三冠の狭間で

今週のアメリカ競馬は三冠の最後の関門ベルモント・ステークスの一週前とあって、G戦は4日の土曜日に行われた5鞍だけです。

先ずはベルモント競馬場のヴァグランシー・ハンデキャップ Vagrancy H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。第1回は1948年に行われましたが、何度も中断されてきたレースです。レース名のヴァグランシーは、1939年生まれのチャンピオン牝馬。3歳時にコーチング・クラブ・アメリカン・オークスなど牝馬の重賞戦を総なめした強豪でした。
今年の勝馬はヒルダズ・パッション Hilda’s Passion 。5頭立て。絵に描いたような逃げ切り勝ちで、5馬身4分の1離された2着カーリーナ Curlina も2番手追走のまま。期待通りの1番人気で、これが今シーズン三つ目のG勝利です。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手ハヴィエル・カステラノはほとんど持ったままの楽勝。

続いてチャーチル・ダウンズ競馬場から2鞍。最初はドグウッド・ステークス Dogwood S (GⅢ、3歳牝、8ハロン)。明記された記事を読んだことはありませんが、どうも創設は1975年のようです。ドグウッドとは日本にも街路樹として輸入されている「ハナミズキ」のこと。同名の馬名かとも思いましたが、歴史に残るほどの馬にドグウッドという名の馬は見当たりませんから、やはり「ハナミズキ・ステークス」で良いのだろうと思います。
今年の勝馬はソルトリー・ストライク Saltry Strike 。6頭立て。前半は3番手、3コーナーから進出して直線入り口で先頭、直線では他馬を引き離し、逃げた2着ファンタジー・オブ・フライト Fantasy of Flight に3馬身4分の3差を付ける完勝でした。これが3勝目ですが、ステークスは初勝利。
調教師はケネス・マクピーク、騎手はマノエル・クルーズ。

もう一鞍がアリスタイデス・ステークス Aristides S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。1989年創設の短距離戦。レース名のアリスタイデス馬の名前で、同競馬場のケンタッキー・ダービーの初代勝馬。特に短距離と関係があったわけではないようです。
今年の勝馬はノーブルズ・プロミス Noble’s Promise 。8頭立て。ドグウッド・ステークスと同じような展開で、3~4番手を進んだノーブルズ・プミスが、早目先頭のアッタ・ボーイ・ロイ Atta Boy Roy を直線で1馬身競り落として優勝。今シーズン2戦目、最初はゲートインを嫌がっていましたが、スタートしてからはスムーズなレース運びでした。チャーチル・ダウンズは相性の良い競馬場、ここでは4戦2勝で、去年のケンタッキー・ダービーでは5着していた馬です。
調教師は前のレース、ドグウッド・ステークスに続いてケネス・マクピークのダブル、こちらの騎手はアラン・ガルシア。

ハリウッド・パーク競馬場からはカリフォルニアン・ステークス Californian S (GⅡ、3歳上、9ハロン)。ハリウッド競馬場の春開催の目玉であるハリウッド・ゴールド・カップのトライアルとして重要な一戦。1954年創設、Gシステム導入時はGⅠでしたが、1997年からGⅡに格下げ。日本に輸入されて一大種牡馬帝国を築いたサンデー・サイレンス Sunday Silence も過去の勝馬に名を連ねています。
今年の勝馬はトゥワーリング・キャンディー Twirling Candy 。7頭立て。1番枠から好スタートを切りましたが、鞍上が行きたがる馬を懸命に抑えて一旦は最後方まで下げる展開。直線では馬場の中央、4頭の外から末脚を爆発させて2着セツコ Setsuko に1馬身4分の1差を付け断然の1番人気に応えました。トゥワーリング・キャンディーはアメリカ最強古馬と目される1頭。今回は後方からも行けることを証明し、一か月後に迫ったハリウッド・ゴールド・カップの本命になることは間違いないでしょう。ブリンカーを外したのも初めて、ハリウッドのコースを二度回るレースも初めて、年長の馬にかったのも初めて、その才能を開花させつつあるスターの登場です。
調教師はジョン・サドラー、騎手はジョエル・ロザリオ。

最後にシスルダウン競馬場のオハイオ・ダービー Ohio Derby (3歳、8.5ハロン)。当日記初登場のシスルダウン競馬場 Thistledown は、オハイオ州を代表するコース、クリーヴランド郊外に位置します。開場は1931年。
この競馬場の最大の呼び物がオハイオ・ダービーで、オハイオ州で行われる唯一のG戦でもあります。ローカルなダービーですが歴史は古く、創設は1876年。
今年の勝馬はケイリブズ・ポッセ Caleb’s Posse 。9頭立て。アーカンソー・ダービーでは凡走でしたが、ここでは中団から4頭の外を回って伸び、2着マルコズ・フリング Marco’s Fling に1馬身4分の3差を付ける快勝。G戦は初勝利です。
調教師ドニー・フォン・ヘメルにとってもGレース優勝は初。騎手はオイゼビオ・ラゾー。

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