アラバマ・ステークス、イッツ・トリッキー三冠ならず

先週末に行われたアメリカ競馬のレポートです。バタバタしていて通常のタイミングでアップできなかったもの。二日間のレースを纏めて紹介します。

≪8月20日≫

デラウエア・パーク競馬場のエンジン・ステークス Endine S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)。1971年創設。レース名のエンジンは、デラウエア・ハンデを2連覇(1958年と1959年)した名牝の名前から。
今年の勝馬はイヴ・ジゼル Eve Giselle 。8頭立て。積極的に先行、直線入り口でサッシー・シティー Sassy City に並ばれたものの、ゴール前では再び突き放して1馬身差の優勝、圧倒的1番人気に応えました。デラウエア競馬場では3戦無敗で、G戦は初勝利。
調教師はティモシー・リッチー、騎手はハヴィエル・サンチャゴ。

モンマス・パーク競馬場のフィリップ・H・イズリン・ステークス Philip H. Islin S (GⅢ、3歳上、9ハロン)。1884年にモンマス・ハンデキャップとして創設、その後ニュージャージー州では競馬そのものが禁止になって中断していましたが、1946年に復活、1966年まではモンマス・ハンデとして行われてきました。1967年から1980年まではエーモリー・L・ハスケル・ハンデ Amory L. Haskell H と改名、再度モンマス・ハンデに戻った後、1986年に現在のレース名に変わったという複雑な歴史を辿った一戦です。現在のレース名はモンマス・パーク競馬場の取締役を務めたイズリン氏に因んだもの。
今年の勝馬はホエアズ・スターリング Where’s Sterling 。8頭立て。前半は中団、4コーナー手前から追い上げ、先に先頭に立ったサザン・リッジ Southern Ridge を直線で1馬身抜き去りました。この馬もステークスは初勝利。
調教師はニック・カナーニ、騎手はパコ・ロペス。

サラトガ競馬場のアラバマ・ステークス Alabama S (GⅠ、3歳牝、10ハロン)。1872年創設、現在ではエイコーン・ステークス、コーチング・クラブ・アメリカン・オークスに続いてニューヨーク牝馬三冠の最後に位置するもの。
今年はイッツ・トリッキーの三冠に期待が掛かっていました。しかし勝馬はロイヤル・デルタ Royal Delta 。6頭立て。3番手でオークス馬イッツ・トリッキー It’s Tricky をマーク、直線手前では引き離されたかに見えましたが、直線では鋭く伸びてイッツ・トリッキーに5馬身半差を付ける完勝。コーチング・クラブ・アメリカン・オークスの雪辱を果たしました。イッツ・トリッキーの三冠成らず。ロイヤル・デルタはGⅠレース初勝利。ケンタッキー・オークス馬プラム・プリティー Plum Pretty が逃げましたが、4着に沈んでいます。これで3才牝馬チャンピオン戦線は益々混戦の感が深くなってきましたね。
調教師はウイリアム・モット、騎手はホセ・レズカノ。

デル・マー競馬場のデル・マー・オークス Del Mar Oaks (芝GⅠ、3歳牝、9ハロン)。1957年にダートコースの1マイル戦として創設。1965年から芝コースに変わり、GⅠに格付けされたのは1994年から。サラトガのアラバマ・ステークスがダートの東海岸・3歳女王決定戦なら、こちらは芝の西海岸・女王決定戦。
今年の勝馬はサマー・ソワレー Summer Soiree 。10頭立て。スタート良く先手を取りましたが、外から来た馬にハナを譲って2番手。しかし向正面で一気にスパート、他馬との差を大きく広げて逃げ切り体勢に。最後は流石にバテて後続馬に追い詰められましたが、スター・ビリング Star Billing を辛うじて半馬身抑えて優勝。ケンタッキー・オークスに挑戦して10着に敗れ、以後は芝コースに転向していた牝馬。ハリウッドのアメリカン・オークス(芝の一戦)組が多数出走していましたが、それらを破ってのGⅠ制覇です。
調教師はグレアム・モーション、騎手ガブリエル・サエズは、デル・マー競馬場は初騎乗でした。

≪8月21日≫

サラトガ競馬場のレイク・プラシッド・ステークス Lake Placid S (芝GⅡ、3歳牝、9ハロン)。1984年にニジャーナ・ハンデ Nijana H として創設されたもの。1998年に現在のレース名に変更されました。レイク・プラシッドはニューヨーク州の地名で、100年ほど前には家政学に関する会議が行われていたことでも知られる街。地名シリーズの一つ。
今年の勝馬はハングリー・アイランド Hungry Island 。7頭立て。最後方から2つ目で待機。スリリングな直線を外から追い込み、早目に先頭に立ったカスマンブルー Kathmanblu を2馬身半差し切って鮮やかな勝利。4連勝でG戦デビューを飾りました。
調教師はクロード・マゴーヒー3世、騎手はアレックス・ソリス。

エメラルド・ダウンズ競馬場のロングエイカー・マイル・ハンデキャップ Longacre Mile H (GⅢ、3歳上、8ハロン)。このレースが行われるエメラルド・ダウンズ競馬場 Emerald Downs は、1996年6月にオープンした未だ新しいワシントン州の競馬場。ワシントン州にはロングエイカー競馬場 Longacre がありましたが、1992年に60年の歴史に幕を下ろして閉鎖、その代替コースとして新設されたのがこのコースです。ロングエーカー・マイルは、1935年にロングエーカー競馬場の名物レースとして創設されたもの。同競馬場の閉鎖後は3年間、同じワシントン州にあるヤキマ・メドウズ競馬場 Yakima Meadows で行われ、1996年以降現在のエメラルド・ダウンズに移管されたレースです。2008年からはブリーダーズ・カップ・シリーズの一戦に指定され、このレースの勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・ダート・マイルへの出走権が与えられます。
今年の勝馬はオウサム・ジェム Awesome Gem 。11頭立て。前半5番手から4コーナー手前で外を回って追い上げ、逃げた地元のスターホースで去年の勝馬ヌーサ・ビーチ Noosa Beach を1馬身半差し切って優勝。去年のハリウッド・ゴールド・カップを制したオウサム・ジェムは、ワシントンで走った最も賞金を稼いだ馬だったそうです。これで46戦9勝の8歳せん馬。
調教師はクレイグ・ドレーズ、騎手はデヴィッド・ロメロ・フローレス。

デル・マー競馬場のランチョ・ベルナルド・ハンデキャップ Rancho Bernardo H (GⅢ、3歳上牝、6.5ハロン)。1967年創設、以来距離が様々に変更されてきました。1マイルだった時期もありますが、2008年からはブリーダーズ・カップの指定レースとなり、勝馬には自動的にブリーダーズ・カップ・フィリー&メア・スプリントへの出走権が与えられます。レース名のランチョ・ベルナルドは、カリフォルニア州サンディエゴにある街の名。これも地名シリーズです。
今年の勝馬はタンダ Tanda 。4頭立て。3頭が雁行してシーズ・チーキー She’s Cheeky 1頭がポツンと置かれた最後方という展開。3番手に位置した1番人気のタンダが抜け出し、最後で追い込んだシーズ・チーキーに1馬身4分の1差で危なげ無い優勝。去年の5月以来、1年3ヶ月ぶりの勝利でした。Gレースは前の厩舎(ダン・ヘンドリックス)時代の2戦を含めて3勝目。当然ながら出走権を得たブリーダーズ・カップを目標にしてくるでしょう。
調教師はマイク・ミッチェル、同厩舎に移籍して最初のレースです。騎手はジョセフ・タラモ。

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