今年最初のアケダクトG戦

2月4日の土曜日、アメリカ競馬は今年に入って最大の賑いになりました。G戦は3場で合計7鞍。久し振りに忙しいレポートになりそうですね。

先ずニューヨーク州のアケダクト競馬場、年末年始も毎週のように様々なステークスが行われてきましたが、グレード・レースは昨日の2鞍が今年最初となります。またフロリダ州は、南部のガルフストリームの他に中央部に位置するタンパ・ベイ競馬場でも今年最初のG戦が組まれていました。
更にカリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場ではGⅡ戦3連発。結果が入ってきた順に紹介しましょう。

アケダクト競馬場のトボガン・ステークス Toboggan S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。歴史は古く、創設は1890年。7ハロンで行われていた時期(1995年から2004年まで)もありました。グレード制が導入された1973年にはGⅢに格付けされていました。その後1975年から1983年まではノン・グレードに降格されていましたが、1984年にGⅢ復帰を果たしています。レース名のトボガンは英オークスに勝った馬のことではなく、当レースが創設当時(モリス・パーク競馬場の丘を下るコースで施行されていた)トボガン・スライド Toboggan Slide というレース名だったことによります。トボガンとは雪を滑る時に使うソリのこと。
今年の勝馬はカリブラチョーア Calibrachoa 、去年に続く2連覇です。7頭立て。逃げるディスキー・ダンス Diski Dance を2番手で追走、直線半ばでこれを捉え、2馬身4分の1差を付けての連覇達成で1番人気(3対5)に応えました。同厩で馬券は勝馬とセットになるカイシャ・イレクトロニカ Caixa Electronica が4分の3馬身差で3着。勝ったカリブラチョーアはアケダクト競馬場の内コースでは4戦4勝とパーフェクト、これでGⅢは4勝目ですが、全てアケダクト競馬場でのもので、コーストの相性は抜群です。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はコーネリオ・ヴェラスケス。

ウィザーズ・ステークス Withers S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。これも1874年創設の歴史ある一戦。レース名のウィザーズは、米国ジョッキークラブ初代会長のデヴィッド・ダーハム・ウィザーズに因んだもの。三冠レース確立以前から行われていた3歳戦で、比較的近年までは三冠の重要なトライアルとされていたもの。ケンタッキー・ダービーの1週前に行われる伝統が長く続いていました。グレード制導入の1973年はGⅡに格付けされましたが、2000年以降はGⅢに格下げされて現在に至っています。去年はレースそのものが開催されませんでしたが、今年は無事に復活しました。
今年の勝馬はゴドルフィンの持ち馬アルファ Alpha 。6頭立て。ゲートに問題のあったアルファですが、大外7番枠からスタートして外々を回りながら4番手追走。第3コーナーから仕掛けて直線入口では先行2頭の外から襲い掛かり、直線では後続を引き離すと、そのまま2着スペイツシティー Speightscity に3馬身4分の1の大差を付けて楽勝、見事に圧倒的1番人気(3対10)に応えました。前走、先月同じアケダクト競馬場で行われたカウント・フリート・ステークスに勝ち、ここは試金石と考えられていました。ここまで5戦3勝、シャンペン・ステークス(GⅠ)がユニオン・ラグス Union Rags の2着、BCジュヴェナイル11着が唯一の着外です。
調教師キアラン・マクローリンは2007年(ディヴァイン・パーク Divine Park)、2009年(ミスター・ファンタジー Mr. Fantasy)に続いてウィザース・ステークス3勝目。騎手はラモン・ドミンゲス。

タンパ・ベイ・ダウンズ競馬場の2鞍については、既に去年紹介済みです。

第10レースに行われたエンデヴァー・ステークス Endeavour S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)は2頭取り消して8頭立て。ほぼ5か月ぶりの実戦ながら4対5の1番人気に支持されたザゴラ Zagora がスタートから3番手に付け、直線で逃げるイクスクルーシヴ・ラヴ Exclusive Love を外から交わして2馬身4分の1差を付ける快勝。2番人気(2対1)のキルターナ Keertana も良く追い込みましたが、2着に1馬身4分の1差及ばず3着まで。フランス産のザゴラ(フランスではGⅢ2勝)は、去年アメリカに転戦して6戦1勝、GⅠのダイアナ・ハンデ(サラトガ競馬場)に勝っていた馬。これが米国での2勝目となります。
調教師はチャド・ブラウン、騎手はハヴィエル・カステラノ。

続く第11レースはサム・F.デーヴィス・ステークス Sam F. Davis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。3月10日に行われるタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)の前哨戦となる一戦です。今年は11頭立て、確たる中心馬が無く混戦模様。勝ったのはここまで3戦して未勝利のバトル・ハードンド Battle Hardend 。3番枠からスタートし、内枠の利を活かしてラチ沿いに4番手追走。3コーナー辺りから徐々に外に持ち出し、直線では4頭分の外から鋭く伸びて2着以下に1馬身4分の1差を付けて抜け出しました。2着は3頭がほぼ横一線に並ぶ大混戦。写真判定の結果、2着に2番人気(7対2)のプロスペクティヴ Prospective 、ハナ差3着がレヴロン Reveron 、更にハナ差でラヴェロズ・ボーイ Ravelo’s Boy が4着に入っています。このレースに6年で4勝しているトッド・プレッチャー師が送り出したエカボーニ Ecaborni が押し出されるように7対2の1番人気に支持されていましたが、ドン尻11着に惨敗しました。
調教師はエディー・ケナリー、騎手はジュリアン・ルパルー。

