日本フィル・第274回横浜定期演奏会
今年の私的新年聴き初めはこれでした。出掛けに小頭が痛いので迷いましたが、家でゴロゴロしているよりは良かろうと思ってJRに乗ります。
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
~休憩~
ドヴォルザーク/交響曲第9番
指揮/小林研一郎
ヴァイオリン/千住真理子
コンサートマスター/木野雅之
見ての通り、お正月向けのプログラム。意地悪に勘繰れば、リハーサルも少なくて済む選曲でしょう。例年日フィル横浜1月定期は「新世界より」が居座っているようですね。
いつもなら遠慮するようなコンサートですが、今年は素直に聴いてきました。
正月気分は余り感じられない中、ホールに入ると、ティンパニが譜面をサラっています。見ればスカラ座のジョナサン。“オッ、今日はラッキー、新年早々ティンパニの妙技が聴けるゾ” (実際、ドヴォルザークは素晴らしかった!)
ということですが、前半のコメントは控えたい感じです。ストラディヴァリウス「デュランティ」で高名なヴァイオリニストですが、私はそのナマ演奏に接するのは初めて。
確かに楽器の鳴りは良いのですが、音楽的には(そして技術的にも)一杯一杯ですね。それでも大喝采になるのは、正直に言って良く判りません。クラシック音楽には違いないのですが、私が息をしている世界とは異なる次元だと思いました。
先月、同じみなとみらいホールで同じ曲を三浦文彰でも聴きましたが、彼は協奏曲の後でパガニーニの超難曲をアンコールしましたっけ。彼女にはとてもその余裕はなく、客席の拍手とブラヴォ~にもアンコールは無し。
コバケンの「新世界より」は、確か初めて聴いたと思います。良くも悪くもコバケンの世界。
何処が? と問われれば何点か指摘しましょう。
第2楽章・第78小節目からのメノ。G線のヴァイオリンとクラリネットが奏するメロディーをチェロとヴィオラのトレモロが支える場面ですが、コバケンはヴィオラに拘ります。スコアでは単なる pp の合いの手ですが、ヴィオラだけは時に sf を付けて恰もメイン・パートのようにその存在を主張させていくのです。
私はこんな第2楽章を初めて聴きましたね。これはほとんどドヴォルザーク作曲、コバケン編曲の様相。
第4楽章でも第2主題の表情は全く独特。mf は p に、pp は pppp 位にまで音量を落として歌いかける。テンポの伸縮も自在そのもの。
第2楽章のコラールだけに使われるチューバを、第4楽章のコーダでも動員(恐らくバス・トロンボーンに重ねているのでしょう)するのもコバケンの確信犯。
全曲を締め括る最後の和音を二段階でギア・ダウンしていくやり方も、私は初めて体験したサプライズでした。
“これじゃ、マーラーだ” と思わず叫んだ聴き手もいましたね。(同感)
その他、イングリッシュ・ホルンは2番オーボエの持ち替えではなく、坪池泉美のソロで。第4楽章のシンバルは意外に平凡で、弱音で合わせて客席に波動させる方法で。
名曲であればあるほど何か仕掛けたくなるのはコバケンの性分のようで、冒頭のフィガロ序曲でも、コーダに入る236小節で pp を極端に強調する誘惑には打ち克てませんでした。
新年でもあり、アンコールは2曲用意。シュトラウスのピチカート・ポルカとブラームスのハンガリー舞曲第5番がプレゼントされました。どちらも本編以上に「遊び」を効かせたコバケン節で。
ま、こういう酩酊気分の演奏会を聴くのも偶には良いでしょう、かね。
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