土曜日はBCに向けたトライアル・レースのオンパレード

ブリーダーズ・カップを一か月後に控え、土曜日のアメリカ競馬はトライアル・レースの目白押しでした。
ヨーロッパから米競馬試走を目論む馬もいて、各陣営の動向が気に掛かるところです。4場で行われた11レースを順次紹介していきましょう。レース数が多いので、多少乱雑なレポートになることをお許しあれ。

ということで、先ずベルモント・パーク競馬場のジャマイカ・ハンディキャップ Jamaica H (芝GⅠ、3歳、9ハロン)。1929年に、かつてニューヨークに存在したジャマイカ競馬場で創設。1959年に同コースが閉鎖されてからはアケダクトやベルモントで続けられてきました。グレード制導入時はGⅡ、2009年からGⅠに昇格。時期的にブリーダーズ・カップのステップレースとして使われますが、指定レースではありません。
今年の勝馬はウエスタン・アリストクラート Western Aristocrat 。7頭立て。イギリスから遠征したウエスタン・アリストクラートがスローに落としての逃げ切り勝ち。終始2番手に付けた本命ブリリアント・スピード Brilliant Speed が何度かペースを上げようと突きましたが、結局は1馬身差が詰まらず2着。勝馬はイギリスで6戦3勝、アメリカは初挑戦での初勝利、初めて使う薬物(ラシックス)の影響も出なかったようです。このあともアメリカに留まり、ブリーダーズ・カップ・マイルに向かう予定。
調教師はジェレミー・ノセダ、騎手コーリー・ナカタニは絶好調で、この日ここまで7回騎乗して5勝目。

フリゼット・ステークス Frizette S (GⅠ、2歳牝、8ハロン)。同じ日に行われるシャンペン・ステークスの牝馬版。これもブリーダーズ・カップの指定レースで、こちらの勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズへの出走権が与えられます。創設はシャンペン・ステークスよりずっと遅れて1945年のこと。レース名のフリゼットは20世紀初頭の名馬で、競走馬として以上に繁殖牝馬として名を残す名牝です。
今年の勝馬はマイ・ミス・オーレリア My Miss Aurelia 。6頭立て。平均ペースに落としての逃げ切り勝ち。3番手を進んだストップショッピングマリア Stopshoppingmaria が直線入口で2番手に上がりましたが、直線では5馬身半の大差を付ける圧勝。これで3戦無敗、ジュヴェナイル・フィリーズの1番人気に支持される可能性は濃厚です。馬名のオーレリアは、オーナーの母の名前からだそうです。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手コーリー・ナカタニは、ジャマイカに続くGダブルで、このカード6勝の快挙。

シャンペン・ステークス Champagne S (GⅠ、2歳、8ハロン)。1867年創設、アメリカの2歳戦では最も古い歴史を持つ一戦。現在はブリーダーズ・カップの指定レースで、勝馬には自動的にブリーダーズ・ジュヴェナイルへの出走権が与えられます。レース名は英国の伝統的な2歳戦(ドンカスター競馬場)を模したもの。過去の勝馬には名馬の名前が綺羅星の如く並ぶ注目のレースです。
今年の勝馬はユニオン・ラグス Union Rags 。8頭立て。中団待機。直線では衝く間隔を探す場面もありましたが、馬群を割ってからの脚は桁違い。2着アルファ Alpha に5馬身4分の1差を付ける完勝で圧倒的1番人気に応えました。7週間の休み明けも問題なし。こちらも3戦全勝でジュヴェナイルに本命で臨むでしょう。去年このレースに勝ったアンクル・モー Uncle Mo はジュヴェナイルを制して2歳チャンピオンに選ばれています。
調教師はマイケル・マッツ、騎手はハヴィエル・カステラノ。

続いてイリノイ州ホーソン競馬場のホーソン・ゴールド・カップ・ハンディキャップ Hawthorne Gold Cup H (GⅡ、3歳上、10ハロン)。1928年創設。ホーソン競馬場の名物レースで、優勝者に贈られるトロフィーは純金製であることも有名。昨今では金は1グラムが4000円ですからね、これを狙って出走してくる馬も多いでしょう。トロフィーが何グラムかって? それは知りません。
今年純金を手にしたのはヘダック Headache 。10頭立て。前半は5番手。第3コーナーから捲り気味に外を回って進出、重い馬場で芦毛の馬体が真っ黒になりながらも直線で伸び、ホエアズ・スターリング Where’s Sterling に半馬身差を付けて優勝。今期は7戦3勝、通算では26戦8勝となります。
調教師はマイケル・メーカー、騎手はパコ・ロペス。

前日に秋競馬が開幕したキーンランド競馬場のウッドフォード・ステークス Woodford S (芝GⅢ、3歳上、5.5ハロン)。1997年にヌレエフ・ステークス Nureyev S として創設。2003年にケンタッキー州ウッドフォード郡の名を冠した名称に変更されています。創設時はリステッド、2009年からGⅢに格付けされましたが、ブリーダーズ・カップの指定レースではありません。アメリカでは少ない芝コースの短距離戦。
今年の勝馬はハヴロック Havelock 。12頭立て。スタートで出遅れ。後方を進み、直線では内を衝くも前が開かず外に出すと、一気の末脚を爆発させて鮮やかな差し切り勝ち。2着は1馬身差でパーフェクト・オフィサー Perfect Officer 。今期ステークスは3勝目。
調教師はダリル・ミラー、騎手はロビー・アルバラド。

サラブレッド・クラブ・オブ・アメリカ・ステークス Thoroughbred Club of America S (GⅡ、3歳上牝、6ハロン)。これまたブリーダーズ・カップの指定レースで、創設は1981年。1984年からリステッド、1988年にGⅢ、2009年から現在のGⅡに格上げ。
今年の勝馬はホリデイ・フォー・キッテン Holiday for Kitten 。11頭立て。スタートは一番。一旦2番手に下げてから直線で抜け出し、ゴール前ではミュージカル・ロマンス Musical Romance に追い詰められましたが、辛うじて頭差凌いでの優勝。G戦初勝利で穴を開けました。このあとはブリーダーズ・カップ・フィリー・アンド・メア・スプリントを目指すでしょう。
調教師はウェスリー・ウォード、騎手はケンドリック・カームーシュ。

ファースト・レディー・ステークス First Lady S (芝GⅠ、3歳上牝、8ハロン)。これもブリーダーズ・カップ(フィリー・アンド・メア・ターフ)のステップレースになりますが、勝馬に出走権が与えられる指定レースではありません。1998年にリステッド戦として創設、以来GⅢ(2000年)、GⅡ(2001年)、GⅠ(2007年)とグレードを上げてきた点は他のレースと同じ。フィリー・アンド・メア・ターフが創設されたのは比較的最近のことなので、いずれは指定レースになる可能性はあるでしょう。レース名は馬名ではなく、文字通り「ファースト・レディー」の意味でしょう。
今年の勝馬はネヴァー・リトリート Never Retreat 。12頭立て。不利な大外スタートも、4番手から抜け出す快勝。2着はアイルランドから遠征したオブライエン厩舎のトゥギャザー Together (アメリカ初挑戦)が出遅れを克服して1馬身半差(カーム・オダナヒュー騎乗)。勝時計1分34秒08はステークス・レコードというおまけ付き。
調教師はクリス・ブロック、騎手ジュリアン・ルパルーは、この日4勝目。

ブリーダーズ・フューチュリティー  Breeders’ Futurity (GⅠ、2歳、8.5ハロン)。1910年創設、キーンランド競馬場で行われる伝統ある2歳戦。2009年からはディクシアナ牧場がスポンサーとなり、同牧場の名前を冠に戴く一戦。これもブリーダーズ・カップへの指定レースで、ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイルへの出走権が掛かります。これまたGシステム導入時から徐々に格上げされてきた歴史があり、導入時はGⅢ、1976年からGⅡ、そしてGⅠに上がったのは2004年以降となります。
今年の勝馬はドゥーラハン Dullahan 。13頭立て。3番枠からスタート、第1コーナーでは危うく落馬するほどの不利があって前半は後方。3コーナーから徐々に差を詰めて直線入口は4番手。そこから外を衝いて伸び、早目に先頭に立ったマジェスティック・シティー Majestic City を4分の3馬身捉えて優勝。ここまで未勝利馬の初勝利で、17対1の大穴になりました。しかし血統は一流で、一昨年のケンタッキー・ダービー馬マイン・ザット・バード Mine That Bird の半弟に当たります。もし出れば、ジュヴェナイルの伏兵として注目される一頭でしょう。
調教師はデール・ロマンス、騎手はケント・デザーモ。

シャドウェル・ターフ・マイル Shadwell Turf Mile (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。ケンタッキー州にあるシャドウェル牧場がスポンサーとなっているレースで、1986年創設。創設時はリステッド戦でしたが、1988年にGⅢ、1998年からGⅡ、そして2002年に最高格GⅠへと階段を上り詰めたマイル戦。現在ではブリーダーズ・カップの指定レースで、勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・マイルへの出走権が与えられます。
今年の勝馬はジオ・ポンティ Gio Ponti 。8頭立て。BCマイルを目指してヨーロッパからの参戦も含めた好メンバー。4番手に付けた前年の覇者ジオ・ポンティが、あと100ヤードで内から鋭く伸びて2連覇達成。ステークス5連敗中でしたが、大一番を一か月後に控えて大物の復活をアピールしました。優勝は去年のターフ・マイル以来、7つ目のGⅠ制覇でもあります。2着は半馬身差でゲット・ストーミー Get Stormy が入り、タジャウィード Tajaaweed 、ゾッファニー Zoffany は不発。ジオ・ポンティは、去年2着だったBCマイルでの雪辱を期すでしょう。
調教師はクリストフ・クレメント、騎手はラモン・ロドリゲス。

最後はサンタ・アニタ競馬場から。エンシェント・タイトル・ステークス Ancient Title S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。1985年創設、こちらはブリーダーズ・カップの指定レースで、勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・スプリントへの出走権が与えられます。レース名のエンシェント・タイトルは、二度カリフォルニアの年度代表馬に選ばれて競馬の殿堂入りした名馬。ハリウッド・ゴールド・カップなど生涯57戦24勝の成績。
今年の勝馬はアマゾンビー Amazonbie 。6頭立て。ペースが速く、後方2番手を進んだアマゾンビーが、これも後方3番手で待機したインフュータブル Infutable に4分の3差で優勝。GⅠ戦初勝利となります。
調教師はウイリアム・スポウル、騎手はマイク・スミス。

オーク・トゥリー・マイル Oak Tree Mile (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。オーク・トゥリー開催に行われる芝のマイル戦として1986年に創設。当初はカーネル・F.W.ケスター・ハンデという名称だったそうですが、1996年に現レース名に変更。2008年はブリーダーズ・カップ・マイルの指定レースでしたが、どうも今年は特に出走権は付与されないようですね。
今年の勝馬はジェラニモ Jeranimo 。7頭立て。スタンド前のスタートでは先頭。向正面でモントレー・ジャズ Monterey Jazz に先頭を譲って離れた2番手。直線で逃げ馬を捉えると、本命ミスター・コモンズ Mr. Commons の追い込みを4分の3馬身差抑えての快勝です。ステークス勝利は去年12月以来。ブリーダーズ・カップに向かうか否かは未定で、陣営も明確なコメントは出していません。
調教師はマイケル・ベンダー、騎手はマーチン・ガルシア。

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