が登場し、小欄もアメリカのレース体系を調べたり、現地から競馬誌を取り寄せたりもしたものです。

しかし馬のことにばかり首を突っ込んでもいられなくなり、浦島太郎状態に。
そこでリハビリを兼ねて、アメリカ競馬を一から勉強する積り。勉強とは聞こえが好いかも知れませんが、要するに道楽の世界ですな。

さてアメリカ競馬と言えばこんなイメージがあります。

・主にダート競馬が中心で、各競馬場もメインはダートコース。その内側に芝コースが設けられている。
・全ての競馬場が左回り。しかもコースは一周1800メートルほどで、平坦な楕円形コース。
・競馬は州単位。大雑把に東海岸と西海岸に分かれ、交流があるのはクラシック・レースとブリーダーズカップの時くらいのもの。
・レースは1800メートルが中心で、長距離レースは極めて少ない。半面、スプリントは6ハロンが中心で、5ハロンはほとんど無い。
・レースは1年を通して行われ、ステークス(重賞レース)は土曜日が中心。日曜日にも若干のステークスが組まれる。
・いわゆる「G」レースはヨーロッパより遥かに数が多く、ハンデ戦もGの対象。またGは Grade のことで、ヨーロッパの Group とは意義も目的も異なる。
・レース内容は逃げ切りか先行差しがほとんどで、先行力のあるスピード馬でないと勝負にならない。
・三冠レースは五月から六月にかけての一か月半ほどの間に全て行ってしまう。故に三冠馬はなかなか出ない。

こんなところでしょうかね。

以上を前提として、Gレースを中心に、気楽にレポートする予定です。

早速始めますが、その前にイギリスから驚愕ニュースが飛び込んできました。
現在イギリスは障害競走が最盛期で、平場は所謂ポリトラックのみ。その障害開催が行われている昨日(12日)のニューバリー競馬場でのこと。
第1レースが始まる前のパドックで2頭の馬が不審死しているのが発見された、というのですね。どうやら感電死だそうで、詳しいことは英国競馬協会で調査中とのこと。
第1レースは何とか行いましたが、第2レース以降は安全(馬も人も)に鑑みて中止になっています。

このニュース、イギリスはもちろんアメリカのスポーツ誌でも大きく取り上げられていますが、何故か現時点では日本では一切報道されていません。ホント、日本て不思議な国です。

気を取り直してアメリカに行きましょう。12日は4つの競馬場で6つのGレースが行われました。
タンパ・ベイ競馬場 Tampa Bay ではサム・F・デーヴィス・ステークス Sam F.Davis とエンデヴァー・ステークス Endeavour 。
サンタ・アニタ競馬場 Santa Anita はロバート・B・ルイス・ステークス Robert B. Lewis とサンタ・マリア・ステークス Santa Maria 。
ガルフストリーム・パーク競馬場 Gulfstream Park のガルフストリーム・パーク・スプリント・チャンピオンシップ Gulfstream Park Sprint Championship と、ゴールデン・ゲート競馬場 Golden Gate のエル・カミノ・リアル・ダービー El Camino Real Derby 。

タンパ・ベイはフロリダの競馬場。南部のガルフストリームに対し、こちらはフロリダ中央部タンパに位置するコースです。
サム・F・デーヴィス・ステークスは3歳のGⅢ戦で、1700メートル。この競馬場で行われるタンパ・ベイ・ダービーのトライアルになります。最近ではここからケンタッキーダービーに向かう馬もいる由。
今年の勝馬はブレスレン Breathren 。これで3戦無敗、三冠レースを目指す器として注目されます。
二番手から馬なりで逃げ馬を捉え、直線では追ったところ無しで2着以下に4馬身は大物感充分でした。

