フランスからの挑戦2騎、ユナイテッド・ネイションズの結果は?
今週のアメリカは7月4日の独立記念日があり、土曜日から月曜日までの3日間にグレード戦が振り分けられる形になりました。3連休初日の土曜日は、4場で7つのG戦、3つのGⅠ戦が華やかに行われています。
先ずベルモント・パーク競馬場から行きましょう。先ずドワイヤー・ステークス Dwyer (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。歴史の古いレースで、創設は1887年。創設当時はブルックリン・ダービーと呼ばれていたもの。レース名のドワイヤーとは、19世紀に事実上アメリカの競馬を取り仕切っていたドワイヤー兄弟に因んだもの。このレースもかつてGⅠに格付けされていた時期があります。
今年の勝馬はドミナス Dominus 。6頭立て。スタートして直ぐに先頭を奪ったドミナスがスローペースに落とし、そのまま2は先手追走のアディオス・チャーリー Adios Charlie に1馬身4分の3差を付けて優勝。所謂「行った行った」の競馬になりました。現地では逃げ切り勝ちのことを“wire to wire”と言いますが、逃げ切りの Dweyer は洒落になるでしょうか。同馬はこれで4戦2勝、ステークスは初勝利です。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、このレースを2009年にケンセイ Kensei で制しています。そのケンセイは、後でレポートするようにこのひサルヴァトーレ・マイルで優勝。皮肉な結果になっています。騎手はジュリアン・ルパルー。
同じくサバーバン・ハンディキャップ Suburban H (GⅡ、3歳上、9ハロン)。私がアメリカ競馬に興味を持った頃は堂々たるGⅠ戦でしたが、2009年からGⅡに降格されているそうで、時の流れを感じてしまいます。1884年創設のアメリカでも最も歴史あるレースの一つ。メトロポリタン・ハンデ、ブルックリン・ハンデと合わせてニューヨークのハンデキャップ三冠を構成、現在までに4頭が三冠を達成しています。レース名はメトロポリタン・ハンデ同様、英国エプサム競馬場の有名なハンデキャップ・レースの名前を模したもの。現在ではアメリカのレースの方が格式が高いと言って良いでしょう。
今年の勝馬はフラット・アウト Flat Out 。ここも6頭立て。前半は5番手に待機した最低人気のフラット・アウトが、直線では大外を回って追い上げ、ヒム・ブック Hymn Book に6馬身半の大差を付ける圧勝でサプライズを演出しました。G戦は初勝利。故障勝ちのため本格化が遅れていた馬で、これで通算成績は9戦4勝。まだこれからの成長株でしょう。いずれブリーダーズ・カップでも話題になりそうな逸材か。
調教師はチャールズ・ディッキー、騎手アレックス・ソリスは、同馬に初騎乗。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場からはバッシュフォード・マナー・ステークス Bashford Manor S (GⅢ、2歳、6ハロン)。チャーチル・ダウンズのみならず全米で行われる2歳牡馬による最初のグレード戦で、先週の2歳牝馬のためのデビュタント・ステークスと一対を成す一戦。歴史は古く、創設は1902年。今年は第110回目のレースとなります。
今年の勝馬はエクスファクター Exfactor 。7頭立て。スタートに失敗して最後方から進む展開でしたが、直線入り口で一気に差を詰め、直線はスピードが違うと言わんばかりの伸び脚、2着パワー・ワールド Power World に2馬身4分の3差、最後は抑える圧勝でした。これで3戦2勝の芦毛馬。
調教師はバーナード・フリント、騎手はカルヴィン・ボレル。
ハリウッド・パーク競馬場は豪華にGⅠ2本立て。シューメーカー・マイル・ステークス Shoemaker Mile S (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。1938年創設のプレミエ・ハンデキャップ Premier H と呼ばれていたレースが、1990年に日本でも騎乗したことのある名騎手ビル・シューメーカーに因んで改名された一戦。
