今期の最高レース、メトロポリタン・ハンデ
昨日のアメリカはメモリアル・デイの休日、5つの競馬場でG戦が行われ、GⅠも全部で4レースという競馬ホリデー状態になっていました。余りにも盛り沢山なので、粗雑は覚悟の全米競馬ツアーにご案内しましょう。
先ずはハイライトとも言えるニューヨーク州ベルモント・パーク競馬場から。GⅠ3鞍を含むグレード・レース4連発です。レース順に。
サンズ・ポイント・ステークス Sands Point S (芝GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。内コースの芝は firm 、8頭が出走してきました。去年のBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフで6着、前走今期初戦のジェサミン・ステークス(芝GⅢ)でトップハンデを背負って2着していたソマリ・レモネード Somali Lemonade が4対5の1番人気に支持されていました。
レースはプリーチ・トーム・ダディー Preach Tome Daddy が逃げ、2番手を進んだズルタナイト Zultanite と先行2頭をマークして進んだ4番人気(8対1)のベター・ラッキー Better Lucky が抜け出して一騎打ちかと思われましたが、後方から2番人気(7対2)のレガロ・ミア Regalo Mia が急襲、3頭が並んだところがゴール。写真判定の結果、中央を通ったベター・ラッキーが外から追い込むレガロ・ミアをハナ差抑えていました。内コースを粘ったズルタナイトが首差3着。スタートでやや出遅れた本命ソマリ・レモネードも最後で追い上げましたが、3着から5馬身遅れの4着に終わっています。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、エディー・カストロ騎乗のベター・ラッキーは、これが芝コースもG戦もデビュー。通算成績を5戦3勝としました。
GⅠ3連発の第一弾は、オグデン・フィップス・ハンデキャップ Ogden Phipps H (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。メインのダート・コース、馬場状態は fast 。僅か5頭立てですが、結果はスリリングでした。1番人気(3対4)はここ2シーズンで6連勝中のオウサム・マリア Awesome Maria 、去年のオグデン・フィップスも含めて全く同じローテーションを歩んでの2連覇を目指します。
レースは3番人気(6対1)の新星キャッシュ・フォー・クランカース Cash for Clunkers が逃げ、スタートが余り良くなかったオウサム・マリアは4番手を進む流れ。直線、2番手を進んだ2番人気(2対1)のイッツ・トリッキー It’s Tricky が逃げ馬を捉えにかかりますが、キャッシュ・フォー・クランカースは尾を振りながらも中々バテません。それでも漸くイッツ・トリッキーが4分の3馬身交わした所がゴール。本命オウサム・マリアも懸命に差を詰めましたが、結局は1馬身半及ばず3着、連勝は6で止まりました。
キアラン・マクローリン厩舎所属のイッツ・トリッキーは、ゴドルフィンの所有馬。これでここ12戦して連を外したのは1回だけという堅実ぶりで、G戦はトップ・フライト・ハンデ(GⅡ)、ディスタッフ・ハンデ(GⅡ)(いずれもアケダクト競馬場)に続く3連勝。去年の同日にはエイコーン・ステークス、続いてCCAオークスとGⅠ戦2連勝、BCレディーズ・クラシックでも2着(勝ったのはスーパースター、ロイヤル・デルタ Royal Delta)した実力の持ち主ですから、勝たれて見れば当然と言えるでしょうか。鞍上エディー・カストロは、サンズ・ポイント・ステークスに続いてG戦ダブル達成。
続くのはエイコーン・ステークス Acorn S (GⅠ、3歳牝、8ハロン)。出走馬は6頭、ケンタッキー・オークスで2番人気に支持され5着に敗れたオン・ファイア・ベビー On Fire Baby が出走してきましたが、5対2の2番人気。これを抑えてイーヴンの1番人気に支持されたのは、デビューから3戦無敗の新星コンテスティッド Contested でした。
そしてレースも圧巻、1番枠からダッシュ良く飛び出したコンテスティッドは、そのまま他馬を寄せ付けず2着ゾー・インプレッシヴ Zo Impressive に5馬身差を付ける圧勝劇、無傷の4連勝を飾りました。3着は1馬身4分の1差でオービー・ケー Aubby K 、オン・ファイア・ベビーは本命馬をマークして進むも4着に後退してしまいました。
