オブライエン/ムーアのパターン・ダブル

水曜日から金曜日までの3日間、伝統のチェスター競馬場メイ・ミーティングが開催されています。注目はもちろんダービー、オークスへのトライアルですが、その前に。

水曜日はオークス・トライアルがありましたが、これはパターン・レースからは外れていますので、後ほど簡単に。昨日の二日目(馬場状態は good to firm 、散水も行われていました)はG戦が2鞍、最初はハックスレー・ステークス Huxley S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン75ヤード)です。
1頭取り消しがあり5頭立て。8対11の1番人気に支持されたのは、オブライエン厩舎の期待馬アウェイト・ザ・ドーン Await The Dawn

芦毛のドリーム・イーター Dream Eater が大きく出遅れ、ディスタント・メモリーズ Distant Memories が逃げる展開。アウェイト・ザ・ドーンは2番手に待機し、直線入り口でスパートすると、後は他馬を引き離す楽勝。GⅢに甘んじている器ではないことを証明しました。
4馬身半差2着に逃げ粘ったディスタント・メモリーズ、更に半馬身差3着がフォルテ・デイ・マミ Forte Dei Mami 。

イギリスにはGⅠ戦が32鞍ありますが、オブライエン師が制していないのは5鞍。その一つが10月のニューマーケットで行われるチャンピオン・ステークスです。アウェイト・ザ・ドーンは去年、そのチャンピオン・ステークスの有力候補と見做されていましたが、結局は体調が万全でなく取り消し。オブライエン厩舎としては今年こその思いで同馬を使ってくるでしょう。
(ところで、チャンピオン・ステークスがニューマーケットで行われるのは去年まで。今年からは新たに創設される“British Champion’s Day”の目玉としてアスコット競馬場に場所を移すことになっています)

このところオブライエン厩舎の主力馬に騎乗しているライアン・ムーア、このチェスター開催でもオブライエンとのコンビで大活躍です。去年は2戦2勝に終わったアウェイト・ザ・ドーン、次走はロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスかハードウィック・ステークスになるでしょう。今年はシーズンを通して活躍し、無事にチャンピオン・ステークスに駒を進められることに期待しましょう。

続いてはダービーのトライアルとして重要なチェスター・ヴァーズ Chester Vase (GⅢ、3歳、1マイル4ハロン66ヤード)。ここは最初から5頭立てです。
6対4の1番人気に支持されたのは、先月ヘイドック競馬場の未勝利戦(ダービーと同じ12ハロン)に勝ったばかりのナサニエル Nathaniel (ガリレオ Galileo 産駒!)。2番人気には彼のカーリッド・アブダッラー殿下の持ち馬で、先月エプサム競馬場(ダービーと同じ競馬場)でダービー・トライアル(条件戦、10ハロン)に勝ったスランバー Slumber です。

しかし勝ったのはナサニエルでもスランバーでもなく、7対2のトレジャー・ビーチ Treasure Beach でした。2着に頭差で本命ナサニエル、3馬身差で3着にスランバーの順。
終わってみればトレジャー・ビーチもオブライエン/ムーア・コンビ。ハックスレーに続きパターン・レースのダブル達成です。
後方(と言ってもたった5頭ですが)に待機し、逃げるサドラーズ・リスク Sadler’s Risk と先に抜け出しにかかったナサニエルとの間の僅かな隙間をこじ開けるように衝いたムーアの冴えた判断が、最後の頭差に繋がったのでしょう。少頭数ながら見応えある一戦でした。
ムーアによれば、先頭に立ってチョッと気を抜くところのある馬とか。

トレジャー・ビーチは2歳時にロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ)で3着の実績があり、これがシーズン・デビュー戦でした。チェスターはカーヴがきつく、形状はエプサムに良く似ているコース。これを使ったことでダービーへの良い予行演習になったと思われます。
1・2着馬共にダービーを目指し、どちらも20対1のオッズが出されました。

さてGダブルを成し遂げたオブライエン/ムーア・チーム、実は初日のチェシャー・オークス Cheshire Oaks (リステッド、3歳牝、1マイル3ハロン79ヤード)も1番人気(6対5)のワンダー・オブ・ワンダーズ Wonder Of Wonders で制し、メインレース総舐めの感があります。
ワンダー・オブ・ワンダーズは大型馬で、この小回りコースには不向きと思われていましたが、2着に2馬身4分の3差を付ける楽勝。俄然オークス候補にのし上がってきました。出されたオッズも10対1。
この馬は血統にも注目で、母オール・トゥー・ビューティフル All To Beautiful はガリレオ Galileo /シー・ザ・スターズ Sea The Stars 兄弟との近親。父はキングマンボ Kingmambo という流血で、オークス馬たる資格も充分でしょ。

ところでチェシャー・オークスには日本の競馬ファンにも注目の1頭が出ていました。その名はサンデー・べス Sunday Bess 。父がディープインパクトだと言えば、“おっ”と思うでしょ。
サンデー・べスはスタートがあまり良くなく、終始最後方からの競馬で7着(9頭立て)に終わりました。未だ3戦目で勝鞍はありませんが(2着・4着)、イギリスのディープインパクトとして今後も動向に注目しましょう。サンデー・べスの母はリズ Lhiz といい、チリの1000ギニーに勝ったクラシック・ホースです。

昨日はフランスのロンシャン競馬場でもパターン・レースが行われました。デドーヴィル賞 Prix d’Hedouvelle (GⅢ、4歳上、2400メートル)。

1頭が取り消し7頭立て。6対5の1番人気に支持されたアイヴォリー・ランド Ivory Land が順当に逃げ切って期待に応えています。2着には4分の3馬身差でザック・ホール Zack Hall 、更に4分の3馬身で3着にワタール Watar 。
2番人気でダイナフォーマー Dynaformer 産駒のヴィーナー・ヴァルツァー Wiener Walzer は5着敗退。

アイヴォリー・ランドは、先月同じロンシャンで2400メートルのリステッド戦に勝った馬。パターン・レースは初制覇ですが、2400メートルの距離は3戦して負け知らずです。
アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗。デュプレ師によれば、同馬は極めてクール、遠征も問題なさそうということで、ロイヤル・アスコット(得意の2400メートルで行われるハードウィック・ステークスか)に登場する可能性もあるそうです。

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