3・11以後聴けたコンサート、聴けなかった演奏会
大震災の後は暗いニュースばかりで、演奏会の感想などを詳しく書く気持ちにはなれませんでした。しかし今日から四月、今まで通りのペースで日記を続けることが、前向きな姿勢を取り戻すことに繋がるのでしょう。
ということで、この20日間を駆け足で振り返ることにしました。
(1)
3月11日の日本フィル定期はサントリーホールに辿り着くことすら出来ず、結局は翌日2日目の公演に振り替えて聴くことが出来ました。大雑把な感想は既にアップしています。
中でプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の詳しい演奏曲目を記しておりませんでしたので、ここに追記しておきましょう。演奏順に、
モンタギュー家とキャプレット家(第2組曲第1曲)
少女ジュリエット(第2組曲第2曲)
ローレンス神父(第2組曲第3曲)
ダンス(第2組曲第4曲)
別れの前のロメオとジュリエット(第2組曲第5曲)
情景(第1組曲第2曲)
ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲第7曲)
アンティルから来た少女たちの踊り(第2組曲第6曲)
仮面(第1組曲第5曲)
ティボルトの死(第1組曲第7曲)
以上の10曲です。要するに第2組曲の全曲と第1組曲から3曲が選ばれていました。これはラザレフによる選曲。
この日は一部の鉄道が運転を停止しており、強い余震も続いていたため客席は見た目4割程度の入りだったと記憶しています。
(2)
3月13日、晴海の第一生命ホールで行われた古典四重奏団のフランスものによる演奏会。これは直ぐに日記にアップしました。
(3)
翌月曜日に予定されていた読売日響の定期演奏会は、当日のホームページで中止が告知されました。この日は東京電力の計画停電の初日でもあり、首都圏の鉄道も大幅な運休。地震当日の混乱を考慮すれば中止も止むを得なかったでしょう。
予定されていた演目等は以下の通りでした。
第502回定期演奏会
モーツァルト/歌劇「劇場支配人」序曲
モーツァルト/交響曲第41番
R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」
指揮/ジェラール・コルステン
コンサートマスター/藤原浜雄
小生としては、たとえ開催されていたとしても不便を覚悟で出かけたとは思えません。オーケストラには申し訳ないけれど。
(4)
3月17日に予定されていた東京シティ・フィルの定期演奏会は延期となりました。これは楽しみにしていた演奏会でしたので真に残念でしたが、中止ではなく延期となって一安心したところ。昨日のホームページでは7月13日で決定したそうです。
事務局の発表では、計画停電や交通機関の混乱に伴い十分なリハーサルが行えなかったということです。
因みに曲目等は、
第247回定期演奏会
ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
ベートーヴェン/交響曲第2番(マルケヴィッチ版による)
ベートーヴェン/交響曲第5番(マルケヴィッチ版による)
指揮/飯守泰次郎
(5)
定期が中止になったからという訳でもありませんが、読響のマチネーシリーズを飛び入りで聴いてきました。3月19日(土)東京芸術劇場です。
いつもは池袋には湘南新宿ラインを利用しますが、この線は当分の間運休ということで、他の線を乗り継いでの小旅行。池袋は遠い、というのが実感です。このホールは3月一杯で改修工事に入るため、私にとって現施設では最後の演奏会でもありました。
プログラムは、
第131回東京芸術劇場マチネーシリーズ≪トランスクリプション名曲集≫
バッハ=エルガー/幻想曲とフーガ ハ短調(MWV537)
ブラームス=ベリオ/クラリネット・ソナタ第1番
~休憩~
グルック=ワーグナー/歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲
ウェーバー=ベルリオーズ/舞踏への勧誘
ドビュッシー=ピュッセル/小組曲
バッハ=シェーンベルク/前奏曲とフーガ変ホ長調(BWV552)
指揮/下野竜也
クラリネット/四戸世紀
コンサートマスター/デーヴィッド・ノーラン
ご覧のとおり編曲による名曲を集めたコンサート。バッハに始まりバッハに終わるという組立で、中々構成にも配慮が効いたマチネーでした。
コンサートは東北関東大震災の犠牲者を悼んでバッハのアリアが演奏され、終了後は黙祷。演奏会が終わった後も、ロビーでは下野以下団員一同が募金を呼びかけが行われました。翌日の横浜でも同様だった由。
私にとっての最大の収穫はエルガー作品が聴けたこと。プログラムには詳しい解説がありませんでしたが、この作品はR.シュトラウスとの友情が鏤められた名編曲で、エルガー自身の作品番号(86)も振られた力作なのですね。
下野のアプローチは、巨匠ボールトの高貴さには遠く及ばないものの、作品の紹介というレヴェルを超えた出来だったと言えましょう。
クラリネットの四戸は読響の首席。アンコールとしてモーツァルトの「アダージョ」なるものが弦楽の伴奏で演奏されましたが、詳しいことは不明。オリジナルではなさそうで、これも誰かのトランスクリプションだったのかも知れません。
