アスコットのセプテンバー・ミーティング

この週末は、アスコット競馬場のセプテンバー・ミーティングで賑わいましょう。
初日の金曜日にはパターン競走がありませんが、昨日の土曜日はGⅠ戦の2連発がありました。

しかし最初はこのレースから。

ロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ、2歳、1マイル)は11頭が出走、並んで7対2の1番人気に支持された2頭がいずれも凡走する波乱となりました。
即ちゴスデン厩舎のハイ・トゥエルヴ High Twelve が4着、ゴドルフィンのフローズン・パワー Frozen Power は7着。

12対1の中穴を開けたのは、エイダン・オブライエン師がアイルランドから送り込んだジョシュア・トゥリー Joshua Tree 。2着に1馬身4分の1でウォシート Waseet が入り、頭差3着にヴェイル・オブ・ヨーク Vale Of York の順。

オブライエン厩舎はミハイル・グリンカ Mikhail Glinka を1番手(ムルタ騎乗)と考えていましたが、結果は2番手のジョシュア・トゥリーがオダナグー騎乗での優勝。
3着に入ったヴェイル・オブ・ヨークもゴドルフィンでは2番手の馬で、如何に2歳馬の消長が激しいかの証ともなりました。

まだ経験の浅い2歳馬のこと、最後の1ハロンで強烈に抜け出したジョシュア・トゥリーが外ラチに寄れて他馬に接触。当然ながら審議になりましたが、最終的には入線通りで確定しました。

勝馬はゴウラン・パークで新馬勝ち、2戦目のリストウェルでは2着した馬。今回は初の大舞台で3戦2勝となり、来年のクラシック候補に。一戦毎に力を付けてきたことは間違いないでしょう。

フィリーズ・マイル(GⅠ、2歳牝、1マイル)は、1990年からGⅠに格上げされた2歳牝馬の重賞。
9頭が出走し、既にGⅢに勝っているロング・ラッシズ Long Lashes が1番人気(5対2)に支持されましたが8着と凡走。
優勝は8対1のヒバーイェブ Hibaayeb でした。4分の3馬身差2着にレディー・ダルシャーン Lady Darshaan 、更に1馬身半差の3着がユール・ビー・マイン You’ll Be Mine 。

実はこのレースもゴール前の混戦が審議対象になりました。

抜け出したヒバーイェブが内から外に膨れ、体勢を整えようとしたネイル・カラン騎手のムチが弾みでレディー・ダルシャーンの頭をヒット。煽りで3着入線のユール・ビー・マインにも影響が・・・。
しかしレースは入線通り確定。カラン騎手は3日間の騎乗停止処分を受けています。

ヒバーイェブは今年74歳のクライヴ・ブリテン翁の管理馬。同師にとってフィリーズ・マイルは1992年のイヴァンカ、1999年のテッジアーノに続く3勝目です。
血統的にオークスが目標になるタイプですが、今シーズンはブーリーダーズ・カップに遠征する可能性もありそう。

ところでブリテン厩舎と言えば、目下武者修行中の Kousei Miura 騎手を積極的に使っています。
日本では毎日のように三浦騎手の活躍が報じられていますが、これはやや過剰報道でしょう。確かに2勝したことは称えられますが、イギリスでは日本での報道のようなフィーヴァーはありません。

この日、ブリテン師は第1レースで三浦を乗せています(8着)が、パターン・レースでは主戦のカランで勝負してきています。Kousei Miura はあくまでも「お試し期間」。日本のマスコミは、もう少し冷静な報道姿勢を持つべきで、読む人にヨーロッパ競馬に対する誤った認識を植えつけてしまうのは困りものです。

さて、セプテンバー・ミーティングの最大のハイライトは、クィーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル)。GⅠに格上げされたのは1987年のことですが、以来ヨーロッパのベスト・マイラー決定戦の意味合いがあります。

今年は残念ながら4頭立て。当初はオブライエン厩舎のマスタークラフツマン Mastercraftsman の登録がありましたが、師の予告通り最終的には欠場。人気は同じオブライエン師のリップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle に集中(8対13)していました。

そして結果もリップ・ヴァン・ウィンクルの快勝。2着は1馬身4分の1でザシント Zacinto 、3着に3馬身4分の1差が付き、ゴドルフィンのエースであるデレゲイター Delegator 。
前走ロンシャンでムーランを制したアクラーム Aqlaam は意外にも先行策を取ってバテてしまいました。

勝利騎手は当然ながら主戦のジョニー・ムルタ。リップ・ヴァン・ウィンクルはサセックス・ステークスに続いてマイルのGⅠ戦2連勝です。
オブライエン師にとって、QEⅡは2006年のジョージ・ワシントンに続く2勝目。

2000ギニーとダービーは共に4着、常に脚部不安が伴う同馬ですが、ここはラッド・チームの努力が実っていると申せましょう。

去年のこのレースを制したレイヴンズ・パス同様、ブリーダーズ・カップ・クラシックを狙うというコメントが出されました。

さて土曜日はアイルランドのゴウラン・パーク競馬場でもパターン・レースが行われました。最初に紹介したジョシュア・トゥリーが新馬勝ちした競馬場です。

ここは障害レースの競馬場として有名なコースですが、平場も行われていて、デニー・コーデル・フィリーズ・ステークス(GⅢ、3歳上牝、1マイル1ハロン100ヤード)はここでの唯一のパターン・レース。
「デニー・コーデル」とは、イギリスのレコード・プロデューサーだった人で、後年にアイルランドで調教師とサラブレッドの生産者としても活躍した人の由。変わった経歴の持主ですね。

11頭立て。5対2の1番人気に支持されたオブライエン厩舎のローマン・エンプレス Roman Empress が10着に凡走。
イギリスから遠征したスタウト厩舎のエイヴ Ave が2着のチューズ・ミー Choose Me に1馬身半の差を付けて優勝しました。3着は更に1馬身半でローズ・ヒップ Rose Hip 。
去年のこのレースの勝馬シェルヤス Sheryas は連覇を狙いましたが、5着に終っています。

勝ったエイヴはパターン・レース初勝利、騎乗したリチャード・マレン騎手もアイルランドでの初勝利となりました。

 

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