Gレース、大忙しの土曜日

2月19日の土曜日は、実に4つの競馬場で9つのGレースが行われました。1日に行われたGレースの数としては今年最多です。

最初に列記しておくと、フェア・グラウンズ競馬場では4鞍。リズン・スター・ステークス Risen Star S 、レーチェル・アレキサンドラ・ステークス Rachel Alxandra S 、フェア・グラウンズ・ハンディキャップ Fair Grounds H 、マインシャフト Mineshaft H が、
ガルフストリーム・パーク競馬場ではマック・ディアルミダ・ステークス Mac Diarmida S とセービン・ステークス Sabin S が、
ローレル競馬場ではバーバラ・フリッチー・ハンデキャップ Barbara Fritchie H が行われ、
サンタ・アニタ競馬場ではサン・ルイス・オビスポ・ステークス San Luis Obispo S とサン・カルロス・ハンデキャップ San Carlos H という具合です。

フェア・グラウンズはルイジアナ州の競馬場で、1852年に開設されたアメリカでも最も古いコースの一つ。ここではGⅠレースは無く、専らGⅡとGⅢが中心。19日は「ルイジアナ・ダービー・プレヴュー・デイ」に当たっていて、其々の分野の本番に向けたトライアルが組まれています。
リズン・スター・ステークスは3歳馬のためのGⅡ。1700メートルで行われ、ルイジアナ・ダービー(3月26日)のトライアルとなる一戦。ここから更にケンタッキー・ダービーに続くローテーションが一般的です。
レース名のリズン・スターは1988年の勝馬で、ここをステップにプリークネス・ステークス、ベルモント・ステークスを制して2冠馬を達成した名馬。1973年創設当初はルイジアナ・ダービー・トライアルというレース名でしたが、現在ではリズン・スターを記念したレース名になっています。
今年の勝馬はムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man 。10頭立てと頭数が揃い、3コーナーから捲り気味に追い上げて2着に1馬身半差。レース実況アナウンサーの“むちょ~~~、まちょ~まん 勝ったァ~”の絶叫が面白かったですねぇ~。
鞍上は負傷したコア騎手から乗り替わったラジーヴ・マラー、調教師はキャシー・リトヴォ。フロリダから乗り込んでの優勝で、ケンタッキー・ダービー候補の1頭に名乗りを挙げました。

レーチェル・アレクサンドラ・ステークスは3歳牝馬のGⅡ。牡馬のリズン・スターと同じ1700メートル戦。
1982年創設時はダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale と呼ばれていましたが、その後シルヴァーバレットデイ・ステークス Silverbulletday に、更に現在の名称へと三度改名されています。レース名はいずれもステークスに勝った名牝の名前で、レーチェル・アレキサンドラは2009年のアメリカ年度代表馬。牝馬ながらプリークネス・ステークスに勝った女傑。
今年の勝馬はカスマンブルー Kathmanblu 。6頭立ての縦長の展開を4番手から差し切り勝ち。これでステークス3連勝となります。
これで通算成績は8戦5勝。ケンタッキー・オークスが視界に入ってきましたね。ケン・マックピーク調教、ジュリアン・ルパルー騎乗。

フェア・グラウンズ・ハンデは4歳上、芝の9ハロンで行われるGⅢ戦。
今年の勝馬はエクスパンション Expansion 。9頭立て。見るからにスローペースの展開になりましたが、4番手から追い上げ、最後は3頭の接戦から頭差抜け出しての優勝。32対1の大穴になりました。
スティーヴ・アスムッセン調教、ジェラール・メランコン騎乗の同馬は、サンタ・アニタでの2戦は振るいませんでしたが、ここフェアー・グラウンズのデビュー戦では馬が変わったよう。よほど水が合ったんでしょう。

マインシャフト・ハンデは4歳上、1700メートルのメインコースで行われるGⅢ戦。以前はファーラウエイ・ハンデ Whirlaway と呼ばれていたレースですが、現在は2003年のアメリカ年度代表馬マインシャフトの名を冠したレースに変更されました。マインシャフトはサパーバン・ハンデなどのGⅠを制し、ルイジアナではニューオルリーンズ・ハンデに勝った馬。
今年の勝馬はディマルケーション Demarcation 。6頭立て、離れた最後方から直線一気の差し足で抜け出しました。アメリカ競馬では珍しいシーン。
去年のルイジアナ・ダービー馬ミッション・インパジブル Mission Impazible が1番人気に押されていましたが、アンナ・ナプラヴニク騎乗のディマルケーションが最後のハロンで頭差本命馬を捉えての優勝。2009年11月以来となるGレース3勝目を飾りました。これで37戦10勝となる7歳馬です。調教師はポール・マクジー。

ガルフストリームのマック・ディアルミダ・ステークスは4歳上、芝の11ハロンで行われるGⅡ戦。1995年創設で、レース名は16戦12勝した1978年の芝コース・チャンピオンに因んだもの。ワシントン・インターナショナルやカナディアン・インターナショナルを制した名馬です。
今年の勝馬はプリンス・ウィル・アイ・アム Prince Will I Am 。12頭立てはアメリカでは多頭数。距離も長距離でコースを1周半する一戦。当然ながらスローペースになりましたが、6番手から進んで伸びた最後の末脚は目立っていました。2着に4分の3馬身差。
プリンス・ウィル・アイ・アムは、これでG2連勝。ここ4戦でG3勝と堅実さが目立ってきました。この間の敗戦はブリーダーズカップ・マラソンの2着降着(10着)のみ。調教師はミシェル・ニヘイ、騎手はジョン・ヴェラスケス。

セービン・ステークスは4歳上牝馬による、1マイルのGⅢ戦。これも名競走馬に因んだレース名で、セービンは25戦18勝。うちGⅠは12勝し、イエロー・リボン・ステークスやゲイムリー・ハンデに勝った名牝です。
今年の勝馬はオウサム・マリア Awesome Maria 。7頭立て。2着に4馬身4分の3差を付ける圧勝のほぼ逃げ切り勝ち。
これがG2歳時にマトロン・ステークスに勝って以来のG勝利となったオウサム・マリアはトッド・プレッチャー厩舎、これもジョン・ヴェラスケス騎乗。

ローレル競馬場はメリーランド州を代表するコース。かつてはローレル・インターナショナルというアメリカ最初の国際レースが行われてきた由緒ある競馬場です。
バーバラ・フリッチー・ハンデは3歳上牝馬による7ハロンのGⅡ戦。レース名のバーバラ・フリッチーは競走馬ではなく、南北戦争の伝説的なヒロインの名前。南軍に攻め込まれても北軍の旗を降ろさなかったという勇敢な女性で、「信念」のシンボルでもありました。
このレースは本来ボーウィー競馬場 Bowie の名物レースでしたが(1952年から1984年まで)、1985年にボーウィーが閉鎖されてから現在のローレルで開催されています。
今年の勝馬はハリッサ Harissa 。7頭立て、1番人気に応えての優勝です。
4番手を進み、直線で逃げ馬を捉えると、そのまま差を広げて2着に2馬身4分の1差を付ける楽勝。これでステークス連勝ですが、Gレースは初勝利となります。調教師はマイケル・ハッション、騎手はラモン・ドミンゲス。

最後はサンタ・アニタ。先ずサン・ルイス・オビスポ・ステークスは4歳上、芝の12ハロンで行われるGⅡ戦。サン・ルイス・オビスポはサンフランシスコとロサンジェルスの中間辺りにある古都(1772年創建)の名で、アメリカでは最も幸福な都市と呼ばれている所でもあります。
1950年創設当時はワシントンズ・バースデー・ハンデと呼ばれダートコースで行われていましたが、1955年からは芝コースのレースに移行。5年間の中断の後、1968年から現在の名称で復活したレースです。
日本に縁の深いレースで、未だワシントンズ・バースデーと呼ばれていた1959年には日本から遠征したハクチカラが見事優勝。日本からの遠征馬としては海外初勝利を記録したレースでもあります。(尤も日本人名が記録に残っているのは馬主だけ。調教師はアメリカ人が預かった形で、騎手もアメリカ人でした)
今年の勝馬はチャンプ・ペガサス Champ Pegasus 。9頭立て。アンブライドルズ・ドリーム Unbridle’s Dream が単騎飛ばして逃げる展開になりましたが、直線入り口で他馬が一気に追い上げ、最後は1番人気のバーボン・ベイ Bourbon Bay との叩き合いをハナ差制しての優勝です。
勝利調教師はリチャード・マンデラ、勝利騎手がジョエル・ロザリオ。前走サン・マルコス・ステークスではバーボン・ベイの2着でしたが、ここで雪辱。マンデラ師はドバイのシーマ・クラシックを目指す意向です。同馬はフサイチペガサスの産駒であることにも注目しましょう。

サン・カルロス・ハンデは4歳上、メインコースの7ハロンで行われるGⅡ戦。1935年創設の歴史ある一戦です。
今年の勝馬はスマイリング・タイガー Smiling Tiger 。カリフォルニアでは珍しく雪が残るダートコース、6頭立てながら激しいレースになりました。
いつもは先行するスマイリング・タイガーでしたが、スタートに失敗して後ろから2番手を進みます。それでもロザリオ騎手が落ち着いて御し、直線で外からやや内に刺さりながらの追い上げ。最後は写真判定と審議になりましたが、最終的には頭差で確定。陣営にも馬名の通り、安堵のスマイルが零れていました。
GⅠを2勝しているスマイリング・タイガーでしたが、前走のパロス・ヴェルデス(GⅡ)で凡走、今回はベイズ騎手から乗り替わったジョエル・ロザリオが騎乗していました。調教師はジェフ・ボンド。

≪今日のポイント≫

今日はアメリカのグレード・レースについて。以前にも紹介しましたが、1970年からスタートしたヨーロッパのパターン・レース・システムに倣って北米にグレード・レース・システムが導入されたのは1973年のことでした。
しかし1973年はシーズンが終わってからG(グレード)が指定されたので、実質的にグレード・レースとして当該レースが実施されたのは1974年から。従って1973年と1974年は全く同じレースが同じ格付けでした。最初に格付けされたGレースは330レース。それをクラス別に示すと、
GⅠ 64レース
GⅡ 97レース
GⅢ 169レース
となります。

以後は毎年のように、新設、廃止、グレード内の入れ替えがあり、競馬場そのものの新設や閉鎖も行われて今日に至っています。
今年2011年に予定されているグレード・レースは全部で474レース、38年間で144レースも増加したことになります。内訳は、
GⅠ 112レース
GⅡ 153レース
GⅢ 209レース
となり、GⅠに至っては48レース、実に75%も増加した計算になります。

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