ブリーダーズカップ2011・初日
今年もブリーダーズ・カップの季節がやってきました。当ブログでアメリカ競馬を取り上げることにしたのは今年からですが、以前にもブリーダーズ・カップだけは紹介してきました。
2011年の開催地はケンタッキー州のチャーチル・ダウンズ競馬場。ケンタッキー・ダービーが行われるコースで、ここでBCが開催されるのは2年連続、8回目のこととなります。ブリーダーズ・カップについては私があれこれ書くよりもウィキペディアに詳しい解説がありますので、↓をご覧ください。
今年はブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・スプリントが新設されたのが特徴で、このレースは初年度という事もあってグレード・レースには格付けされていません。これも合わせてレポートして行きます。
その他、チャーチル・ダウンズはBCが無くても開催そのものはあるわけで、本来当開催で行われてきたG戦も同じ日のプログラムに組まれています。もちろんこれも取り上げます。全て施行されたレース順に報告していきましょう。
二日間開催の第1日はレディース・デイ。BCシリーズ6レースの内、牝馬のみによるレースはそのほとんど、5レースを占めました。
前日の雨でダートコースは湿り気を多量に含んでいましたが、当日は晴れ、馬場は時間を経過するにつれ良化して行きました。公式発表は、ダートコース、芝コースともに good 。
ということで最初はチャーチル・ダウンズ競馬場独自ののアック・アック・ハンデキャップ Ack Ack H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。今年はチャーチル・ダウンズ競馬場がブリーダーズ・カップの舞台になりましたが、例年のこの時期にここで開催されるG戦の一つ。今年はたまたまBCの前座として行われます。1991年に創設されましたが、1992年と1993年は施行されていません。GⅢに格付けされたのは1997年から。レース名のアック・アックは1971年の全米年度代表馬で、1986年に競馬殿堂入りを果たした名馬の名。
今年の勝馬はミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras 。7頭立て。前半は先行グループから離れ、後から2~3番手を進む展開。直線で大外に回し、6頭分の外から追い込んで2着アルマ・ドロ Alma d’Oro を半馬身差し切っての優勝。今シーズンは8戦4勝と好調です。この後は11月25日にチャーチル・ダウンズで行われるクラーク・ハンデ(GⅠ)に向かう予定。
調教師はクリス・ブロック、騎手はジュリアン・ルパルー。
さてここからがブリーダーズ・カップ・シリーズ。
ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・スプリント Breeders’ Cup Juvenile Sprint (条件戦、2歳、6ハロン)。今年新設されたレース。グレードには格付けされず、条件戦ステークスとしての位置づけ。9頭立て。
今年第1回の勝馬はシークレット・サークル Secret Circle 。好スタートから2番手に付け、直線で抜け出すと大きなリードを付け安全圏に。最後は外に寄れ、内ラチ沿いに追い込むシュムース Shmoos (出走馬中唯一のヨーロッパ馬、ブライアン・ミーハン厩舎、ギャレット・ゴメス騎乗)に差を詰められましたが、最後は1馬身差の余裕を残していました。
シークレット・サークルは2対5の1番人気、これで無傷の3連勝となります。7月にデル・マーの新馬戦に圧勝、10月にはサンタ・アニタで一般のステークスに勝っていました。二つのレースで付けた着差は12馬身半、これが圧倒的1番人気に支持された根拠です。記録によると、今回の2対5は、BC史上2番目の低配当だった由。
調教師ボブ・バファートは、ブリーダーズ・カップ通算8勝目を記録。騎手はラファエル・ベジャラノ。
ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズ・ターフ Breeders’ Cup Juvenile Filleis Turf (芝GⅡ、2歳牝、1マイル)。16頭が登録していましたが、出走制限が14頭までなので2頭が発走除外となりました。
今年の勝馬はステファニーズ・キッテン Stephanie’s Kitten 。5番枠スタートから第1コーナーで5番手に付け、終始ポケットに入る絶好の展開。逃げるストップショッピングマリア Stopshoppingmaria が直線で大きくリードを取ったのも幸運で、内ラチ沿いに追い上げ、逃げ馬の外に出しての差し切り勝ち。2着ストップショッピングマリアとは4分の3馬身差がありました。これで5戦3勝3着2回、カナダのナタルマ・ステークス(芝GⅢ)3着の後、前走アルキビアデス・ステークスでGⅠホースになっていました。アルキビアデスはダートコース、今回は水分を含んだ重い芝コースだったことも彼女に利したと言えましょうか。