笑えたのはウェーバー。まさかと思いましたが、例の個所で盛大な拍手が巻き起こりました。この曲を知っている世代は少なくなったということでしょうか。
(6)
自粛が続く東京を離れ、思い切って京都に行ってきました。3月25日から26にかけて。風評被害によって新幹線の利用客が減り、京都観光もキャンセル続出という噂を聞いたからでもあります。
もちろん目玉は京都市交響楽団の定期演奏会を聴くことですがね。
第544回定期演奏会
ショスタコーヴィチ/バレエ組曲第1番
ブルッフ/スコットランド幻想曲
~休憩~
ヒンデミット/交響曲「画家マチス」
指揮/広上淳一
ヴァイオリン/シン・ヒョンス
コンサートマスター/泉原隆志
京都は元気でした。西日本はしっかり東日本を応援しています。そして演奏会も実に素晴らしいものでした。特に最後に演奏されたヒンデミットは広上ならではの個性的、かつ独創的な解釈が決して奇を衒うことなく、堂々と京都コンサートホールに響いたのは見事。今回は直前だったためあまり良い席ではありませんでしたが、着実に実力を積み上げている京響に世界的レヴェルを実感してきました。
演奏会に先立つプレトークでは、偶然ながらショスタコーヴィチとヒンデミット作品が弾圧と苦難を乗り越えて現在に伝わった作品であることが紹介されました。
ソウル在住で、京都に直行したシン・ヒョンスも見事。広上との相性の良さを十二分に発揮して京都コンサートホールをひっくり返しました。
アンコールは、京響のヴァイオリン群とのアンサンブル(指揮者なし)でパガニーニのヴェネツィアの謝肉祭。
またコンサートの最後にはバッハのアリアが奏でられ、マエストロの言葉どおり、美しい弦楽アンサンブルに対して暖かい拍手も送られます。ここでもコンサート終了後、広上以下メンバーによる義援金の受付が行われていたことはもちろんです。
今回の京都行は、奈良にも足を延ばして法起寺、法輪寺、法隆寺に参拝。中宮寺に安置された弥勒菩薩の不思議な微笑みに、自然と人との繋がりを見たのも土産の一つです。
(7)
京都で満喫した広上淳一の指揮、東京でも楽しんだのが昨日(3月31日)のこと。オーケストラの日2011に行ってきました。
3月31日を「ミミにいちばん、ミミにいいひ」とこじつけて日本全国で演奏会を開くようになったのは最近のこと。私は初めての参加でした。上野の東京文化会館を会場に、この日は朝から様々な催しが行われていたようですが、私が聴いたのは最後の締めくくりとなるオーケストラ・コンサート。こんな内容です。
佐藤直紀/NHK大河ドラマ「龍馬伝」テーマ音楽
ハイドン/交響曲第101番~第2楽章
ヴォルフ=フェラーリ/歌劇「マドンナの宝石」間奏曲第1番
ケテルビー/ペルシャの市場にて
シベリウス/組曲「カレリア」~行進曲
グリーグ/組曲「ホルベアの時代から」~前奏曲
~休憩~
ヴェルディ/歌劇「アイーダ」~凱旋行進曲
シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
オッフェンバック/歌劇「天国と地獄」序曲
ラヴェル/ボレロ
管弦楽/オーケストラの日管弦楽団
指揮/広上淳一
ソプラノ/富岡明子(龍馬伝)
コンサートマスター/荒井英治(東フィル)
主催は日本オーケストラ連盟など、オーケストラは首都圏13団体の選抜メンバーです。東京8団体に加え、神奈川フィル、群馬響、東京ニューシティ管、東京ユニバーサル・フィル、ニューフィル千葉の面々。
ほぼ満席に近い会場は、子供を連れた家族が多く、いつもの各オケの定期などとは雰囲気が全く異なります。この状況の中でも、クラシック音楽を楽しむ環境が整っていることに感謝しなければなりません。
コンサートはすっかり恒例となったバッハのアリアと黙祷からスタート。本編は須磨佳津江の司会と広上淳一の軽いトークで進行します。
それにしてもオケの巧いこと。改めて日本人プレイヤーのレヴェルの高さに感心。
ヴォルフ=フェラーリやケテルビーなど、広上としても初めて指揮するのだとか。昔懐かしいマドンナの宝石なんて、通してナマで聴いた人なんているんでしょうか。実にレアな体験でしたね。こういうコンサートを軽く見ちゃいけません。
最後のボレロは、“わぉ~!!”。嵐のような拍手に応えてのアンコールは、何と外山雄三の管弦楽のためのラプソディーからアダージョ以降。強烈に「日本」をアピールしました。
改めて想うのは、音楽の力であり、日本の団結の強さ。
全曲を終えて、マエストロ広上が素晴らしいスピーチをしてくれました。これにも熱い拍手。
この中で、被災された地域のプロ・オーケストラである仙台フィルを東京に招き、東京の音楽家有志を加えて急遽チャリティ・コンサートを開催されることが発表されました。
日付は4月21日(木)、場所はサントリーホールで18時30分開演。小澤征爾氏、堤剛氏らが発起人となり、仙台フィルの音楽監督である山下一史と広上淳一が指揮、小山実稚恵、堤剛などをソリストに迎えて人々に勇気を与えるような作品が演奏される予定です。
全席指定の一律5000円。収益の半分は仙台フィルが行う復興コンサートの活動資金として、半分は日本赤十字社を通じて被災地に寄付される由。
チケットの扱いは4月5日からですが、在京クラシックファンならずとも、是非このコンサートを満席にして被災地への支援の輪を広げようではありませんか。
最近のコメント