オブライエン、4度目のワン・ツー・スリー!!
昨日はアイルランドのプレミエ・クラシック、アイルランド・ダービー Irish Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン)が行われました。先ずこのレポートから。
カラー競馬場は前日まで続いた雨も止んで、馬場はやや乾いて good 、処により good to yielding にまで回復してきました。取り消しは無く、先日紹介した8頭が全て出走。
5対4の1番人気はダービー3着のカールトン・ハウス Carlton House 。ダービーでは不利があった上での3着、サー・マイケル・スタウト厩舎、ライアン・ムーア騎乗、エリザベス女王の所有馬と、人気になる要素は全て揃っていました。
レースは4頭出しオブライエン軍団のペースメーカー、メンフィス・テネシー Memphis Tennessee (ジョセフ・オブライエン騎乗)の逃げで始まります。ペースはイーヴン、他の出走馬の能力を完璧に出し切るためにはベスト、というのがオブライエン師の指示でもあります。
これを追走したのは同じチーム・オブライエンのセヴィル Seville (シーマス・ヘファーナン騎乗)。他の有力馬は、先行2頭を見る形で後方待機でチャンスを窺います。
直線入り口、同厩2頭を追って2番人気(7対2)、ダービー2着のトレジャー・ビーチ Treasure Beach (カーム・オダナヒュー騎手)が3番手に進出。これを見て本命カールトン・ハウスもスルスルと4番手に上がってきます。
しかしここからカールトン・ハウスは差を詰めることが出来ず、結局オブライエン軍団の3頭を捉えることなく4着に終わりました。
優勝は、エプサム・ダービーの結果を実証するように、最後のスタミナで2頭を捻じ伏せたトレジャー・ビーチ。4分の3馬身差2着にセヴィル、更に1馬身差で逃げ粘ったメンフィス・テネシーの順。カールトン・ハウスは3着馬とは首差でした。
以下3馬身差5着にダンボイン・エクスプレス Dunboyne Express 、エプサム5着のネイティヴ・カーン Native Khan は7着に敗退しました。
オブライエン厩舎のワン・ツー・スリー・フィニッシュは、2002年、2007年、2010年に続いて何と4度目!!の快挙。愛ダービー優勝は6年連続で、通算9度目のこと。気の早いブックメーカーは、来年のオブライエン師による10度目の愛ダービー制覇に6対4のオッズを出したほどです。
今回騎乗したオダナヒュー騎手は初制覇、また自身も愛ダービー馬である父ガリレオ Galileo にとってもワン・ツー・フィニッシュとなります。
トレジャー・ビーチの今後について、オブライエン師はパリ大賞典かキングジョージを挙げましたが、秋に向けて休養の可能性も指摘しています。オーナー・サイドでは早々と同馬の来年の現役続行を決定、オブライエン師はより長い目で馬のローテーションを組み立てられることを強調していました。
尚この日のオブライエン厩舎、第1レース(2歳の未勝利戦)と第7レース(1マイルのリステッド戦)も制して(第1レースはワン・ツー・フィニッシュ)ハットトリックを達成しています。どちらも鞍上はライアン・ムーア、しっかりと愛ダービーの借りを返していました。
愛ダービー・デイのパターン・レースは他に2鞍。先ずは2歳馬のレールウェイ・ステークス Railway S (GⅡ、2歳、6ハロン)。5頭立て、オブライエン厩舎は2頭を送り込んできましたが、ここは夫々4・5着のどん尻争いに終わりました。
勝ったのは9対4のリルボーン・ラッド Lilbourne Lad 、15対8の1番人気に支持されたタフ・アズ・ネイルズ Tough As Nails との叩き合いを4分の3馬身制しての優勝です。3着は4馬身半の大差でフレンチ・エンペラー French Emperor 、逃げたオブライエン厩舎のヴォルト Vault とコワー Choir は惨敗。
リルボーン・ラッドはリチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗で、このレースに英国からの遠征馬が勝ったのは2年連続。前走はやはりアイルランドのナース競馬場でリステッド戦に勝っていました。これで通算成績は4戦3勝。