ヨーロッパから参戦したマルセル・ブーサック賞馬エルーシヴ・ケイト Elusive Kate (ジョン・ゴスデン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗)が1番人気に支持されていましたが、外枠(10番枠)が響いてか8着敗退。なお、エルーシヴ・ケイトはレース直前に吉田照也が所有権を獲得しています。今回は共同馬主となった前オーナーの勝負服で走りましたが、来期は社台の勝負服を着る可能性が高いと思われます。当然ながら、現役を退けば日本で繁殖入りするのでしょう。
アイルランドからはオブライエン厩舎のアップ Up (ライアン・ムーア騎乗)も参戦、最後良く追い込みましたが、3着スウィート・キャット Sweet Cat とは写真判定の4着。未だ3戦目(1勝馬)であることを考えれば、好走と判断できそうですね。
勝馬の調教師ウェイン・カタラーノは、BC3勝目。いずれも2歳牝馬での優勝で、2006年のBCジュヴェナイル・フィリーズ(ドリーミング・オブ・アンナ Dreaming of Anna)と2009年の同じレース(シー・ビー・ワイルド She Be Wild)を制していました。騎手はジョン・ヴェラスケス。また、勝馬の名前は、馬主ラムゼイ夫妻の孫の名から採ったものの由。
ブリーダーズ・カップ・フィーリー・アンド・メア・スプリント Breeders’ Cup Filly & Mare Sprint (GⅠ、3歳上牝、7ハロン)。当初は13頭が登録していましたが、ショットガン・ガルチ Shotgun Gulch が獣医の判断で取り消し、12頭立てで行われました。
今年の勝馬はミュージカル・ロマンス Musical Romance 。これも5番枠スタートから2番手に付けて待機。一旦は下げるも、直線では思い切って最内にコースを変更し、外から追い込む2頭を1馬身4分の1差抑えて20対1の逆転劇でした。2着争いは熾烈で、写真判定の結果、去年の2着馬スイッチ Switch が今年も2着、頭差でハー・スマイル Her Smile 3着。1番人気のタービュレント・デサント Turbulent Descent はスタートと道中の不利が重なって5着敗退です。
今年4歳のミュージカル・ロマンスは、これで通算成績が33戦9勝。ステークスは5勝目となります。使うごとに力をつけるタイプで、年間13回から14回使えるタフさも売り物。どんな位置からも競馬出来る自在さも、彼女の武器と言えましょう。
調教師はウイリアム・カプラン、騎手はフアン・レイヴァ。
ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズ Breeders’ Cup Juvenile Fillies (GⅠ、2歳牝、1マイル110ヤード)。当初の登録通り14頭立て。
今年の勝馬はマイ・ミス・オーレリア My Miss Aurelia 。好スタートから終始2番手。直線入口でも余裕を持ってやや外を通り、グレース・ホール Grace Hall に3馬身差を付ける横綱相撲で1番人気(2対1)に応えました。2番人気(3対1)グレース・ホールも3着に6馬身差を付ける内容で、ここは2頭が完全に抜けていた印象。3着のウィーミスフランキー Weemissfrankie も3番人気(5対1)と、ここは全く順当な結果でした。
勝ったマイ・ミス・オーレリアは4戦4勝で無敗記録を更新。7月にサラトガでデビュー勝ちすると、同じサラトガでアディロンダック・ステークスを制してG戦初勝利、続くベルモントのフリゼッテ・ステークスでも2着を5馬身半千切ってBCでも本命の地位を確立。この圧勝で2歳牝馬チャンピオンに選ばれるのは確実でしょう。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手はコーリー・ナカタニ。
ブリーダーズ・カップ・フィリー・アンド・メア・ターフ Breeders’ Cup Filly & Mare Turf (芝GⅠ、3歳上牝、1マイル3ハロン)。当初は12頭が登録していましたが、フランス(アンドレ・ファーブル厩舎)から遠征したアナウンス Announce がゲート入りを嫌ってラチに激突、右後脚に負傷したために除外となり、11頭立てで行われました。