今年の勝馬はカレイジャス・キャット Courageous Cat 。6頭立て。逃げるライベリアン・フレイター Liberian Freighter を2番手でマーク、直線で抜け出すと、3番手から追い込むカラコルタード Caracortado を首差抑えて優勝、1番人気に応えました。GⅠは初制覇。これでBCマイルでゴールディコヴァ Goldikova に挑戦する権利を得たことになります。
調教師はウイリアム・モット。勝ったパトリック・ヴァレンズエラ騎手は、ハリウッド競馬場で区切りの良いステークス100勝目。今年48歳のヴェテランで、同馬には初騎乗でした。記念すべき100勝目が、アイドルだった名手シューメーカーの名を冠したレースだったことも何かの因縁でしょう。同騎手のGⅠ勝利は、何と2006年以来のこととか。
次もGⅠのトリプル・ベンド・ハンディキャップ Triple Bend H (GⅠ、3歳上、7ハロン)。2004年からGⅠに格上げされた短距離戦。創設は1952年、最初はレイクス・アンド・フラワーズ・ハンデという特徴のない名前でしたが、1979年にサンタ・アニタ・ハンデにも勝ったスピード馬トリプル・ベンドに因んで改名された一戦。同馬は1972年にロス・アンジェルス・ハンデを制した時に当時の7ハロンの世界記録を樹立したことがあり、7ハロン戦に相応しいレース名と言えるでしょう。
今年の勝馬はスマイリング・タイガー Smiling Tiger 。8頭立て。余裕の逃げ切り勝ち。内から追い込んだキャンプ・ヴィクトリー Camp Victory は3馬身4分の1差及ばず2着。これがGⅠ3勝目の貫録を見せ付けました。このレース、今年はブリーダーズカップへの優先出走権はありませんが、スマイリング・タイガーは当然ながらスプリントを目標にするでしょう。
調教師はジェフ・ボンド、騎手はジョエル・ロザリオ。
モンマス・パーク競馬場はサルヴァトール・マイル・ステークス Salvator Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。1948年創設、レース名は19世紀アメリカの名馬で、今日ベルモント競馬場で行われたサバーバン・ハンデに勝ったこともある馬です。
今年の勝馬は、先にも紹介したようにケンセイ Kensei 。7頭立て。7頭が一団となる展開で、3番手グループの外を追走したケンセイが直線で先行2頭を捉え、追い込むソアリング・エンパイア Soaring Empire を4分の3馬身差抑えて優勝。2009年の8月から続いていた連敗記録(7戦)に終止符を打ちました。元々は去年の3歳牡馬チャンピオンであるルッキン・アット・ラッキー Lookin At Lucky の半兄という良血、今日の15対1というオッズは心外だったはずです。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手はエドガー・プラード。
そして最後はユナイテッド・ネイションズ・ステークス United Nations S (芝GⅠ、3歳上、11ハロン)。1953年創設、2007年まではユナイテッド・ネイションズ・ハンデキャップとして行われていました。ブリーダーズ・カップ・チャレンジの一戦で、勝馬は自動的にBCターフの出走権が与えられます。一時期シーザーズ・インターナショナルと改名されていましたが、現在は元のレース名に戻っています。
今年の勝馬はティークス・ノース Teaks North 。10頭立て。ヨーロッパ競馬ファンにはお馴染みの仏オークス馬スタチェリータ Stacelita や前年のこのレースの覇者で同じくフランスのチンチョン Chinchon が出走して注目されましたが、終始4~5番手の内、経済コースを走ったティークス・ノースが、直線入り口では外に持ち出しての鮮やかな差し切り勝ち。追い込んだチンチョンが半馬身差2着に食い込みました。スタチェリータは初の小回りコース、クラブハウス・ターン(第1コーナー)では外に膨れ、強引に進出した直線入り口では先頭に立つ積極的な競馬ながら最後は後続の追い込みに屈して3着。2着とは半馬身差でしたから、初のアメリカ競馬としては好走と言えるでしょう。
勝ったティークス・ノースはモンマスの芝コースは4勝目。今年はGⅠ2勝目で、地の利を活かした形です。これでブリーダーズ・カップ・ターフの出走権を得た同馬、初距離の11ハロンも克服し、アメリカの芝長距離戦のエースと目される存在にのし上がってきましたね。
調教師はフスティン・サラスト、騎手はエディー・カストロ。
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