豪州から来た凄い奴

今シーズン最初のクラシックが終わって一休みしたいところですが、昨日の月曜日もアイルランドとフランスでパターン・レースが行われました。まだまだ続くクラシック戦線、ヨーロッパ競馬は新しいスターを求めて今が一番忙し時かも知れません。やれやれ。

という訳でカラー競馬場に行きましょうか。馬場は good to firm 、日本なら良馬場でしょう。
この日のカード、これまではGⅢに格付けされていたテトラーク・ステークスが、今年はリステッド戦に格下げされました。当日記はパターン・レースを中心にしていますので、このリステッド戦は簡単に触れておきましょう。

テトラーク・ステークス Tetraech S (L、3歳、7ハロン)は8頭立て。6対4の1番人気に支持されたインペリアル・ローム Imperial Rome が期待に応えました。2着とは頭差でしたが、差し足が冴えてましたね。
デヴィッド・ウォッチマン厩舎所属で、師のコメントでは仏2000ギニーに向かう由。ホーリー・ロマン・エンペラー Holy Roman Emperor の初年度産駒の1頭です。

さて本題のパターン・レース。この日は2鞍あって、先ずはテトラーク・ステークスとセットとも言えるアサシ・ステークス Athasi S (GⅢ、3歳上牝、7ハロン)から。3歳上というのがミソで、愛1000ギニーに向かう3歳馬が古馬の胸を借りるという、日本では想像できない条件です。

今年は9頭立て。3歳馬は4頭がチャレンジしてきました。5対2の1番人気はその3歳馬で、前走ダンダルク競馬場の未勝利戦を勝ったばかりのエマイナ Emiyna 。対する古馬の筆頭格は今シーズンG戦連勝のロリー・フォー・ドリー Lolly For Dolly 。
日本的感覚では古馬断然有利と見るでしょうが、ブックメーカーは大したもの。オッズ通りエマイナがロリー・フォー・ドリーに短頭差で競り勝ちました。4馬身差3着にも3歳馬のシーハーン Seeharn が入っています。
もちろん3歳と古馬には1ポンド以上の斤量差があるのですが、叩き合いを制した勝馬の根性は中々のものです。

ジョン・オックス厩舎のシーズン初勝利、去年までライヴァルのオブライエン厩舎で主戦騎手を務めていたジョニー・ムルタの騎乗です。オックス師によれば、同馬の牝系はスタミナ系だけれども、スピードがあって単なるステイヤーではない由。当然ながら愛1000ギニーの有力候補の1頭です。アガ・カーンの秘密兵器か。

昨日のハイライトは次です。ムーアズブリッジ・ステークス Mooresbridge S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン)。
6頭立て、2対13というとんでもない人気を集めたのが、話題のソー・ユー・シンク So You Think 。オーストラリアからエイダン・オブライエン厩舎に転厩してきた評判の5歳馬で、彼の地でGⅠ5勝、去年は5連勝したあとメルボルン・カップ3着。それ以来の競馬で、これがヨーロッパ・デビューとなります。
その実力は、タイムフォームが同馬をダービー・凱旋門賞馬ワークフォース Workforce と同格(133)に評価したことでも知れるでしょう。手元に2010年版レースホースがありますが、ヨーロッパでは未だ走っていないにも拘わらず、長文のエッセイを掲載しているほどなのです。

オブライエン厩舎では、一応ウインザー・パレス Windsor Palace をペースメーカーとして送り込み、万全を期します。3番手を楽に追走したソー・ユー・シンクはGⅠ勝のペナルティー5ポンドも物ともせず、ジェームス・ヘファーナン騎手のゴーサインに鋭く反応し、あっという間に10馬身の大差を付けて他馬をぶっちぎりました。
2着には2番手で進んだボブ・ル・ボー Bob Le Beau が入り、更に2馬身差3着にミッド・モン・レディ Mid Mon Lady の順。

スタースパングルドバナー Starspangledbanner やハラダサン Haradasun などこれまでも豪州馬を受け入れてきたオブライエン師も、ソー・ユー・シンクは桁違いの馬だと感服。既に“完成された馬” であり、“典型的なオーストラリア・タイプ” だとコメント。
得意とする2000メートルを中心に、今年の古馬戦線を沸かせるスター登場と言って良いでしょう。早くもエクリプス・ステークスに5対1のオッズが出され、巷の話題は専らワークフォースとの対決。どうやらエクリプスまで待たなくとも、5月22日に行われるトトソルズ・ゴールド・カップで世紀の決戦が見られるかも。
ところでソー・ユー・シンク、父はハイ・シャパラル High Chaparral で、またしてもサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells の後継馬。当分サドラーズ・ウェルズの遺産は競馬界を席巻する勢いです。

最後にフランスはシャンティー競馬場に向かいます。アレ・フランス賞 Prix Allez France (GⅢ、4歳上牝、2000メートル)は10頭立て。
3対1の1番人気に支持されたのは前走メゾン=ラフィットのリステッド戦に勝ったワン・クレヴァー・キャット One Clever Cat でしたが、結果は4着。
優勝は11対2のアナウンス Announce でした。1馬身差2着はアガ・カーンのシャマノヴァ Shamanova 、以下は短首・短首の接戦で3着ロック・マイ・ソウル Rock My Soul 、4着ワン・クレヴァー・キャット。

フランケルで話題を独占しているカーリッド・アブダッラー殿下の持馬で、アンドレ・ファーブル厩舎、マクシム・グィヨン騎乗。グィヨン騎手は直線で前が開かず我慢を強いられましたが、外を抜けた脚は鮮やかでした。
アナウンスは去年のドーヴィルでミネルヴァ賞(GⅢ)に勝っており、2着馬より4.5ポンド重いペナルティーを背負っていましから、着差以上の実力馬だと思われます。これで5戦4勝、唯一の敗戦は重馬場でのもので、良馬場条件にまだまだ成長する器でしょう。
5月23日にサン=クルー競馬場でおこなわれるコリダ賞が次のステップになりそう。

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