不在中のアメリカ競馬

夏休みで更新を休んでいた競馬日記、漸くヨーロッパ編を取り戻しましたが、未だアメリカ編が残っていました。
該当するのは8月12日から15日までですが、レース数が極めて多いので詳細まではとても追い切れません。従ってアメリカ競馬は多少乱暴な記事になりますが、遅れていた分を一気に取り返してしまいます。20日以降の分は記事を改めるとして、4日分をバァ~ッと書いちゃいますから、その積りで・・・。

≪8月12日≫

サラトガ競馬場のナショナル・ミュージアム・オブ・レーシング・ホール・オブ・フェイム・ステークス National Museum of Racing Hall of Fame S (芝GⅡ、3歳、8.5ハロン)。1950年にギャラント・マン・ステークス Gallat Man S として設立されたレース。1985年に「アメリカ競馬名誉の殿堂」の名を冠したハンデ戦に改名され、更に2007年から定量戦のステークスに変更されています。「競馬の殿堂博物館」はサラトガ競馬場とは道路一つ隔てたユニオン・アヴェニューにあるそうで、もしニューヨークに行くことがあれば是非尋ねてみたい場所。
今年の勝馬はビッグ・ブルー・キッテン Big Blue Kitten 。7頭立て。前半は内々の3番手、直線もポッカリと空いた内ラチ沿いを抜け出し、追い込むペリゴー Perregaux に1馬身4分の1差を付けて優勝、ステークス・デビューを勝利で飾りました。未勝利戦から5連勝で、格上挑戦も難なくクリアーです。
調教師はチャド・ブラウン、騎手はジョン・ヴェラスケス。

≪8月13日≫

アーリントン・パーク競馬場は芝コースのGⅠ戦3鞍の豪華版。国際レースのミリオンを含め、ヨーロッパ勢が大活躍しました。
特にオブライエン軍団の2頭(去年と今年の愛ダービー馬)がセクレタリアートとミリオンを制したニュースはイギリスの新聞でも報道され、私は滞在中のロンドンのホテルで知って思わず“オッ”と声を上げてしまいました。

先ずセクレタリアート・ステークス Secretariat S (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。レース名のセクレタリアトは説明するまでもなく1973年のアメリカ三冠馬。恐らくアメリカのサラブレッドで最も有名な存在でしょう。1974年に前年の三冠馬をシカゴで走らせるために態々創設されたアーリントン・インヴィテーショナルというレースから発展したもの。2005年から芝の「グランド・スラム」の一つに指定され、この他にコロニアル・ターフ・カップ、ヴァージニア・ダービー、ブリーダーズ・カップ・ターフを全て制した馬には特別ボーナスが支給されます。
今年の勝馬はトレジャー・ビーチ Treasure Beach 。9頭立て。逃げるジヤリード Ziyarid の2番手に付け、直線入り口で並び掛けると直線は2頭の一騎打ち。最後は愛ダービー馬がジヤリードを首差で捻じ伏せた印象です。1番人気に支持されていたトレジャー・ビーチは、もちろんアメリカ・デビュー。2着もフランスのデュプレ厩舎の馬で(ルメール騎乗)、ヨーロッパ勢のワン・ツー・フィニッシュになりました。
調教師エイダン・オブライエンは、2000年にシーロ Ciro で制して以来2度目のセクレタリアート優勝と成ります。騎手はカーム・オダナヒュー。

ビヴァリー・D・ステークス Beverly D. S (芝GⅠ、3歳上牝、9.5ハロン)。この日のメインであるアーリントン・ミリオンの牝馬版。1987年創設、レース名のビヴァリー・ディーとは、アーリントン・パーク競馬場の運営者だったリチャード・ダッチョソワ氏の夫人に由来している由。このレースに勝った馬には、自動的にブリーダーズ・カップ・フィリー・アンド・メア・ターフへの出走権が与えられます。
今年の勝馬はスタチェリータ Stacelita 。11頭立て。ガッチリ手綱を抑えて3番手、直線入り口で最内を衝き、コーナーを利してスルスル先頭、逃げたデュバウィ・ハイツ Dubawi Heights に1馬身4分の1差を付ける快勝で1番人気に応えました。フランスから転籍した同馬、ヨーロッパに加えアメリカでもGⅠ制覇達成です。GⅠは、丁度1年前のジャン・ロマネ賞(ドーヴィル)以来。この勝利で自動的にブリーダーズ・カップ・フィリー&メア・ターフへの出走権を獲得しました。オーナーのマーチン・シュヴァルツ氏にとっては、2005年のアンガラ Angara 、2006年のゴレラ Gorella に続き三度目のビヴァリー・D優勝。スタチェリータは、2009年の仏オークスを含め、これが生涯9勝目に当たります。
調教師はチャド・ブラウン、騎手はラモン・ドミンゲス。

アーリントン・ミリオン Arlington Million (芝GⅠ、3歳上、10ハロン)。1981年に世界初・賞金総額100万ドルのレースとして設立。レース名の「ミリオン」はその記念です。GⅠ格付けは1983年から。このレースの勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・ターフの出走権が与えられます。当然ながらヨーロッパからの参戦も多い一戦。
今年の勝馬はケープ・ブランコ Cape Blanco 。10頭立て。前半は4番手、3~4コーナーの間で外から捲り気味にスパートすると直線で差を広げ、追い込むアメリカの芝チャンピオン馬ジオ・ポンティ Gio Ponti を2馬身半抑えての優勝。ケープ・ブランコはマン・ノウォー・ステークスに続いてアメリカのGⅠ連覇ですが、二度とも2着は同じジオ・ポンティ。この勝利により、ケープ・ブランコも自動的にブリーダーズ・カップ・ターフへの出走権を得たことになります。
調教師エイダン・オブライエンは、セクレタリアートに続きGⅠダブル達成です。騎手ジェイミー・スペンサーは、2004年のミリオンをパワースコート Powerscourt で制しながら進路妨害で失格になったことの雪辱でもありました。

エリス・パーク競馬場のガーデニア・ハンデキャップ Gardenia H (GⅢ、3歳上牝、8ハロン)。1982年にストローズ・ハンデ Stroh’s H として設立。1988年からGⅢに格付けされた一戦。
ところでエリス・パーク競馬場はインディアナ州と境を接しているケンタッキー州ヘンダーソンにある競馬場で、開場は1922年。紆余曲折を経て1954年にエリス・パーク競馬場と改名されて現在に至っています。ここで行われるグレード・レースはガーデニア・ステークスのみ。
今年の勝馬はグルーピー・ドール Groupie Doll 。12頭立て。スタートはやや出遅れましたが、3番手を進み、直線で内枠沿いに抜け出すとシークレット・ファイル Secret File に3馬身差を付けての優勝。2か月前は未勝利だった馬で、出走馬中唯一の3歳馬でした。
調教師はウイリアム・ブラッドレー、騎手はグレタ・クンツヴァイラー。

モンマス・パーク競馬場のモンマス・オークス Monmouth Oaks (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。英国の「オークス」に倣って命名されたアメリカ最古の「オークス」で、創設は1871年。当初はエプサムと同じ1マイル半で行われていたそうです。
今年の勝馬はサヴィー・シュープリーム Savvy Supreme 。11頭立て。これも前半は3番手。3~4コーナーの中間でスパートして早目先頭、馬場の中央を通り、追い込む本命ミス・ヴァレンタイン Miss Valentine に1馬身4分の3差を付けてG戦初勝利を飾りました。2着の騎手(ジョー・ブラーヴォ)からの申し立てで審議になりましたが、入線通り確定しています。3歳になってデビューした馬で、これまで6戦3勝の成績。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はエルヴィス・トラジロー。

サラトガ競馬場のソード・ダンサー・インヴィテーショナル Sword Dancer Invitational (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)。1975年にアケダクト競馬場で創設された時は6ハロンの短距離戦としてでしたが、19801年以降は芝の12ハロン戦で安定しています。当然ながらブリーダーズ・カップ・ターフの重要なトライアルとして位置づけられます。レース名のソード・ダンサーは、1959年のアメリカ年度代表馬。
今年の勝馬はウインチェスター Winchester 。7頭立て。前半は縦長の展開の最後方、徐々に馬群が固まり、直線入り口では4頭の外を回っての差し切り勝ち。2着は4分の3馬身で逃げたラヒーズ・アトーニー Rahy’s Attorney 。ベルモント・ステークス馬ドロッセルマイヤー Drosselmeyer も出走していましたが、ドン尻に敗退しました。ウインチェスターはこれが今シーズンの初勝利でしたが、GⅠ戦は4勝目。ウインチェスターの父シアトリカル Thetrical も1987年のソード・ダンサー勝馬で、父子制覇達成となりました。
調教師はクリストフ・クレメント、騎手はコルネリオ・ヴェラスケス。

