2011桜花賞馬のプロフィール

今年もクラシック馬のプロフィールを紹介する季節がやってきました。ヨーロッパ(英愛仏)のクラシックに加えて我が日本の五冠レース優勝馬の血統を考察していくシリーズです。

第一回は、先々週阪神競馬場で行われた桜花賞。少し遅くなりましたが、マルセリーナのプロフィールです。
血統と言えば父馬のことを考えるのが一般的でしょうが、私は血統は牝系が第一というのが持論。今年も牝系を中心に考えていく予定です。

さてマルセリーナは、父がディープインパクト、母はマルバイユ Marbye 、母の父はマージュ Marju という血統です。
母マルバイユの三番仔で、母の初産駒ジターナ(2006年、父ダンスインザダーク)は未勝利馬、二番仔グランクロワ(2007年、父スペシャルウィーク)は1勝馬(不良馬場の1800メートル)というのが現在までのマルバイユの繁殖成績です。いずれもサンデー・サイレンス Sunday Silence 系の父馬と配合されているのが目を惹きますね。

母マルバイユ自身(2000年)がGⅠ勝馬、という事はもっと知られて良い事実だと思います。通算成績は24戦11勝というのが公式な記録のようです。
所属していたのはイタリアのB.グリゼッティ厩舎ですが、オーナーは社台の吉田ファミリー。競走生活を終えれば日本で繁殖牝馬になるように運命づけられていた牝馬と言えましょう。

2歳時に1100メートルと1200メートル戦に勝ったマルバイユは、3歳時にはイタリアのGⅢ戦であるプレミオ・セルジオ・クマニ(1600メートル)に優勝してG戦に初勝利します。
彼女が最も充実したのは4歳のときで、この年は7戦3勝。3月にローマの小レースに勝った他、6月のミラノでプレミオ・エミリオ・トゥラーティ(GⅡ、1600メートル)で二つ目のパターン・レースに勝ち、遂に8月にはフランスのドーヴィル競馬場に遠征し、見事ダスタルテ賞を制します。
このダスタルテ賞は、この年からGⅠレースに格上げされたばかり。マルバイユはここで栄えあるGⅠホースのタイトルを手にしたのでした。

ダスタルテ賞は近年こそゴールディコヴァ Goldikova が三連覇して堂々たるGⅠ格ですが、この年のダスタルテは実はレヴェルが低く、実質的にはGⅡ程度の一戦だったことは素直に認めなければならないでしょう。
マルバイユはこの年、ロイヤル・アスコットにも遠征してウインザー・フォレスト・ステークスに出走しましたが、5着に凡走しました。
また3歳時には、未だGⅡだったダスタルテ賞で3着のほか、プレミオ・リボー(GⅡ)でも3着の実績があります。

競走馬としてのマルバイユは、1マイルから9ハロンが適距離だったと結論付けて良いかと思われます。

次に二代母ハンバイユ Hambye (1994年、父ディスタント・レラティヴ Distant Ralative)について。
この馬もイタリアで走った馬ですが、10戦5勝の成績を残したスプリンターでした。特記するほどのレースには出走していないようです。
繁殖に上がったハンバイユの初産駒はハルザル Halzal (牝、父ジルザル Zilzal)といい、これも5ハロンから7ハロンで勝ったスプリンターでした。
続いて生まれたハンバイユの二番仔が、マルセリーナの母となるマルバイユ。ハンバイユのその後の産駒からは特に目立った馬は出ていません。

順次遡って、三代母パリエッタ・ジェナー Paglietta Gener (1986年、父ファイナル・ストロー Final Straw)はアイルランド産で14戦3勝、四代母は英国産のミス・パドルダック Miss Puddleduck (1981年、父マミーズ・ペット Mummy’s Pet)で10戦1勝、五代母グージー・ガントレット Goosie-Gantlet (1974年)英国産の8戦1勝馬と、いずれも勝馬ではあるものの、取り立てるほどの競走能力があった馬とは思えません。
また、彼女たちの産駒からも話題になるような馬はでていないようですね。
少なくとも五大遡った限りでは、マルバイユ→マルセリーナを凌ぐ活躍馬は出ておらず、スプリンターからマイラーを出す牝系と見て良さそうな気がします。

ただ八代遡ると、この牝系は名馬レヴィー Levee に到達することを忘れるべきではないでしょう。
レヴィーはアメリカのチャンピオン牝馬で、CCAオークス(この年は11ハロン)、ベルダム・ステークス、モンマス・オークスなどに勝ち、その娘シュヴィー Shuvee もまたCCAオークス(この年は10ハロン)を制した名牝。
レヴィー、シュヴィーのオークス母娘は、私が競馬に深入りしたばかりの頃に知った女傑たちであり、私の脳裏に強烈に焼き付いている名前でもあります。それから八代も降った日本で、彼女たちの血を引く馬がクラシックに勝ったことに感慨を覚えざるを得ません。

マルセリーナはオークスの距離を克服できるか? これは正直なところやってみなければ判りません。父ディープインパクトにはスタミナの不安はありませんが、マルセリーナの桜花賞での勝ち方が如何にも末脚が切れるという印象だっただけに、スタミナへの疑問は残ると考えます。

ファミリー・ナンバーは、9-f 。

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