シャドウェル・スタッドにまたもダービー候補
3月第1週のアメリカ競馬は3州で合計5鞍のG戦、ダービー・オークスまで残り2か月となりました。
先ずニューヨーク州のアケダクト競馬場。ニューヨークで本格的な競馬シーズンに入るのは4月からですが、昨日はクラシック・トライアルの一つであるガッサム・ステークス Gotham S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)が行われています。ダービー・ポイント対象レースで、1着から4着馬までには夫々50-20-10-5ポイントが加算されます。fast の馬場に1頭が取り消して7頭立て、2戦2勝のシャガーフ Shagaf が6対5の1番人気。
スタートでそのシャガーフが先ず飛び出しましたが、1枠発走の6番人気(15対1)ラオベン Laoban がハナを主張しての逃げ。シャガーフは向正面では4番手まで下げます。ラオベン先頭のまま直線に向きましたが、漸くエンジンが掛かったシャガーフが外から追い上げ、最後はラオベンを1馬身4分の1差突き放して人気に応えました。5番手を進んだジョイント3番人気(9対2)のアドヴェンティスト Adventist が追い込んで4分の3馬身差の3着。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のシャガーフはこれで3戦3勝。去年11月にアケダクトで新馬勝ちし、今年1月にガルフストリームのアローワンス戦と連勝、今回がステークス初挑戦でもちろんG戦初勝利となります。先週ファウンテン・オブ・ユース・ステークス(GⅡ)を制したモヘイメン Mohaymen と同じシェイク・ハムダン総裁のシャドウェル・スタッドの所有馬で、新たなダービー候補誕生となりました。50ポイントを獲得し、次なる目標は来月のウッド・メモリアル・ステークス(GⅠ)。シャドウェルの二枚看板となるか。
先週はクラシック・トライアルに沸いたガルフストリーム・パーク競馬場、今週は古馬によるG戦が3鞍組まれています。最初に行われたザ・ヴェリー・ワン・ステークス The Very One S (芝GⅢ、4歳上牝、9.5ハロン)は、去年は2月最終週に行われていましたが、今年は距離がこれまでの11ハロンから一気に短縮されました。firm の馬場に6頭が参戦しましたが、半分はチャド・ブラウン厩舎が送り出す牝馬たち。その中から去年チリでGⅠに3勝し、既にアメリカでもボールストン・スパ・ステークス(芝GⅡ)に勝っているダシータ Dacita が3対5の1番人気。
レースは、意外にもチーム・ブラウンの一角で2番人気(7対2)のオロルダ Olorda の逃げで始まります。人気のダシータは4番手から進めましたが、オロルダの単騎逃げに積極的に競り掛ける馬も無く、結局はオロルダが本命馬の追い上げを首差凌いでの逃げ切り勝ち。後方2番手から内を衝いて伸びた4番人気(7対1)のグァパザ Guapaza (この馬もチリ産馬)が4分の3差で3着に入り、何のことはないブラウン厩舎のワン・ツー・スリーで決着しています。
ジュリアン・ルパルーが騎乗したオロルダはドイツ産の4歳馬で、去年はフランスでヴァントー賞(GⅢ)に優勝、その時はクリスチャン・デムーロが騎乗していました。昨夏アメリカに転厩して3戦、ベルモント・オークス(芝GⅠ)が11着、クイーン・エリザベスⅡ世チャレンジ・カップ(芝GⅠ)で4着、メイトリアーク・ステークス(芝GⅠ)も12着と追い込んで結果を出せずに来ましたが、今回は思い切った先行策で、4戦目にしてアメリカ初勝利となりました。
続くメイン・コースのガルフストリーム・パーク・ハンデキャップ Gulfstream Park H (GⅡ、4歳上、8ハロン)は、fast の馬場に7頭立て。今期ドン・ハンデ(GⅠ)でも2着している6歳のヴェテランせん馬ヴァリッド Valid が6対5の1番人気。
レースは4頭出しチーム・プレッチャーの最人気薄で5番人気(17対1)のアンカー・ダウン Anchor Down が引っ張って直線。前半4番手追走から思い切って内ラチ沿いを衝いた4番人気(9対1)のブロフェルド Blofeld が、2番手追走から一旦先頭に立った3番人気(5対2)のスタンフォード Stanford をゴール直前で頭差捉える逆転劇。何れにしてもトッド・プレッチャー厩舎のワン・ツー・フィニッシュとなりました。本命ヴァリッドは3番手から馬場の中央を通って追い込みましたが、勝負所でアンカー・ダウンが外に膨れた煽りを受けて躓き、あわや落馬。何とか立て直して4番手で入線しましたが、1馬身4分の1差3着で入線したアンカー・ダウンが4着降着となり、繰り上がっての3着となっています。幸い馬には怪我は無かった模様。
ジョン・ヴェラスケスが騎乗したブロフェルドは2歳時にフューチュリティー・ステークス(GⅡ)とナシュア・ステークス(GⅡ)を含めて3連勝したかつてのクラシック候補。3歳の去年は負傷のため僅か2戦のみで、今年1月にガルフストリームのアローワンス戦4着で復帰を果たしたばかりでした。人気が無かったのはそのためですが、本来の実力からここは勝たれても当然と言えるでしょう。
ガルフの最後は芝のマック・ダイアルミダ・ステークス Mac Diarmida S (芝GⅡ、4歳上、11ハロン)。去年は2月最終週に行われていたもので、ザ・ヴェリー・ワンと対照になる一戦。7頭が出走し、前走去年11月のレッド・スミス・ハンデ(芝GⅢ)を含めて3連勝中のミスター・メイビー Mr Maybe が9対5の1番人気。
最低人気(50対1)のオープラード・オーレー O’Prado Ole が逃げましたが、ピタリと2番手を追走した5番人気(9対1)のグランド・ティート Grand Tito が第4コーナーで外から逃げ馬を捉えると、5番手から迫る4番人気(6対1)カイグン Kaigun に1馬身4分の1差を付ける快勝。人気のミスター・メイビーも最後方から良く伸びましたが、3馬身離されての3着に終わっています。一昨年のこのレースの勝馬で3番人気(3対1)に支持されたトゥワイライト・エクリプス Twilight Eclipse は、後方2番手を進むも最下位敗退。
グスターヴ・デルガド厩舎、エミサエル・ジャラミロ騎乗の6歳牡馬グランド・ティートは、一昨年のマイアミ・マイル(芝GⅢ)以来久し振りとなるG戦2勝目。今期は2月13日にガルフストリームでシーズン・デビュー勝ちを飾っており、2連勝となります。
最後はサンタ・アニタ競馬場からサンタ・イザベル・ステークス Santa Ysabel S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場で1頭が取り消して9頭立て。チャンピオンのソングバード Songbird がクラシックへの足慣らし2戦目とあって、負けは有り得ないという1対9の断トツ本命。
前半はやや他馬に絡まれたものの全く問題にせず先頭に立ったソングバード、後続を離したまま、鞍上も抑えたままで直線に向かうと、6番手から懸命に追い縋る2番人気(13対1!!)のランド・オーヴァー・シー Land Over Sea に3馬身4分の3差を付けるキャンターでの大楽勝でした。更に3馬身半差で後方3番手を進んだ6番人気(40対1)のモーカット Mokat が3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のソングバードに付いては改めて追加することも無いでしょう。今回の2着との着差は、ここまで6戦無敗の中では最も小さかったのは事実ですが、ここはGⅢ戦でしかないステップ・レース。サンタ・アニタ・オークスからケンタッキー・オークスという本番を控え、文字通りの足慣らしに過ぎませんでした。
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