デル・マー競馬場のラ・ホーヤ・ハンデキャップ La Jolla H (芝GⅡ、3歳、8.5ハロン)。1937年創設。レース名のラ・ホーヤは、カリフォルニア州にある街の名前。地名シリーズの一つです。
今年の勝馬はバーンズ Burns 。6頭立て。内々の4番手を進み、混戦の直線を最内から抜けてリル・ビット・オファン Lil Bit O’Fun の追込みを首差凌いでの優勝。ステークスは初勝利となります。
調教師バリー・エイブラムスは喉頭癌の手術から復帰したばかり、特別に感慨深い勝利となりました。騎手はパトリック・ヴァレンズエラ。

≪8月14日≫

サラトガ競馬場のアディロンダック・ステークス Adirondack S (GⅡ、2歳牝、6.5ハロン)。1901年創設の歴史ある2歳戦。当初は牡牝混合戦でしたが、1930年以降は牝馬限定に変更されました。レース名は、ニューヨーク州北東部に位置するアディロンダック山脈から採られたもの。
今年の勝馬はマイ・ミス・オーレリア My Miss Aurelia 。5頭立て。スタート・ダッシュは一番。一旦は2番手に下げながら、直線は外から追い上げたミリオンリーズンズホワイ Millionreasonswhy とのマッチレースに。結局は首差差し勝ち、2頭が3着以下を15馬身近く離していました。勝馬の馬名は、オーナーの母親から採った由。これで2戦2勝、パーフェクトなキャリアをスタートさせました。次走は9月4日のスピナウェイ・ステークスになる予定です。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手はジュリアン・ルパルー。

デル・マー競馬場のジョン・C・マビー・ステークス John C. Mabee S (芝GⅡ、3歳上牝、9ハロン)。1945年にラモナ・ハンデ Ramona H として創設されましたが、その後長い休止を経て1959年に復活。2002年に三度も最優秀生産者に選ばれたジョン・C.マビー (1921-2002) 氏を記念して改名されて現在に至っています。以前はGⅠ格でしたが、去年からGⅡに降格。このレースの勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・フィリー・アンド・メア・ターフの出走権が与えられます。
今年の勝馬はコージー・ロージー Cozi Rosie 。7頭立て。前半は前の4頭からやや離された5番手。コーナーワークを巧く利用して、直線では最内からスルスルと先頭。そのままマリブー・ピエ Malibu Pier の追込みを半馬身抑えての優勝。G戦は3勝目となります。このところ人気になって勝てなかった同馬、初めて着用したブリンカーが功を奏したようです。
調教師はジョン・サドラー、騎手はギャレット・ゴメス。このコンビは、このレースがGⅠだった最後の年(2008年)にブラック・マンバ Black Mamba で勝ったチームでもあります。

≪8月15日≫

サラトガ競馬場のサラトガ・スペシャル・ステークス Saratoga Special S (GⅡ、2歳、6.5ハロン)。13日に行われたアディロンダック・ステークスと同様に1901年に創設されたアメリカでも最も伝統ある2歳戦。こちらは牡馬が活躍する舞台で、サンフォード・ステークス、ホープフル・ステークスとでサラトガ2歳三冠を構成する一戦。
今年の勝馬はユニオン・ラグス Union Rags 。6頭立て。雨の泥んこ馬場。スタートから4頭が激しくハナを争い、バテた馬から順次脱落する展開。最後はスタット Stat を振り切って7馬身4分の1の大差を付けましたが、内ラチから馬場の中央に向けて大きく寄れる場面もあって、馬の若さがモロに出たレース内容でした。
調教師はマイケル・マッツ、騎手はハヴィエル・カステラノ。

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