また2着のタフ・アズ・ネイルズは、デビュー戦に1着で入線したものの審議の結果2着に降着。今回は最後の叩き合いで勝ったリルボーン・ラッドが同馬に寄り掛かる場面があり、またも審議になっています。
しかし結果は着順通りで確定。短いキャリアで二度も審議の対象になったタフ・アズ・ネイルズ、前走カラーのリステッド戦で負けたパワー Power はロイヤル・アスコットでコヴェントリー・ステークスを制覇していますから、パワーとの再対決を楽しみにしている由。
リルボーン・ラッドには来年の2000ギニーに16対1のオッズが出されました。
カラーのもう一鞍はサファイア・ステークス Sapphire S (GⅢ、3歳上、5ハロン)。6頭立て。
6対4の1番人気は、これまでアイルランドで6戦5勝(ナース競馬場で3勝、コーク競馬場で2勝)と相性の良い英国からの挑戦馬イングザイル Inxile でした。
いつもの逃げ戦法で飛ばしたイングザイルでしたが、今回はこれも英国馬のハミッシュ・マゴナガル Hamish McGonagall に絡まれてペースが速くなり、結局はバテて4着に失速。
替って先頭に立ったハミッシュ・マゴナガルをゴール前で競り落としのが、インヴィンシヴル・アッシュ Invincible Ash 、ハミッシュ・マゴナガルに1馬身差を付けていました。更に1馬身差3着はムーヴ・イン・タイム Move In Time 。
勝ったインヴィンシブル・アッシュは地元マイケル・ハルフォード厩舎、ゲイリー・キャロル騎乗。これまでパターン・レースには何度も挑戦していましたが、これがG戦初勝利です。馬場が少し乾いた(それでも good)のが良かった、というのが陣営のコメント。
さて日曜日はフランスにも賑わいが戻ってきました。サン=クルー競馬場のパターン・レース2鞍、先ずは大一番サン=クルー大賞典 Grad Prix de Saint=Cloud (GⅠ、4歳上、2400メートル)から。
出走馬は僅かに5頭、4頭の牡馬に対し牝馬1頭というメンバーです。しかし注目はその1頭の牝馬、去年の凱旋門賞3着のサラフィナ Sarafina で、2対5の断然1番人気。
レースは相手と見られるシリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles が超スローペースに落としての逃げ、最後のスプリントに逆転の望みを託します。
サラフィナはこのスローな流れの影響をモロに受け、前半は引っ掛かってクリストフ・ルメールが馬を落ち着かせるのに懸命な様子。結局最後方で落ち着いたサラフィナでしたが、直線入り口では未だどん尻、ゴール前1ハロンでも4番手で、彼女の馬券を握っていたファンはヤキモキの絶頂。
しかし最後の50ヤードは圧巻でした。5頭の大外から一気の末脚、ルメールによれば、“二度伸びたね。一度は前の馬に取り付くとき、もう一度はゴールを突き抜けるとき。” という最後の鬼脚で粘るシリュス・デ・ゼーグルを首差捉えたところがゴール。1馬身半差3着にシルヴァー・ポンド Silver Pond という結果でした。
着差以上に強い勝ち方だったサラフィナ、管理するアラン・ロワイヤー=デュプレ師によれば、ヴェルメイユ賞から凱旋門賞に向かう予定。
オーナーのアガ・カーンにとっては、意外なことに1981年のアカラッド Akarad 以来30年振りのサン=クルー大賞典制覇でした。
サン=クルーのもう一鞍は、事実上のオークスでもあるマユレ賞 Prix de Malleret (GⅡ、3歳牝、2400メートル)。
8頭立て、ここは9対5の1番人気に支持されたテストステローネ Testosterone が見事期待に応えています。一旦は10馬身も差を付ける逃げ作戦、最後は他馬の追い込みにあって首差でしたが、カンパニラス Campanillas を辛うじて抑えました。3着もハナ差でシャンカルデー Shankardeh 。
パスカル・ベイリー厩舎、ステファン・パスキエ騎乗のテストステローネは今年4月にロンシャンでデビューした馬で、これが5戦目。初めは追い込み競馬をしていましたが、前走シャンティーのロヨーモン賞(GⅢ)で先行抜け出しの競馬で成功、今回は更に積極的な逃げ作戦でパターン・レース連勝を果たしました。
これでヴェルメイユ賞でサラフィナに挑戦する権利を得たテストステローネ、サラフィナの牙城を崩せるか・・・。
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