グローリアス・グッドウッド2011千秋楽

5日間に亘って行われたグッドウッド競馬場の「競馬の祭典」グローリアス・グッドウッドも愈々フィナーレを迎えました。最後の3日間、馬場状態は good to firm 、所により good で変わりません。最終日は好天にも恵まれたようです。

千秋楽、多くの馬券ファンのお目当ては短距離の伝統あるハンデ戦、スチュワーズ・カップですが、拙ブログのテーマはパターン・レース。この日一鞍だけ行われたのはナッソー・ステークス Nassau S (GⅠ、3歳上牝、1マイル1ハロン192ヤード)です。

先立つ話題は3世代を代表する名牝の激突、即ちナッソー・ステークス2連覇の5歳ミッドデイ Midday 、4歳馬で去年のオークス馬スノー・フェアリー Snow Fairy 、そしてクラシック世代からは愛ギニー馬ミスティー・フォー・ミー Misty For Me の3強対決に注目が集まっていました。
しかし枠順が発表されて直ぐ、早々とミスティー・フォー・ミーが不出走を決断。その意味では興味が殺がれた形ですが、それでも2頭の対決は馬券を離れて見応えのあるレースとなりました。

最終的にゲートインしたのは6頭、史上初のナッソー3連覇がかかるミッドデイが6対4の1番人気、スノー・フェアリーは5対2の2番人気です。

レースは出走馬中唯一の3歳馬ベアフット・レディー Barefoot Lady が逃げ、ミッドデイは中団、スノー・フェアリーは本命馬をマークするように直後に付けます。
各馬が仕掛けに入った時、ミッドデイのトム・クィーリーは未だ馬なりのまま。最後に仕掛けたミッドデイがスパートすると、勝負は決定的。ランフランコ・デットーリ騎乗のスノー・フェアリーが内に切れ込んでミッドデイを負いましたが、2馬身及ばず2着。
更に1馬身4分の1差で3着には、勝馬と同じヘンリー・セシル厩舎のプリンシパル・ロール Principal Role が食い込み、セシル厩舎の1・3着。内ラチ沿いに見せ場を作ったスタウト厩舎のクリスタル・カペラ Crystal Capella が4着好走。

ところでクリスタル・カペラにはスタウト厩舎の主戦騎手ライアン・ムーアが騎乗するはずでしたが、ムーアは一つ前のレースで落馬、ここはジェイミー・スペンサーに乗り替わっていました。
この事故は、骨折して急ブレーキが掛かった馬に後続2頭が相次いで接触した落馬事故、ムーアとスペンサーが投げ出されました。スペンサーと落馬した2頭は無事でしたが、ムーアは救急車で病院に搬送され、上腕骨と親指を骨折が判明。医師の判断では、今シーズンの騎乗は不可能という残念なニュースが伝わりました。
ムーアは現時点でリーディング・ジョッキー争いで差の無い3位に付けていましたが、今期のタイトル奪還は絶望的となりました。同じレースで落馬したスペンサーは幸いにも無傷、ナッソーでは負傷したムーアの代役を務めたのですから、皮肉なことです。

さて、6つ目のGⅠを制したミッドデイは、ナッソー3連覇を達成。これまで2連覇した馬はミッドデイを含めて3頭いましたが、これで新記録を樹立したことになります。
因みに他の2頭とは、1975年と1976年に勝ったルサルカ Roussalka 、1991年と1992年のルビー・タイガー Rubby Tiger 。

更にヘンリー・セシル師にとっては8勝目のナッソー。2連覇のルサルカも師の管理馬でしたから、この2頭でナッソー・ステークス5勝の荒稼ぎをしたことになります。これまでナッソー最多勝利調教師はアレック・テイラー、マイケル・スタウトと3人が並んでいましたから、セシル師が単独トップに躍り出たことにもなります。
ナッソー・ステークスが創設されたのは1840年。GⅠに格上げされたのが1999年ですから、ミッドデイこそ正に「グッドウッドの女王」と呼べる存在になりました。

ミッドデイは2009年にブリーダーズ・カップ、2010年はナッソーの後ヨークシャー・オークス、ヴェルメイユ賞でGⅠ3連勝を経験しています。今期は前走プリティー・ポリー・ステークスでミスティー・フォー・ミーに負けていましたが、今回の勝利で健在をアピール、次走はヨークシャー・オークスが有力視されています。

アブダッラー/セシル/クィーリーのトリオは、今年のグッドウッドでフランケル Frankel とミッドデイでGⅠを完全制覇。長いグローリアス・グッドウッドの歴史の中でも忘れ難きシーズンになったようです。

ところでフランスに目を転ずると、7月29日に恒例のドーヴィル夏開催がスタートしています。初日こそパターン・レースがありませんでしたが、昨日の土曜日には開催最初のG戦、プシケ賞 Prix de Psyche (GⅢ、3歳牝、2000メートル)が行われました。
馬場は good to soft 、12頭が出走し、6対4の1番人気には仏クラシック戦線で入着を果たしているグローリアス・サイト Glorious Sight が選ばれていました。

そのグローリアス・サイトが逃げ切り作戦に出ましたが、失速して9着敗退。レースは追い込み馬の勝負になり、3頭が鼻面を揃えてゴールする大接戦。
写真判定の結果、優勝は167対10のダラルア Dalarua 、ハナ差2着がドリーム・ピース Dream Peace 、頭差3着にドルカス・レーン Dorcas Lane の順。4番手追走、直線で前が塞がりながらも直前で抜け出したダラルアが、最後方から追い込んだドリーム・ピースを僅かに抑えるという内容でした。

ダラルアはステファン・ワッテル厩舎、ステファン・パスキエ騎乗。これが未だ5戦目とキャリアの浅い馬ですが、サン=タラリ賞、クロエ賞とパターン・レース挑戦3度目で栄冠を勝ち取りました。オーナーはG戦に勝つことが夢だったそうで、今後のことは未定の由。

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