3歳馬強し、プリティー・ポリー

カラー競馬場の愛ダービー・フェスティヴァル、中日の昨日は3鞍のパターン・レースが組まれていました。レース順にレポートしましょう。

先ずはバランシン・ステークス Balanchine S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。公式にはスポンサーの名前を取ってグランジコン・スタッド Grangecon Stud ステークスと呼ばれますが、登録はバランシンです。
聴き慣れない名前のレースですが、それもそのはず、今年からGⅢに格上げされた一戦。創設は2005年、1994年の愛ダービー馬バランシンの名を冠しており、今年が7回目となる2歳戦です。
去年までGⅢだったフィリーズ・スプリントが今年はリステッドに降格された代わり、と見れば良いのでしょう。アイルランドで行われる今年最初の2歳馬のためのパターン・レースとなります。

今日の馬場は雨の影響で good 、所により good to yielding 。good という表現は、日本語の良馬場ではなく、柔らかい馬場のこと。馬にとって「good」ということでしょうか。

6頭立て。イーヴンの断然1番人気に推されたイクスピアリアンス Experiance が期待通りの快勝です。2着は1馬身4分の3差でソマサ Somasach (ボルジャー厩舎の馬ですから読み方が判りません。例によってゲール語なんでしょうか)、3着は短頭差でナシーム・シー Naseem Sea の順。

デヴィッド・ワッチマン厩舎、ウェイン・ローダン騎乗。ネイヴァン競馬場の牝馬限定新馬戦を2着に2馬身差で勝っていた馬で、これで3戦2勝となります。

次は二日目のメイン、プリティー・ポリー・ステークス Pretty Polly S (GⅠ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。事前の登録は8頭で、GⅠ5勝の5歳馬ミッドデイ Midday と去年のオークス馬スノー・フェアリー Snow Fairy の対決に注目が集まっていました。
しかし残念ながらエド・ダンロップ師は重馬場を考慮してスノー・フェアリーを取り消し。レースの興味は大きく削がれたかに見えました。

ライヴァル不在でミッドデイは1対3の圧倒的1番人気に支持されます。しかし彼女の楽勝という訳には行きませんでした。
劣勢と思われていた地元アイルランドを代表するのは、今年の愛1000ギニー馬ミスティー・フォー・ミー Misty For Me 。10対3の2番人気に期待され、見事タイトルを地元に死守しました。
最初から先頭で主導権を握ったシーマス・ヘファーナン騎乗のミスティー・フォー・ミー、直線は馬場の中ほどを通って逃げ切りを図ります。3番手から直線入り口で2番手に上がったミッドデイ、クィーリー騎手は馬場の良い処を探すように馬を外に回します。

しかしそこからはミスティー・フォー・ミーの独走。何とミッドデイに6馬身の大差を付ける完勝です。3着には更に4馬身半差が付いてクリサンシマム Chrysanthemum 、これも勝馬と同じ3歳馬でした。

ミスティー・フォー・ミーは愛1000ギニーのあとエプサムのオークスに挑戦、結果は5着でステイしないと思われていましたが、この日は重馬場の10ハロンでのぶっちぎり勝ち。陣営ではオークスは大事に乗り過ぎた、という判断のようです。
エイダン・オブライエン師は、次走に愛オークスの可能性を指摘しましたが、愛オークスはワンダー・オブ・ワンダース Wonder Of Wonders が主力候補。最終決定はもう少し先のことになりそうですね。

土曜日のパターン戦、3つ目はカラー・カップ Curragh Cup (GⅢ、3歳上、1マイル6ハロン)。ここも重馬場のため1頭取り消し、7頭立てで行われました。
11対8の1番人気に推されたネブラ・ストーム Nebula Storm が7着どん尻に敗退、7対2のレッド・カドー Red Cadeaux が優勝。2着は9馬身もの大差が付いてゼラシャン Zerashan 、首差3着に逃げ粘ったアドミラル・オブ・ザ・レッド Admiral of The Red 。

レッド・カドーを調教するエド・ダンロップ師は、GⅠ戦を取り消したスノー・フェアリーの調教師。師自身も取り消しは残念で、ここで雪辱の形。ダンロップ厩舎は今日(6月26日)の愛ダービーにネイティヴ・カーン Native Khan で臨みます。
同馬は重馬場が得意。前々走はハミルトン競馬場のハンデ(リステッド)戦に勝っていた馬で、パターン・レースは初挑戦での初勝利。この日はトム・マクローリン騎乗で、中団待機から鮮やかに抜け出しました。

ところで、土曜日はイギリスでもニューキャッスルとニューマーケットでパターン・レースが行われました。ロイヤル・アスコットが終わったイギリスは、やや中弛みの感がしないでもありません。

先ずニューキャッスル競馬場のチップチェイス・ステークス Chipchase S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。8頭立て。馬場はここも雨で、good to soft 。
5対6の圧倒的1番人気は、GⅠに2勝(モーリス・ド・ギースト賞とスプリント・カップ)しているリーガル・パレード Regal Parade 、GⅠのペナルティーを背負わなくてよい条件も有利と見做されてのダントツ人気でした。

しかし優勝は11対2のジェンキ Genki 。最後は接戦で頭差2着にドンカスター・ロウヴァー Doncaster Rover 、大本命リーガル・パレードは更に2馬身差3着。

ジェンキは、人によっては「元気」と発音する馬で、東日本大震災後にニューマーケットでアバーナント・ステークスに勝ったことをレポートした記憶があります。
ロジャー・チャールトン厩舎、今回は主戦騎手(スティーヴ・ドラウン)の負傷で同馬に初騎乗のジョージ・ベイカーの手綱。スタートを失敗して最後方からの追い込みになりました。ベイカー騎手は、ニューキャッスルではほぼ1年振りの勝利。

ジェンキはこれが生涯で8勝目。パターン・レースは初勝利となるシンコーフォレスト Shinko Forest 産駒の7歳せん馬で、この後はジュライ・カップで頂点を目指す目論みです。

最後にニューマーケット競馬場のジュライ・コースで行われるクライテリオン・ステークス Criterion S (GⅢ、3歳上、7ハロン)。ここも馬場状態は good to soft 、処により good 。
1頭取り消して12頭。押し出されるように4対1の1番人気は、デビュー戦以外は3着以内を外したことの無いフランボー Flambeau 。

しかしフランボーは10着大敗、優勝は9対1の3歳馬リブランノ Libranno でした。1馬身差2着には同じく3歳のポーザニアス Pausanias が入り、2頭だけ出走していた3歳馬のワン・ツー・フィニッシュ。3着には半馬身差でビーコン・ロッジ Beacon Lodge が入り、古馬勢では最先着です。

レースはスタートから三つのグループに分かれる展開。スタンド側を走ったグループが有利で、上位3頭は全てこのグループ。
リチャード・ハノン師は2頭出しでワン・ツー・フィニッシュ。勝馬にはライアン・ムーアが、2着馬にはリチャード・ヒューズが騎乗していました。

勝ったリブランノは2歳時にここニューマーケットのジュライ・コースでジュライ・ステークスを制した馬、このコース得意で知られる3歳馬です。当然ながら次走はこのコースのジュライ・カップになるでしょう。

プリティー・ポリーといいクライテリオンといい、3歳馬の強さが目立った土曜日でした。

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