ワーク、職場復帰
ダービー/オークスを一週間後に控えたイギリス、今は嵐の前の静けさですが、昨日のサンダウン競馬場で二つのパターン・レースが行われました。久し振りに雨が降って馬場は good to soft 、馬には最も好ましい馬場状態でしょう。
先ずはヘンリーⅡ世ステークス Henry Ⅱ S (GⅡ、4歳上、2マイル78ヤード)。8頭が出走し、6対4の1番人気にはメルボルン・カップにも出走したゴドルフィンのホルバーグ Holberg が選ばれていました。
レースは前半をアーイム・トゥー・プロスパー Aaim To Prosper が逃げ、中程から前年の覇者アクマル Akmal が替って先頭に立つ展開。直線、大外に振ったデットーリ騎乗の本命ホルバーグが抜け出しに掛かりましたが、終始後方に待機していた2番人気(4対1)のブルー・ベイジャン Blue Bajan が馬なりのまま馬場の中央を通って抜け出し、2発のムチに応えて追い縋るモンタフ Montaff に2馬身半差を付けて優勝。ホルバーグは更に半馬身遅れて3着に終わりました。
ブルー・ベイジャンは9歳のせん馬。今年初めにアンドルー・ターネル厩舎からデーヴィッド・オミーラ師の元に転厩して3戦目、新天地で平場のパターン・レースに初めて勝って生涯最大の勝利を獲得しました。
それはオミーラ師にとっても、騎乗したダニー・タドホープ騎手にとっても同じ経験です。
ブルー・ベイジャンは5歳時にはエプサム競馬場でシティー・アンド・サバーバン・ハンデ(10ハロン)に勝ったこともありますが、障害戦も走る両刀使い。6歳時には障害のGⅢ戦にも勝っています。7歳の時にはヨークシャー・カップ(平場のGⅡ)で2着したことも。
前厩舎では去年の2月が最後のレース、新厩舎に移って今年5月のチェスター・カップ(ハンデ戦、不利があって6着)は実に1年3ヶ月ぶりの実戦でした。そのあと2年前に2着したヨークシャー・カップで2度目の2着、3度目の正直で久し振りの平場優勝をパターン・レース制覇で飾りました。
昨日のレース内容ならロイヤル・アスコットのゴールド・カップに出走しても勝負になりそうですが、それには追加登録が必要。登録料は2万5千ポンドと高額なだけに、ここは思案のしどころでしょうか。
続いてはブリガディア・ジェラード・ステークス Brigadier Gerard S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン7ヤード)。去年のダービー/凱旋門賞馬のシーズン・デビュー戦とあって、レース前から競馬マスコミも盛り上がっていました。
1頭取り消しがあり8頭立て。もちろん、そのワークフォース Workforce がイーヴンの断然1番人気。久し振りの実戦と、GⅠ馬が背負わねばならないペナルティー(7ポンド)が死角と言えば死角でしょう。
レースはポエト Poet が思い切った逃げ作戦。他は一団となって進み、大本命ワークフォースは内々を通って5番手辺りに付けます。2番人気のヤン・フェルメール Jan Vermeer (イギリスではジャン・ヴァメールと発音するようです)とパリ大賞典馬カヴァリーマン Cavalryman が最後方待機。
馬場が渋いこともあって、ポエトは直線で最外にコースを変えて逃げ切りを図ります。しかし流石はダービー馬、ライアン・ムーアは更にポエトの外を狙ってムチ一発、凱旋門賞馬の貫録でポエトを瞬時に捉え、粘るポエトを突き放すために更に一発。合計2発のムチでポエトに1馬身差を付けてシーズン復帰戦を飾りました。各スポーツ紙の見出しは“Back to Work”(仕事復帰)。
3着争いは11馬身も離されて別のレースの様。3着にはヤン・フェルメールが入り、カヴァリーマンが4着でした。ペナルティーの7ポンドを考慮すれば、ワークフォースの強さが際立った印象です。
ワークフォースを管理するサー・マイケル・スタウト師によれば、馬は更に成長し、調教も去年以上に分量をこなさなければならない由。次走はカーリッド・アブダッラー馬主との合議の上になりますが、ムーア騎手がオブライエン厩舎のソー・ユー・シンク So You Think にぞっこんという事情もあり、紆余曲折も考えられます。常識的にはキング・ジョージから凱旋門賞連覇がメイン・コースでしょう。
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