BCクラシック馬の落馬

3月9日もクラシック・トライアルが続きます。土曜日は4つの競馬場で6鞍のG戦が行われました。

今回はタンパ・ベイ・ダウンズ競馬場から行きましょう。G戦は2鞍で、最初は古馬牝馬の芝戦、ヒルスボロー・ステークス Hillsborough S (芝GⅢ、4歳上牝、9ハロン)。firm の馬場に12頭が揃い、前走エンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)を楽勝したオールド・チューン Old Tune が3対2の1番人気。
前走は2番手から抜ける競馬をしたオールド・チューン、今回はスタートから先手を取っての逃げ切り勝ちです。前回同様2着争いは大接戦になりましたが、勝馬から1馬身4分の1差遅れての2着は今回がアメリカ・デビューとなる2番人気(7対2)のフォーシズ・オブ・ダークネス Forces of Darkness が入り順当。頭差、頭差でミスティカル・スター Mystical Star 3着、カイヤ・ワン Kya One 4着。
ブラジル産のオールド・チューンは、出身地ブラジルでGⅠに4勝した逸材、トッド・プレッチャー厩舎に転じてG戦2連勝です。プレッチャー師にとってもヒルスボローは4勝目。鞍上はジョエル・ロザリオ。去年このレースを制したザゴラ Zagora は秋にBCフィーリー・アンド・メア・ターフに勝って最優秀芝古馬牝馬に選ばれており、オールド・チューンの目標も同じでしょう。

次はタンパ・ベイ・ダービー Tampa Bay Derby (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。勝馬にはケンタッキー・ダービーへの50ポイントが付与されるトライアルで、新星の誕生に期待が掛かります。馬場は fast 、9頭が出走し、2対5の断然1番人気に支持されたヴェラザーノ Verrazano はステークス初挑戦、距離も初体験ながら2戦無敗。名門トッド・プレッチャー厩舎の期待を背負った存在です。
先手を取ったのは大外9番枠スタートのフォーリング・スカイ Falling Sky 。2番手に控えたヴェラザーノは終始外を通り、逃げ馬とは馬体を離しながらジワリ先頭に立ち、そのまま他馬を寄せ付けず3馬身差で見事期待に応えました。2着には伏兵(32対1)ジャヴァズ・ウォー Java’s War が入り、更に4馬身4分の1差でフォーリング・スカイが3着に逃げ残り。
これで無傷の3連勝となったヴェラザーノは、お正月にガルフストリームで新馬勝ち、2月に1マイルのアローワンス戦に連勝してここに臨んでいました。前のレースに続いてG戦ダブル達成のプレッチャー師は去年のライムハウス Limehouse に続いてタンパ・ベイ・ダービー連覇、騎乗したジョン・ヴェラスケスもこの日4勝目と絶好調です。

続いてはオークローン・パーク競馬場に飛びましょう。ここも2鞍のG戦、先に牝馬のクラシック・トライアルとなるハネービー・ステークス Honeybee S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)が行われました。ケンタッキー・オークスに向け、これも50ポイント加算の一戦。1頭が取り消して8頭立て、馬場は fast です。レース前の時点でケンタッキー・オークスの1番人気に支持されているフラッシー・グレイ Flashy Gray が2対5の断然1番人気、モット厩舎、スミス騎乗と陣営も豪華です。
レースは2番人気(5対1)のローズ・トゥー・ゴールド Rose to Gold が3番枠スタートを利して先手を取り、8番枠から出たフラッシー・グレイは2番手追走。直線入口で本命馬が逃げ馬を捉えに掛かりましたが、ペースが楽だったか最後まで差は詰まらず、結局2馬身4分の3差でローズ・トゥー・ゴールドの逃げ切り勝ち。3着アメリカン・シュガー American Sugar はフラッシー・グレイから10馬身4分の1も離されていました。
サルヴァトーレ・サントロ厩舎、カルヴィン・ボレル騎乗のローズ・トゥー・ゴールドは、前走プリンセス・ステークス(GⅢ)に続きG戦は二つ目。前走一般ステークスは2着でしたが、50ポイントを加算して通算64ポイントとなり、ビホールダー Beholder と並んでポイント数でトップ。ボレル騎手は3日前に通算5000勝を達成しており、今年のクラシックに寄せる期待も大きくなってきました。