今年の勝馬はパーフェクト・シュルル Perfect Shirl 。直線で先頭が何度も入れ替わる激しいレース。勝馬は前半はやや掛かり気味に後方から中団(8番手辺り)で脚を残す展開。直線では外から3頭目を通り、先に先頭に立ったデットーリ騎乗(ロジャー・ヴァリアン厩舎)のナーレイン Nahrain を4分の3馬身交わして大穴(27対1)を明けました。スタートで出遅れたムーア騎乗(エイダン・オブライエン騎乗)のミスティー・フォー・ミー Misty For Me が最後方から大外を通って一気に追い込みましたが、ハナ差届かず3着惜敗。2頭のヨーロッパ勢は僅差の2・3着という結果でした。1番人気(19対10)のスタチェリータ Stacelita は前半、逃げるデュバウィ・ハイツ Dubawi Heights の3番手と絶好のポジションで待機していましたが、何故か直線では内から伸びず10着ブービーに敗退。勝馬と並びショッキングな結末を演出してしまいました。恐らく馬場状態(公式発表は good ですが、見るからに重い馬場)が原因とのこと。
勝馬は今年6戦して未勝利、人気が無いのも当然でした。優勝は去年7月サラトガのレイク・ジョージ・ステークス(芝GⅡ)以来のこと。今年は勝てなかったとは言え2着1回、3着3回で、いずれも追い込んで届かずというレース内容。陣営によれば決して重が得意というタイプではないそうで、このレースに出走するか否かは最後まで迷っていた由。陣営も驚く快走でした。
調教師はロジャー・アトフィールド、騎手ジョン・ヴェラスケスは、今年のBCシリーズ2勝目。
ブリーダーズ・カップ・レディーズ・クラシック Breeders’ Cup Ladies’ Classic (GⅠ、3歳上牝、1マイル1ハロン)。当初10頭の登録からメダリア・ダムール Medaglia D’Amour が取り消して9頭立て。
今年の勝馬はロイヤル・デルタ Royal Delta 。前半は4番手。直線でも先行3頭の外から追い上げ、最後はイッツ・トリッキー It’s Tricky との叩き合いを2馬身半制して見事1番人気(2対1)に応えての快勝。3歳馬のワン・ツー・フィニッシュとなりました。ケンタッキー・オークス馬プラム・プリティー Plum Pretty は逃げて5着。
ロイヤル・デルタは前走ベルディム・ステークス(GⅠ)で2着、そのときの勝馬アーヴル・ド・グラース Havre de Grace は明日のクラシックで牡馬と対戦します。その前、サラトガではアラバマ・ステークス(GⅠ)を2着に5馬身半差で制しており、今年のチャンピオン3歳牝馬はこの馬で間違いないでしょう。
ところでロイヤル・デルタはパリデス・インヴェスッメンツの自家生産馬ですが、そのオーナーであったサウド・ビン・カーリッド氏は今年初めに死去。そこで氏の所有馬は今年11月にキーンランドの解散セールで売却されることが決まっており、ロイヤル・デルタもその競りカタログの1頭に登録されています。調教するモット師の無念が想像できますが、競馬の世界では致し方ない所なのですね。
調教師ウイリアム・モットは、去年(アンライヴァルド・ベル Unrivaled Belle)に続きレディーズ・クラシック2連覇。騎手ホセ・レズカノは、BC2勝目。
アメリカの競馬はBC一色の感がありますが、昨日(11月4日)はアケダクト競馬場でもG戦が一鞍行われました。ニューヨーク州の競馬はベルモント開催が終了し、年末のアケダクト開催がスタートしました。その初日。
ベルモント競馬場で行われる予定だったターンバック・ジ・アラーム・ハンデキャップ Turnback the Alarm H (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)は、先日の大雪のためアケダクト競馬場に順延されて行われました。1995年創設、1999年にGⅢに格付けされました。レース名のターンバック・ジ・アラームは、CCAオークス、マザー・グース・ステークスなどGⅠに5勝し、日本で繁殖牝馬になった名牝の名前。特別レースに4勝、新潟大賞典で2着したハレルヤサンデーが代表産駒ですね。
今年の勝馬はアリーナ・エルヴィーラ Arena Elvira 。5頭立て。逃げるバンカーズ・バイ Banker’s Buy を2番手でがっちりマーク。これを最終コーナー手前で捉えると、直線では他馬をグングン引き離し、3番手を進んだチェック・ポイント Check Point に6馬身4分の3馬身差を付ける圧勝。3連勝でG戦は初勝利となります。
調教師はウイリアム・モット、騎手はジュニア・アルヴァラード。
こんばんは。
海外競馬に関心があるんですが、いつも大変勉強になっております。
これからも覗かせてください。
本当にありがとうございます。