ボブ・バファート師が自らのジル夫人のために調教しているコンテスティッドは、前走エイト・ベルズ・ステークス(GⅢ、チャーチル・ダウンズ)に続くG戦連勝、GⅠはもちろん初制覇です。ここまでの4戦で2着以下に付けた着差は合計で22馬身。鞍上ハヴィエル・カステラノは、同馬に初騎乗でした。
そして本日のメイン、メトロポリタン・ハンデキャップ Metropolitan H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。ここも出走頭数は6頭とコンパクトながら、GⅠ馬4頭が揃う豪華版。8対5の1番人気に支持されたのは、シガー・マイルの覇者トゥー・オナー・アンド・サーヴ To Honor and Serve でした。続いてはBCダート・マイルに勝ったケーレブズ・ポッセー Caleb’s Posse が9対5の2番人気、プリークネス・ステークス馬シャックルフォード Shacleford は3対1の3番人気、フォアゴ、カーターとGⅠ2勝のジャクソン・ベンド Jackson Bend が4番人気(6対1)で続きます。
レースもスリリング。逃げたシャックルフォードがスピードに物を言わせて逃げ切りを図るところに、直線入口では10馬身離されていたケーレブズ・ポッセーが豪快な末脚で追い詰め、ほとんど2頭が並んだところがゴール。写真判定の結果、シャックルフォードがハナ差でケーレブズ・ポッセーを抑えていました。3着は3馬身差で本命トゥー・オナー・アンド・サーヴ、更に5馬身でカイシャ・エレクトロニカ Caixa Electronica が4着に入りました。ジャクソン・ベンドは5着。ゴール前の激戦は、先日の東京優駿のゴール前を連想させるドラマティックな死闘でしたね。このレースは「今年の Race of the Year」だ、という評価も挙がっているほど。
デール・ロマンス厩舎のシャックルフォード、今期はチャーチル・ダウンズ・ハンデ(GⅡ)に続くG戦2連勝です。今回はジョン・ヴェラスケスが同馬に初騎乗していました。死闘を演じたライヴァル、シャックルフォードとケーレブズ・ポッセーの対決は、今回が4回目で成績は2対2。去年のBCダート・マイルではケーブルズ・ポッセーがシャックルフォード(2着)に4馬身差を付けていました。メトロポリタン・ハンデは今期最初のBCシリーズ指定競走、勝馬には今年のBC(サンタ・アニタ競馬場)への優先出走権が与えられます。
ロマンス師は、今期のシャックルフォードの目標をメトロポリタンに掲げてきましたから、見事に目的を達したことになります。当然ながら、秋の目標はBCでの雪辱。今後も2頭のライヴァルには大注目ですな。
あとは駆け足で行きましょう。結果が入った順に、先ずはゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場からバークレー・ハンディキャップ Berkeley H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。こちらも馬場は fast 、8頭立てでしたが結果は波乱です。
直線の攻防、ポジティヴ・レスポンス Positive Response が半馬身抜け出して先頭でゴールしましたが、直ぐに審議のアナウンス。勝馬が4着で入線したアンソニーズ・クロス Anthony’s Cross の進路に数度に亘って侵入するパトロール・フィルムが映し出されました。結果、ポジティヴ・レスポンスはアンソニーズ・クロスの次、4着に降着。1着から3着まではオウサム・ジェム Awesome Gem 、ハドソン・ランディング Hudson Landing 、アンソニーズ・クロスが夫々繰上りとなりました。着差は半馬身、首、半馬身と発表されています。
今年9歳になるオウサム・ジェムは、これが節目となる50戦目。漁夫の利を得た感のある調教師はクレイグ・ドラーズ、勝利騎手はアーロン・グライダーでした。テレビ中継では、不利を被ったカーウィン・ジョン騎手と、1着入線のジュリアン・クートン騎手が次々に電話に呼ばれて対応する様子が映されています。日本のように検量室で裁決委員と直接会話するのではなく、コースに置かれた電話で対処するのが興味ある所。記念撮影中のポジティヴ・プロスペクト陣営が、場内アナウンスにガッカリして解散する様子もオン・エアされていました。アメリカ競馬に興味ある方には必見の映像です。
続いてはローン・スター・パーク競馬場のローン・スター・パーク・ハンデキャップ Lone Star Park H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。馬場は fast 、8頭が出走してきました。
レースは差の無い2番人気(8対5)に支持されたネイツ・マインシャフト Nates Mineshaft の独り舞台、スタートからフィニッシュまで先頭を譲らず、圧巻の逃げ切り勝ちでした。2着ゲット・イン・ダ・ハウス Get in Da House との着差は7馬身4分の1.更に半馬身差3着にはナイト・パーティー Night Party が入っています。1番人気(同じく8対5)のマリリンズ・ガイ Marilyn’s Guy は4着敗退。
オースチン・スミスが調教するネイツ・マインシャフトは、今期マインシャフト・ハンデ(GⅢ)とニュー・オーリーンズ・ハンデ(GⅡ)に連勝、前走アリシェバ・ステークス(GⅡ)は6着に終わっていました。鞍上はジェス・キャンベル騎手。
モンマス・パーク競馬場からは、ヴァイオレット・ステークス Violet S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)の結果が入ってきました。
馬場状態は firm 、1頭取り消して7頭立て。昨夏のモンマス・パークでマッチメーカー・ステークス(芝GⅢ)なとステークスに2勝したロマカカ Romacaca が7対5の1番人気に支持されています。
レースはロマカカが逃げましたが、前半は後方2番手を進んだ5番人気(10対1)のルシーニア Ruthenia の末脚が爆発、2着ピンチ・パイ Pinch Pie と3着アンブライドルド・ヒューモア Unbridled Humor の接戦を1馬身差し切っての快勝。2・3着はハナ差、本命ロマカカは4着に終わりました。
ルシーニアはクリストフ・クレメント厩舎、ケンドリック・カームーシュ騎乗の4歳馬で、ここまでの10戦はいずれも芝コース。一昨年10月にベルモント競馬場で一般ステークスに勝って以来2つ目のステークス優勝、G戦は初制覇となります。
最後にハリウッド・パーク競馬場から2鞍。本日の締め括りもGⅠ戦となります。その前にロサンジェルス・ハンデキャップ Los Angeles H (GⅢ、3歳上、6ハロン)。オール・ウェザー・コースの馬場は fast 、1頭取り消して7頭立て。
レースは何とも味の無い一戦になってしまいました。4対5の断然1番人気に支持されたローマン・スレット Roman Threat が危なげない逃げ切り勝ち。1馬身4分の1差2着も、2番手を進んだセントラルインテリジェンス Centralinteligence がそのまま流れ込み、行った行ったの競馬。3着は更に1馬身半差で去年のこのレースに勝った(勝馬が降着となり繰り上がったもの)キャンプ・ヴィクトリー Camp Victory の順。
勝馬はボブ・バファート師の管理馬、ラファエル・ベハラノが騎乗していました。
愈々最後はゲイムリー・ステークス Gamely S (芝GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。こちらは芝コース、firm の馬場に8頭が出走してきました。去年のアメリカン・オークス(芝GⅠ)で1着同着となった2頭、ネレイド Nereid とキャンビーナ Cambina が共に出走してきましたが、1番人気(2対1)はネレイドの方。出走馬中GⅠ馬はこの2頭だけです。
レースはクワイエット・オアシス Quiet Oasis が逃げ、ゴール寸前では逃げ切り目前でしたが、前半は後ろから2番手で待機し、直線一気の鋭い脚を使った2番人気(同じく2対1)のベル・ロイヤル Belle Royale があっという間に前を捉えて半馬身差抜けていました。粘ったクワイエット・オアシスが2着、同じく半馬身差でキャピタル・プラン Capital Plan が3着。ネレイドは6着に終わっています。
サイモン・キャラガンが調教、ジョエル・ロザリオが騎乗したベル・ロイヤルは、ヨーロッパではお馴染みのクールモアの勝負服、マイケル・テイバー氏の持ち馬で、イギリスのハンデ戦3連勝(英国ではマーク・ブリスボーン厩舎)を含めて5連勝。G戦は初勝利ながら、さすがヨーロッパ育ちの末脚は圧巻でした。アメリカに転じてからは4月に一般ステークスに優勝、芝コースの注目株になる予感がします。
まとめtyaiました【今期の最高レース、メトロポリタン・ハンデ】
昨日のアメリカはメモリアル・デイの休日、5つの競馬場でG戦が行われ、GⅠも全部で4レースという競馬ホリデー状態になっていました。余りにも盛り沢山なので、粗雑は覚悟の全米…