オークローン・パークの二つ目はレーザーバック・ハンデキャップ Razorback H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。10頭が出走し、去年のこのレースの勝馬でその後もオークローン・ハンデ、ピムリコ・スペシャルも制したアルタネーション Alternation が2対1の1番人気。
レースは伏兵(25対1)ゴールデン・ロン Golden Ron が逃げ、アルタネーションは3番手に付けるも徐々に後退し、早々と脱落する流れ。直線は逃げたゴールデン・ロンに先行した2頭、3番人気(4対1)アティガン Atigan と5番人気(7対1)サイバー・シークレット Cyber Secret が加わって3頭の争い。写真判定の結果、サイバー・シークレットがゴールデン・ロンを頭差抑えて優勝。半馬身差でアティガンが3着、アルタネーションは5着敗退です。
リン・ホイッティング厩舎、ロビー・アルバラド騎乗のサイバー・シークレットは、今オークローン開催で3戦目。1月と2月に夫々クレーミング戦に連勝してここに臨んでいました。馬主のチャールズ・セラ氏は、オークローン・パーク競馬場のオーナーでもあります。

さてフロリダに戻り、ガルフストリーム・パーク競馬場からはガルフストリーム・パーク・ハンデキャップ Gulfstream Park H (GⅡ、4歳上、8ハロン)。去年のBCクラシックを制したフォート・ラーンド Fort Larned がBC以来の出走とあって大注目、4対5の圧倒的1番人気に支持されていました。
ところが何としたことか、スタートで大本命がまさかの落馬。審議にもなりましたが、フォート・ラーンドは2歩目で大きく躓き、ブライアン・ヘルナンデスが堪え切れずに落ちたもの。接触や妨害によるものではありません。幸い人馬共に無事で、馬は直ぐに立て直して空馬のまま馬群の先頭で駆け抜けています。
このアクシデントでレースは混乱、実況アナウンサーも“BCクラシック馬が落馬!!”と何度も繰り返したほど。結果は逃げたフォート・ラウドン Fort Loudon を2番手でマークした2番人気(9対5)ディスクリート・ダンサー Discreet Dancer が、スワッガー・ジャック Swagger Jack に5馬身4分の1の大差を付けて優勝。フォート・ラウドンが1馬身4分の1差で3着に粘っています。大差勝ちとは言え、ラッキーとの印象は免れません。
勝馬を管理するのはトッド・プレッチャー師、タンパ・ベイのダブルに加え、一日でG戦3勝の荒稼ぎです。騎乗したハヴィエル・カステラノもこの日5勝目と大当たり。去年のシーズン当初はダービー候補として期待されたディスクリート・ダンサーでしたが、ファウンテン・オブ・ユースで3着したあと故障してシーズンを棒に振り、今期6ハロンのクレーミング戦で復活したばかり。ここを踏み台に、去年の憂さを晴らせるシーズンになるでしょうか。

最後にサンタ・アニタ競馬場からサン・フェリペ・ステークス San Felipe S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。これも50ポイントが掛かるダービーへの重要なステップであり、サンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)への最後のトライアルとなる一戦。fast の馬場に8頭が出走し、ロバート・B・ルイス・ステークス(GⅡ)の覇者フラッシュバック Flashback とシェイム・ステークス(GⅢ)を制したゴールデンセンツ Goldencents の一騎打ちの様相を呈していました。2番枠の前者がイーヴンの1番人気、隣の3番枠からスタートする後者が2対1の2番人気で続きます。
ダッシュ良く飛び出したのはゴールデンセンツでしたが、人気の無いサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos が競り掛けてハイ・ペースに。流石にサリュートス・アミーゴスは中盤で一杯、代わって先頭に立ったゴールデンセンツにフラッシュバックが馬体を接するように第4コーナーへ。直線では人気2頭のマッチレースになりましたが、前半のハイペースが堪えたか、ゴール直前で離れた5番手を追走していた3番人気(5対1)ヒア・ザ・ゴースト Hear the Ghost の末脚が爆発。競り合いを制して先頭に立った本命フラッシュバックを半馬身交わしての逆転劇です。勝馬と連れて追い込んだティズ・ア・ミニスター Tiz a Minister が更に半馬身差で3着に雪崩れ込み、一杯になったゴールデンセンツは1馬身4分の1差されて4着敗退。ペースの速さが結果を狂わせたと言えるでしょう。
勝馬を管理する競馬殿堂入りのジェリー・ホーレンドルファー師にとっては、意外にもこれがサン・フェリペ初制覇。騎乗したコーリー・ナカタニにとっては3勝目のサン・フェリペとなります。彗星の如く登場したこれまで無名のヒア・ザ・ゴーストは、ここまで僅か2戦。いずれも6ハロンのレースで、12月にハリウッドで新馬勝ち、1月にサンタ・アニタの一般ステークスでは2着していた馬です。

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