最後にGⅡが3鞍行われるサンタ・アニタ競馬場から。最初のアルカディア・ステークス Arcadia S (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)については既に去年紹介済みです。因みに去年は4月9日に行われていましたが、今年は2か月も前倒しでの開催となりました。
1頭取り消して7頭立て。前半は5番手でジックリ待機したミスター・コモンズ Mr. Commonns が、直線入口でポッカリ空いた内を衝き、ラチ沿いにスルスルと抜け、外から追い込むウィリーコンカー Willyconker に1馬身差を付けて優勝、2対5の1番人気に応えました。更に半馬身差でマッソーニ Massone が3着で入線。直線入口の進路の取り方で先着3頭全てが審議の対象になりましたが、最終的には着順通りで確定しています。勝ったミスター・コモンズは昨年末のサー・ボーフォート・ステークス(芝GⅡ)に続くG戦2勝目。去年のBCマイルは5着に終わりましたが、今年こそ芝コースのマイラーとしてアメリカを代表する存在に成長してくるでしょう。この日もトラブルを巧みに避けたのは、瞬発力があってのことでした。
調教師はジョン・シレフス、騎手はマイク・スミス。

GⅡ第2弾はロバート・B.ルイス・ステークス Robert B. Lewis S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。これもレースの歴史等は去年紹介済みの一戦です。
今年は8頭立て。2番手に付けたアイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another が直線で抜け出し、エンパイア・ウェイ Empire Way に2馬身4分の3差を付けて優勝、43対1の大穴となりました。1番人気(3対2)に支持されたキャッシュコール・フューチュリティー(GⅠ)の覇者リエゾン Liaison は直線中程で2頭の間に挟まれ、騎手(ラファエル・ベハラノ)だけが落馬、当然ながら審議となりました。結果、3着で入線したグルーヴィン・ソロ Groovin’ Solo が失格となり、4位で入線したラウジング・サーモン Rousing Sermon が繰り上がっています。この事故では、幸いに馬も騎手も無事。勝ったアイル・ハヴ・アナザーは7月にハリウッドでデビュー勝ち、2戦目のベスト・パル・ステークス(GⅡ、デル・マー競馬場)で2着した馬。そのあとサラトガに遠征してホープフル・ステークス(GⅠ、9月5日)に挑戦しましたが向う脛を負傷して6着敗退。今回はそれ以来の実戦ということで人気を落としていました。
調教師ダグ・オネイルは、このレース2007年のグレート・ハンター Great Hunter に続く2勝目、オーナーも同じポール・レッダム氏。騎手マリオ・グティエレスは常時カナダで騎乗しているジョッキーです。

最後のストラブ・ステークス Strub S (GⅡ、4歳、9ハロン)。当カテゴリーでも何度か紹介しているように、年初にサンタ・アニタで行われる明け4歳世代のみによる三冠レースの第3弾として位置づけられていたもの。1948年にサンタ・アニタ・メイチュリティー Santa Anita Maturity として創設され、1963年にサンタ・アニタ競馬場の創設者チャールズ・ヘンリー・ストラブを記念してチャールズ・H.ストラブ・ステークスと改名され、更に1994年にはレース名がストラブ・ステークスと短縮されました。グレード制導入時はGⅠでしたが、1998年以降GⅡに降格されています。
今年の勝馬はアルティメイト・イーグル Ultimate Eagle 。8頭立て。4枠から好スタートで先手を取りましたが、外7番枠から出た1番人気(4対5)のタピザー Tapizar がハナを主張して前走サン・フェルナンド・ステークス(GⅡ、ストラブ・シリーズ第2弾)逃げ切りの再現を目論みます。一旦は2番手に下げたアルティメイト・イーグルでしたが、馬自身が行く気配を見せ、内枠の利を活かして先頭を奪い返すと、そのまま一人旅に持ち込んで鮮やかな逃げ切り勝ち。7馬身4分の1差遅れの2着にはジェイシート Jaycito が食い込み、タピザーは4着に沈んでしまいました。3着は2着馬から2馬身4分の1差でプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief 、サン・フェルナンドで2着したバラドリー Balladry は5着に終わっています。勝ったアルティメイト・イーグルは去年のオーク・トゥリー・ダービー(芝GⅡ)、ハリウッド・ダービー(芝GⅠ)の覇者で、これがダートコース初戦。2つのダービーも人気薄での勝利、今回もダートコースは未知数ということもあって7対1の並んだ3番人気でした。一時は疝痛で命を落としかけた馬ですが、これで3月3日のサンタ・アニタ・ハンデも視界良好、真のチャンピオンを目指します。
調教師マイケル・ペンダーとオーナーのB.J.ライト氏は、2010年のジェラニモ Jeranimo に続きストラブ2勝目。更にアルティメイト・イーグルの父ミッゼン・マスト Mizzen Mast も2002年のストラブ勝馬という因縁でした。騎手はマーチン・ペドローザ。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください