ターフ・カップもドイツ馬が制覇
今週のアメリカG戦は土曜日の4場5鞍だけ。秋のハリウッドで行われる最初のGⅠ戦を中心にレポートして行きましょう。
先ずはアケダクト競馬場のディスカヴァリー・ハンデキャップ Dicovery H (GⅢ、3歳、9ハロン)。1945年にベルモント競馬場で創設されたレース。現在はアケダクト競馬場の秋開催で行われています。レース名は「発見」という意味ではなく、1935年のアメリカ年度代表馬となった名馬の名前。ブルックリン・ハンデ3連覇など、古馬になって大成したニューヨークを代表するチャンピオンでした。
今年の勝馬はリディームド Redeemed 。8頭立て。前半は終始2番手。3コーナーを回ったところで逃げたゴースト・ガナー Ghost Gunner が故障を発症して競走中止。これと同時にスパートしたリディームドが、直線で他馬を突き放し、2着ソーシャルソウル Socialsaul に2馬身4分の1差を付けて1番人気(7対5)に応えました。前走オクラホマ・ダービーに続くステークス連勝です。ブリンカーを装着するようになってから馬が変わり、来年の古馬戦線に向けての注目株の1頭と言えるでしょう。
調教師はリチャード・ダトロウ、騎手はエドガー・プラード。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場のリヴァー・シティー・ハンデキャップ River City H (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)。1978年創設。感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日に行われてきましたが、今年はそれに先立つ土曜日に行われます。創設から暫くはリステッド戦でしたが、1996年にGⅢに格上げされました。
今年の勝馬はブルース・ストリート Blues Street 。8頭立て。前半は後方2番手に待機。向正面から徐々に順位を上げ、直線では4頭分の外から鋭く伸び、これも最後方から追い上げたエイリーズ・イヴェント Allie’s Event に4馬身半差を付ける圧勝。今年7歳の同馬は、グレード・レース3勝目(2勝は2010年に記録したもの)となります。
調教師エディー・ケナリーは、同馬をトッド・プレッチャー厩舎から引き継いでの2戦目に当たっていました。騎手ロビー・アルバラードは、これがこのレース4勝目となります。
アメリカ競馬日記初登場のデルタ・ダウンズ競馬場は、ルイジアナ州の競馬場。開場は1973年の9月。そもそもはクォーター・ホースの競馬場として設立されたコースです。アメリカの多くの競馬場の例に漏れず、カジノとホテルが併設された総合娯楽施設ですが、2005年に大型ハリケーン・リタに見舞われ、カジノとホテルは2か月間、競馬場は半年間の閉鎖を余儀なくされました。年々の開催は10月中旬から翌年の3月まで。次第に冬場の競馬スポットと認知されてきており、グレード戦にはこの日(ジャックポット・デイが愛称)の2レースのみが指定されています。
メイン・イヴェントはデルタ・ダウンズ・ジャックポット・ステークス Jackpot S (GⅢ、2歳、8.5ハロン)。2002年に創設された時は年末(12月21日)に行われました。百万ドルという高額賞金のレースで、アメリカの2歳戦ではブリーダーズ・カップに次ぐ高賞金。リーマン・ショックにより賞金は一時ダウンしましたが、去年から100万ドルに回復しています。高賞金と雖もGⅢに格付けされたのは2006年から。あくまでも優勝馬のレヴェルによってグレードの運命が左右されるでしょう。
今年の勝馬はセイバーキャット Sabercat 。10頭立て。スタート(8番枠)で横の馬にぶつかるアクシデントもあって、最初のスタンド前は最後方。向正面で馬群を縫いながら進出、直線入口では先頭に並び掛ける勢いで、そのまま2着バスマーティ Basmati に4馬身差を付ける快勝でした。これがG戦デビューで8対1(6番人気)とあまり人気はありませんでしたが、これで3連勝。4戦目で初勝利とやや時間が掛かりましたが、高賞金を獲得して来年のクラシック候補に名乗りを挙げた形です。
調教師スティーヴン・アスムッセンは、前日に調教師としての6000勝目をマークしたばかり。騎手はジェラード・メランコン。
その一つ前に行われたデルタ・ダウンズ・プリンセス・ステークス Princess S (GⅢ、2歳牝、8ハロン)。ジャックポットの牝馬版として同じ2002年創設。賞金はジャックポットの半額ですが、それでも高額であることに違いはありません。GⅢへの格上げは、ジャックポットに遅れること2年の2008年から。
今年の勝馬はナウ・アイ・ノウ Now I Know 。こちらも10頭立て。作戦通り、鮮やかな逃げ切り勝ち。向正面では他馬を引き付け、直線入口ではリードを大きく広げ、2着インニー・ミニー Inny Minnie に4馬身差を付ける圧勝でした。2着との着差はジャックポットと全く同じ。8月にデビューして以来5戦5勝、G戦初勝利でパーフェクトな戦績を続けています。
調教師はドン・フォン・ヘメル、騎手はペリー・コンプトン。
最後に、11月10日に開幕したハリウッド・パーク競馬場の秋開催で行われる最初のグレード戦がハリウッド・ターフ・カップ・ステークス Hollywood Turf Cup S (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)。1981年に創設され、1983年からGⅠに格付けされている一戦。アメリカの芝コースの長距離戦としてはほぼシーズン最後の大一番で、ブリーダーズ・カップ・ターフから転戦してくる馬が出走するか否かが見所でしょうか。
結局、今年はBCターフ出走組からの参戦はありませんでしたが、レディーズ・クラシックからアルゼンチン産のミス・マッチ Miss Match が出走。他にドイツ産馬2頭、アイルランド産馬1頭、チリ産馬1頭を含む国際的な顔振れが揃いました。
勝馬はサナガス Sanagas 。7頭立て。大外7番枠からのスタート。前半は外々を回って3番手に待機し、向正面3コーナー手前で早くもスパート、直線入口では後続に3馬身差を付けて独走に持ち込み、2着バーボン・ベイ Bourbon Bay に3馬身4分の1差を付ける快勝で1番人気(8対5)に応えました。ロミタス Lomitas を父に持つドイツ産馬で、来年の芝長距離戦の主役を担う1頭に成長してくることは間違いないでしょう。今年アメリカで5戦3勝。前走キーンランドのシカモア・ステークス(GⅢ)に続くG戦連勝です。アメリカ転戦以前にドイツでは今年の凱旋門賞を制したペーター・シールゲン師が管理し、5戦4勝2着1回という成績の持主でした。これで通算成績は10戦7勝となります。
調教師はグレアム・モーション。ニューヨークを本拠にする騎手ラジーヴ・マラー(今年26歳)にとっては、これがハリウッドでのステークス戦初勝利なのだそうです。
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