2強のフィリーズ・マイル
ニューマーケット競馬場の旧オクトーバー・ミーティング、今年から1週早まって事実上セプテンバー・ミーティングになりましたが、昨日は中日を迎えました。パターン・レースは3鞍、馬場状態はこの時期には珍しく good to firm の硬い馬場です。
最初はオー・ソー・シャープ・ステークス Oh So Sharp S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)。以前のオクトーバー・ミーティングでも二日目に組まれていた一戦。
1頭取り消して10頭立て。事前の予想では前走プレスティージ・ステークス(グッドウッドのGⅢ)で2・3着したゴドルフィンのラカーサ Rakasa とゴスデン厩舎のクエスティング Questing の争いになると見られていましたが、レース当日の朝になってヤーマス競馬場の新馬戦に勝ったばかりのアルシンディ Alsindi の人気が急上昇。結局アルシンディとクエスティングが5対1で1番人気に並びました。ラカーサは6対1の3番人気。
レースは人気の一角クエスティングの逃げ。アルシンディは後方に待機します。一方、ラカーサはスタートから異変。鞍上のデットーリ騎手が頻りに馬の後肢を気にしている様子、最後方ながら何度も後ろを振り返ります。結局ラカーサは途中で競走を中止、どうやら故障を発症したようです。
クエスティングが2番手を追走するナヤーラ Nayarra を漸く振り切った時、後方からアルシンディの末脚が爆発、首差クエスティングを捉えたところがゴール。ナヤーラが粘って半馬身差3着で続きました。終わって見れば1番人気2頭のワン・ツー・フィニッシュでした。
アルシンディはクライヴ・ブリテン厩舎、トム・クィーリー騎乗。クィーリーはブリテン師から“末脚が切れる馬なので、それを活かすように” と指示を受けていた由。師の不安は、前走(ヤーマス)が重馬場だったのでニューマーケットの速い馬場に対応できるがだったそうな。
ここを鮮やかにクリアーし、ブリテン調教師は同馬がGⅠクラスであることを確信したようです。来週のマルセル・ブーサック賞にも登録があるそうですが、敢えて渡仏に踏み切るでしょうか。翌春の1000ギニーには25対1のオッズが出されました。
続いてはジョエル・ステークス Joel S (GⅡ、3歳上、1マイル)。これもオクトーバー・ミーティングの二日目に組まれていたG戦です。
7頭が出走。実力伯仲と見られていた中、5対2の1番人気には、前走ストレンソール・ステークス(GⅢ)2着の成長株で3歳のタザハム Tazahum が選ばれていました。
しかし結果は、4対1の2番人気に支持されたランソム・ノート Ransom Note の逃げ切り勝ち。2馬身4分の1差でプレミオ・ロコ Premio Loco が2着、更に1馬身差で3番人気(5対1)のポエツ・ヴォイス Poet’s Voice の順。本命タザハムは最後の伸びを欠き、4着と期待を裏切りました。
ランソム・ノートはチャールズ・ヒルズ厩舎、マイケル・ヒルズ騎乗。今シーズンは同じニューマーケットでアール・オブ・セフトン・ステークス(GⅢ)に勝って好スタートを切りましたが、その後アスコットのクイーン・アン(GⅠ)5着、前走ドーヴィル(ゴントー=ビロン賞、GⅢ)も5着とスランプに入った感があった馬。重い馬場(ドーヴィル)が苦手なタイプだけに、この日の硬目の馬場で復活したと言えましょうか。
最後はフィリーズ・マイル Fillie’s Mile (GⅠ、2歳牝、1マイル)。去年まではアスコット競馬場のセプテンバー・ミーティングで行われてきましたが、昨日の日記に紹介したような事情で今年からニューマーケットに移行された一戦です。但し時期的には前年までと変りがありません。
今年は1頭取り消して8頭立て。先にドンカスター競馬場で行われたメイ・ヒル・ステークス(GⅡ)の上位組(1・2・3・5着)が揃って出走してきたこともあり、人気もメイ・ヒル組に集まっていました。
2対1の1番人気は同レースの勝馬リリック・オブ・ライト Lyric Of Light 、同2着フォールン・フォー・ユー Fallen For You が3対1の2番人気、3着のサミター Samitar が17対2の4番人気で続きます。ソールズベリの新馬戦を楽勝したファードウス Firdaws も評判が高く、フォールン・フォー・ユーと並んで3番人気。
レースはサミターが快調に飛ばします。前半は最後方に控えていた本命リリック・オブ・ライトは、最後の1ハロンで鞍上ランフランコ・デットーリが追い出してからの切れ足は抜群。一気にサミターとの差を詰め、最後は譲らぬサミターと首の上げ下げでゴールイン。写真判定の結果、リリック・オブ・ライトがサミターを頭差捉えていました。
4馬身半差3着に2番人気の一角ファードウス、フォールン・フォー・ユーは好位追走も最後は伸びず5着敗退に終わりました。結果は、メイ・ヒルの1・3着馬の一騎打ちという形。
リリック・オブ・ライトはゴドルフィンの馬、マームド・アル・ザルーニ師が管理するクラシック候補。騎乗したデットーリによれば、坂の下りでバランスを崩したとのこと。それでも瞬発力は第一級のもの、最後の50ヤードでサミターを捉えた根性は明らかにGⅠクラスの能力でしょう。
一方2着サミターを管理するミック・シャノン師も勝った、と思ったほどの大接戦。最後の粘り腰に同馬の実力が良く出ていて、この結果は2強対決を強く印象付けました。
フィリーズ・マイルは、アスコット時代から1000ギニーに最も直結する2歳戦。今年からクラシックと同じニューマーケットのロウリー・マイルで行われることになり、一層トライアルとしての重みが増してくることと思われます。
1000ギニーのオッズは、この結果を受け、勝ったリリック・オブ・ライトが10対1、サミターが16対1。
金曜日は、フランスのメゾン=ラフィット競馬場でもパターン・レースが行われました。クープ・ド・メゾン=ラフィット La Coup de Maisons=Laffitte (GⅢ、3歳上、2000メートル)。馬場状態は good 。
9頭立て、5対2の1番人気はエージェント・シークレット Agent Secret でしたが、勝ったのは14対5のワン・クレヴァー・キャット One Clever Cat 。1馬身半差で本命シークレット・エージェントが続き、短首差3着にキア・ワン Kya One (読み方が良く判りませんが・・・)。
G戦の常連ワン・クール・キャットは、トニー・クルー厩舎、クリストフ・スミオン騎乗。ペースメーカーを務めるシャマーダンス Shamardanse の5番手に付け、ゴール前150ヤードで先頭に立つ楽勝。直線の長いメゾン=ラフィットが合っているようです。前回の勝利もこの競馬場でしたっけ。
陣営によれば、次走は来週、凱旋門祭りの一環で行われるダニエル・ウイルデンシュタイン賞(GⅡ)の由。
ところで勝ったワン・クレヴァー・キャット、3着に入ったキア・ワンは、共にワン・クール・キャット One Cool Cat 産駒であることにも注目。父はノーザン・ダンサー系のストーム・キャット、母の父はミスター・プロスペクターという最新流行の血脈、クールモアで供用されている種牡馬ですね。
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