今日の1枚(165)

「トスカニーニ・ベスト・セレクション」の第21集はホロヴィッツとの共演を収めたチャイコフスキーとブラームスの協奏曲ですが、この盤は手元にありません。さすがにホロヴィッツということで売れ行きが早く、私が気が付いた時には売り切れ状態でした
ということで一枚飛ばして第22集に行きますが、これも好評に応えて再発売されたシリーズの方で、品番は BVCC-38037 となっています。ジャケットの体裁などは第一回発売と同じで、オリジナルLPデザイン使用。

①ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
②コダーイ/組曲「ハーリ・ヤーノシュ」
③スメタナ/交響詩「モルダウ」

録音年月日は、

①1953年2月2日 カーネギーホール
②1947年11月29日 NBC放送録音 NBC8-Hスタジオ
③1950年3月19日 NBC8-Hスタジオ

このうち①は既にシリーズ(144)で取り上げたものと同じですから、ここでは省略。

②は聴衆を入れて行われた放送用の公開録音でしょう。僅かに客席ノイズも聞かれます。
WERMには当録音が発売されたという記録はありませんから、恐らくトスカニーニの死後にNBCのアーカイヴから復元されたものでしょう。

トスカニーニとコダーイと言えば、コダーイがトスカニーニの思い出に捧げた交響曲(初演の指揮はフリッチャイ)が思い浮かびますが、生前から親交があったのでしょう。例によって日本盤解説には一切言及がありません。

録音はやや古いものですが、時代の割には明瞭な音質。ツィンバロン奏者名のクレジットはありません。

問題は③でしょう。
これはセッション録音で、SP末期の収録。SPとしてはハイファイと謳っても良いほど優れた録音です。
初出はヴィクターの DM 1505 で、2枚4面に収録されていました。(演奏時間は11分少々なので4面は謎ですが)

演奏は淡々と進みますが、異変が起きるのは聖ヨハネの急流に差し掛かってから。275小節以下は打楽器や金管楽器、特にトランペットのパートにトスカニーニの手が度々加えられています。
更に凄いのは最後。ヴィシェフラードの主題が高らかに奏された後、395~403小節をゴッソリとカットしてしまうのです。これは恰もモルダウ川の水路を強制的に変えてしまうようなもので、江戸時代初期に徳川幕府が神田川の流れを曲げてしまった工事を思い出させます。
ま、それは冗談ですが、この名曲の珍盤としてコレクターズ・アイテムに属するでしょう。SPの盤面構成、演奏時間と合わせて謎深き一枚ですね。

参照楽譜
①オイレンブルク No.433
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) Nr.272
③オイレンブルク No.472

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