エンデヴァー・ステークスは4歳上牝馬のGⅢ。芝の1700メートル戦で、2000年創設の比較的新しいレース。
今年の勝馬はシルヴァー・レユニオン Silver Reunion 。騎乗したラモン・ドミンゲス Ramon Dominguez 騎手は本拠のニューヨークからフロリダに飛び、この日のタンパ・ベイのステークス3レース全てを攫ってしまいました。さすが名手(上記ブレスレンの他に、フロリダ・オークスをダイナミック・ホリデー Dynamic Holiday で)。
この日唯一の芝コースのG戦。スタート良くポンと飛び出すと、そのまま他馬に影も踏ませず逃げ切り、最後は追い込む馬に半馬身まで詰め寄らせる余裕の勝利です。

サンタ・アニタ競馬場はカリフォルニアの競馬場。州南部にあり、西海岸を代表する歴史あるコースです。
ロバート・B・ルイス・ステークスは3歳のGⅡ。1700メートル戦で、以前はサンタ・カタリナ・ステークス(またはハンデ)と呼ばれていたレースで、2007年から有力なオーナーだったルイス氏(2006年没)を記念して改名されたもの。
今年の勝馬はアンソニーズ・クロス Anthony’s Cross 。初めて装着したブリンカーが功を奏した様子。
圧倒的1番人気で逃げるタピザー Tapizar を二番手から早目に競り潰し、追い込むリヴェティング・リーズン Riveting Reason をハナ差凌いでの優勝です。

サンタ・マリア・ステークスは4歳上牝馬のGⅡ。これも1700メートル
今年の勝馬はヴィジョン・イン・ゴールド Vision in Gold 。5頭立てながら最後は3頭が並ぶ接戦、結果的に終始先手を取ったヴィジョン・イン・ゴールドの逃げ切り勝ちでした。典型的なアメリカ競馬。
勝ったヴィジョン・イン・ゴールドは、ステークス初勝利。

ガルフストリーム・パークもフロリダの競馬場。フロリダ南部を代表するコースです。
ガルフストリーム・パーク・スプリント・チャンピオンシップはレース名の通り1400メートルの短距離戦で、4才上のGⅡ戦。一時レース名が変更されていた時期もありますが、現在は1972年創設当時の名前に戻っています。
今年の勝馬はタックルベリー Tackleberry 。これでここ7戦で6勝、最近三か月で四つ目のステークス優勝となります。どんな距離にも適合できるタイプで、急速な上がり馬の一頭でしょう。
これまでは単調な逃げ馬でしたが、今回は二番手から抜け出す器用な内容でした。

ゴールデン・ゲートはカリフォルニアの競馬場。カリフォルニア北部を代表するコースです。
エル・カミノ・リアル・ダービーは「ダービー」とあるように、3歳のGⅢ戦で1800メートルの距離。北カリフォルニアからケンタッキー・ダービーを目指す馬のトライアルとなる一戦です。
今年の勝馬はシルヴァー・メダリオン Silver Medallion 。勝利騎手ラッセル・ベイズ Russell Baze はアメリカ史上最多勝の記録保持者で、今年53歳になるヴェテラン・ジョッキーです。このレースも2度目の三連覇達成、通算では8勝目となります。
6頭立て。3番手を進み、直線入り口で大外を回し、直線も鋭く伸びての快勝。ベイズ騎手は左手でガッツ・ポーズ。シルヴァー・メダリオンはステークス2勝目、Gは初めてです。

このコーナーは毎回一つづつ、その日の見どころを挙げておきましょうか。

アメリカのこの時期は三冠レースに向けたトライアル戦が見どころ。12日の土曜日にもGが3鞍行われましたが、何と言ってもタンパ・ベイで圧勝したブレスレンが注目されます。
3戦無敗というパーフェクトな戦績、その勝ちっぷりの見事さから、ケンタッキー・ダービーの候補にのし上がってきた感じですね。
同馬の父ディストーテッド・ヒューモア Distorted Humoor はミスター・プロスペクター Mr Prospector 系を代表するフォーティー・ナイナー Forty Niner の仔で、自身は23戦8勝、GⅡ2勝、GⅢ2勝の実績があります。

種牡馬としてはベルモント・ステークス3着のドロッセルマイヤー Drosselmeyer を出していますが、ブレスレンは9年目の産駒。この馬でクラシック初制覇を狙うことになります。
因みに、Brethren は「同胞」の意味。

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