グローリアス・グッドウッド2011初日

今年もこの季節がやってきました。イギリスの夏が一番輝くとき、サセックス州の自然な起伏を利用したグッドウッド競馬場がその舞台。火曜日から土曜日までの5日間、毎日のようにパターン・レースが組まれています。
今年のグッドウッド、最大の話題は二日目(今日)に行われるサセックス・ステークス。僅か4頭立てながら、フランケル Frankel とキャンフォード・クリフス Canford Cliffs の対決で盛り上がっています。

その楽しみは明日の日記、今日は初日に行われた3鞍のパターン戦をレース順にレポートして行きましょう。今年のイギリスは寒いそうですが、この日も朝方は雨、馬場状態は good でした。

先ずはセントレジャーのトライアルとして位置づけられるゴードン・ステークス Gordon S (GⅢ、3歳、1マイル4ハロン)。当初11頭が登録してきましたが、朝の雨で2頭を登録していたマーク・ジョンストン厩舎が第一候補のドドーニ Dordogne を取り消し、10頭立てで行われました。
11対10の1番人気は、ロイヤル・アスコットのキング・エドワード七世ステークスで2着したフィオレンテ Fiorente 。このレースでは勝馬から5馬身も離されましたが、勝ったのは先日のキングジョージを制したナサニエル Nathaniel 。今年の3歳はレヴェルが高いのでは、という思惑もあって信頼を集めていました。サー・マイケル・スタウト厩舎、ライアン・ムーア騎乗も期待の要因です。

レースはウェル・シャープ Well Sharp のゆったりとした逃げで始まります。中団を進んだフィオレンテが直線で抜け出し、ほぼ勝利を手にした時でした。一旦は交わされた3番人気(7対1)のナミビアン Namibian が外を回って差し返し、最後のスリリングな叩き合いを制して優勝。本命フィオレンテは首差2着、更に1馬身4分の1差にハンターズ・ライト Hunter’s Light が飛び込みました。
ハンターズ・ライトはゴドルフィンの馬、当然ながらランフランコ・デットーリが騎乗予定でしたが、デットーリの乗ったヘリコプターが遅延(英国では騎手はヘリで移動するのが常識です)したため間に合わず、テッド・ダンカンに乗り替わるというハプニングもありました。

ナミビアンを管理するのは、雨で第一候補を取り消したマーク・ジョンストン師。師がゴードン・ステークスを制したのは2002年のバンダリ Bandari 以来2度目で、そのバンダリはセントレジャー3着でした。
また、師にとってこの勝利はグローリアス・グッドウッドでの50勝目という節目の優勝でもあります。
今回騎乗したのはブラジル出身のシルヴェストル・デ・スーザくん。このところジョンストン厩舎からの騎乗依頼も増えています。それもそのはずで、今シーズンはポール・ハナガン、ライアン・ムーア等とリーディング・ジョッキー争いを演じている若手。仕掛けのタイミングが難しいグッドウッドで見事な手綱捌きが光りました。(日本からもこういうジョッキーが出てこないものでしょうか)

ナミビアンは、ロイヤル・アスコットでクィーンズ・ヴァーズを1番人気で勝った馬。スーザ騎手に嬉しいロイヤル・アスコット初勝利をプレゼントした馬でもあります。当然ながらセントレジャーの有力候補で、オッズは10対1に上がりました。

続いてはルノックス・ステークス Lennox S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。
9頭が出走。5対2の1番人気は、今年の3歳馬のレヴェルの高さを証明するように、3頭出走していたクラシック世代の1頭ストロング・スート Strong Suit 。ロイヤル・アスコットのジャージー・ステークスに勝ち、フランスに遠征したジャン・プラ賞は不利があって3着惜敗していた馬。

4歳のレッド・ジャズ Red Jazz が逃げ、勝負どころで各馬が一斉に仕掛けましたが、ただ一頭ストロング・スートは馬なりのまま。あと50ヤードでリチャード・ヒューズ騎手がゴーサインを出すと、勝負は一瞬で決まりました。
1馬身半差2着にレッド・ジャズが逃げ残り、前が開かず外に振ったビーコン・ロッジ Beacon Lodge が鋭い差し脚で追い込みましたが頭差届かず3着。2番人気に推されたゴドルフィンのデレゲイター Delegator は9着シンガリ惨敗です。

圧勝したストロング・スートはリチャード・ハノン厩舎。最後はヒューズ騎手が抑えたほどで、着差以上の強さが目立ちました。
同馬はシーズン初戦のグリーナム・ステークスでフランケル Frankel に惨敗(6頭立てドン尻負け)、検査の結果、気管支に問題が発覚して手術。以後は馬本来の能力を回復してアスコット、シャンティーと好走を続けてきました。
厩舎にはマイルのエース、キャンフォード・クリフスがいることでもあり、今シーズンは7ハロンの大レース(最終的にはロンシャンのフォレ賞)を目指しますが、来年はサセックス・ステークスの有力候補に成長してくることは間違いなさそうですね。

最期は2歳馬の最短距離、モールコム・ステークス Molecomb S (GⅢ、2歳、5ハロン)。
1頭取り消しがあって13頭立て。1番人気(10対3)にはロイヤル・アスコットのノーフォーク・ステークス(GⅡ)で3着したクラウン・ディペンダンシー Crown Dependency が選ばれていましたが、4着敗退。

優勝は6対1で2番人気に支持されていたリクイント Requinto でした。スタンドに最も近い14番枠スタート、最後は思い切って馬場の中央に持ち出し、先行馬を差し切っての優勝です。
2着は1馬身4分の1差でバーワーズ Burwaaz 、更に首差でチャールズ・ザ・グレート Charles The Great が3着。

勝ったリクイントはクールモアの馬で、第二厩舎を担うデヴィッド・ワッチマン師の管理馬、ウェイン・ローダンが騎乗していました。パターン・レースは初挑戦ですが、既に4戦2勝。勝鞍はいずれも5ハロンで、2度走った6ハロンはいずれも負けていました。これで5ハロン戦は3戦全勝となります。

以上が初日のレポート。

ということで愈々サセックス・ステークスは明日に迫ってきましたが、既に枠順が発表されているので紹介しちゃいましょう。と言っても4頭立てですから簡単なもの。以下です。

1 リオ・デ・ラ・プラタ Rio de La Plata
2 キャンフォード・クリフス Canford Cliffs
3 フランケル Frankel
4 ラジサマン Rajsaman

言うまでもありませんが、リオ・デ・ラ・プラタはゴドルフィンの馬、ラジサマンはフランスのヘッド師が遠征させてきた馬。
グッドウッドの1マイルは、どちらが速いかではなく、どちらが強いかでしょう。強い3歳世代を反映して1番人気はフランケル、相手はもちろんキャンフォード・クリフス、というのが世評です。
さて軍配はどちらに、いやどの馬に、か。

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