今日の1枚(184)

中々進まない「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」です。次は第13集のヴェルディ/レクイエムですが、これは既に聴きました。
一つ飛ばして第14集。ここからはトスカニーニの独壇場たるヴェルディのオペラが5点続きます。その第一弾、BVCC-9715/6は歌劇「仮面舞踏会」の全曲。第1幕がCD1枚目、2枚目に第2幕と第3幕が収められています。完全な全曲演奏で、カットは一切ありません。
配役は以下の通り、

リッカルド/ジャン・ピアース Jean Peerce (テノール)
アメリア/ヘルヴァ・ネルリ Herve Nelli (ソプラノ)
レナート/ロバート・メリル Robert Merril (バリトン)
ウルリカ/クララーメ・ターナー Clarame Turner (メゾ・ソプラノ)
オスカル/ヴァージニア・ハスキンズ Virginia Haskins (ソプラノ)
シルヴァーノ/ジョージ・チェハノフスキー George Cehanovsky (バリトン)
サムエル/ニコラ・モスコーナ Nicola Moscona (バス)
トム/ノーマン・スコット Norman Scott (バス)
判事・召使い/ジョン・カーメン・ロッシ John Carmen Rossi (テノール)
合唱/ロバート・ショウ合唱団(合唱指揮/ロバート・ショウ)

配役の名前でも判りますが、所謂「ボストン版」による完全演奏です。
判事と召使いを同じ歌手が受け持っていますが、実際の舞台では、演出によっては出番が近いため難しいと思われます。演奏会形式ならでは。
例によって当盤のブックレットに歌手のプロフィールは掲載されていません。

また曲目解説として「あらすじ」が紹介されていますが、最後の場面の「変装」が「返送」となっているのが如何にも現代のワープロ変換の誤り。筆者も企画制作もチェックはしているのでしょうが・・・。廉価盤故の悲しさか。

録音データは、1954年1月17、24日 NBC放送録音 カーネギーホール となっていて、2週間に亘って行われた聴衆を入れた放送録音。恐らく17日に第1幕が、24日に残りが演奏されたものと推測されます。
若干の客席ノイズが聴かれますが、アリアの終わりはもちろん、各幕の最後の拍手も含まれていません。トスカニーニの言明で曲間の拍手は厳禁されていたのでしょう。マエストロはアリアのあとの“ブラヴォ~~” を極端に嫌ったそうですから。

当盤のコメント(ハーヴェイ・サックス氏)にもあるように、これはトスカニーニ最後のオペラ演奏です。マエストロ自身がそう語っていますから。もう一人のオペラの偉大な指揮者カラヤンも、偶然ながら「仮面舞踏会」が最後のオペラ録音となったのは記憶して良いことでしょう。
トスカニーニにとっては4歳で初めて聴いたのも「仮面舞踏会」。マエストロにとって因縁の作品です。

初出はLP、HMVの ALP 1252/4 の3枚6面に収録されていました。

録音はモノラル全盛期の最高水準を行くもの。ティンパニの皮の振動のナマナマしさなど、生半可なディジタル録音以上のリアリティがあります。

演奏はさすがに最晩年のものだけにやや緊張感が持続しない部分もありますが(特に第1幕)、第2幕の前奏曲などは鬼神もかくや、と思われるほどの迫力。録音の良さも相俟って、スリリングなことこの上もありません。

第3幕で反リッカルドの3人が籤引きで刺客を決める個所、練習番号25の「運命の籤引き」の動機とも言えるメロディー(クラリネット+ファゴット+チェロ)にホルンを加筆しているのが極めて効果的です。そのあとに続く ppp との対照が圧巻。

参照楽譜
リコルディ P.R.159

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