ダトロウ師のジェネラルジョージ・ワンツー、バファート師のサウスウエスト・ダブル

昨日はプレジデンツ・デイの祝日、例年この日に行われるレースを含めたG戦3鞍が行われました。
このうちの一つ、オークローン・パーク競馬場で行われたサウスウエスト・ステークスは登録馬が多く、二つに分割されています。

最初はローレル・パーク競馬場のジェネラル・ジョージ・ハンデキャップ General George H (GⅡ、3歳上、7ハロン)。レース名については去年、詳しく紹介しました。創設は1973年で、1986年にGⅢに格付け、1991年以降GⅡに格上げされています。創設から1984年まではボーウィー競馬場、1986年にはピムリコ競馬場で行われました。
今年は7頭立て。逃げたディス・ワンズ・フォー・フィル This Ones for Phil を雁行して追走する3頭のうち、内ラチ沿いにコースを選んだ1番人気(9対5)のヤワンナ・トゥイスト Yawanna Twist が直線でも最内を衝いて伸び、逃げ切りを図るディス・ワンズ・フォー・フィルを半馬身差捉えて優勝。更に半馬身差3着には久々のトビーズ・コーナー Toby’s Corner (去年のウッド・メモリアル・ステークス優勝以来の実戦)が入りました。勝ったヤワンナ・トゥイストは大晦日に7か月振りのレース(アケダクトのクレーミング戦)を7馬身差で圧勝していた5歳馬でG戦は初勝利となりますが、一昨年のプリークネス・ステークスで4着していた実力の持ち主でもあります。
勝馬を調教するリチャード・ダトロウ師は、2着のディス・ワンズ・フォー・フィルの調教師でもあり、師のワン・ツー・フィニッシュ。2004年のウェル・ファンシード Well Fancied に続く二度目のジェネラル・ジョージです。勝馬に騎乗したのは、これが三度目のジェネラル・ジョージ勝利となるマイケル・ラッツィ、2着にはラモン・ロドリゲスが騎乗していました。

冒頭で紹介したように、オークローン・パーク競馬場のサウスウエスト・ステークス Southwest S (GⅢ、3歳、8ハロン)には21頭の登録があり、レースは二つに分割されました。私がアメリカ競馬を取り上げるようになって、レースの分割は確か初めてのことかと思われます。しかしアメリカでは分割は決して珍しい事ではありません。全ての記録に当たったわけではありませんが、例えば先々週行われたガルフストリーム・パーク競馬場のスワニー・リヴァー・ハンデでは1983年は3レースに分割。翌1984年は分割は無かったものの、1985年も3レース分割されました。これに続く3年間も2分割が続き、何と6年間で13頭もの勝馬が誕生しているのですね。
詳しいルールなどは判りませんが、アメリカはヨーロッパや日本のコースに比べて狭いことが原因でしょう。こうした場合に日本では籤引きか獲得賞金によって枠を超えた馬が発走除外になりますが、アメリカではレースを分割してでも登録した馬全てにチャンスを与えるのが原則。競馬そのものに関する哲学が異なっているという事情もあるのでしょう。
いずれにしても分割された場合、それらは Div. 1 、Div.2 と表記されます。出走馬の組み合わせなど細かい規定は知る術がありませんが、相手関係で有利不利が生ずることもありそう。分割はGⅠ戦でも行われますが、流石に三冠(ダービー、プリークネス、ベルモント)では事例は見当たりません。
ということでサウスウエスト・ステークス、去年は詳しく紹介していません。サウスウエスト・パースと呼ばれていたレースが発展的に解消されて1968年にハンデ戦として創設されたもの。アーカンソー・ダービーの前哨戦と位置付けられている一戦です。1995年から1999年までの5年間GⅢに格付けされていましたが、その後ノン・グレードに降格、2008年から再びGⅢとして復活しました。

さて分割第1組(Div.1)は11頭立て。レース前は、こちらの方に有力馬が揃ったと評価されていました。4番枠から出たマジェスティック・ストライド Majestic Stride が逃げましたが、大外11番枠から出た6対1(5番人気)のキャスタウエイ Castaway がスタートから内に切れ込みながら積極的に前に出て2番手を追走、3コーナーで先頭に並べかけると、直線は2着ジェイク・モー Jake Mo に3馬身4分の3差を付ける快勝です。3着は半馬身差でレックレス・ジェリー Reckless Jerry (オーナーはカントリー・ミュージック歌手・トピー・キース Toby Keith の由)の順。3対1の1番人気に支持されたロングヴュー・ドライヴ Longview Drive は珍し3頭の6着同着に終わりました。勝ったキャスタウエイは、先月の未勝利戦に続く連勝でG戦初勝利。勝ちタイムは1分38秒09(馬場状態は Fast)でした。
調教師はボブ・バファート、騎手はラファエル・ベハラノ。

続く第2組(Div.2)は10頭立て。こちらも良く似た展開で、外の9番枠から積極的に2番手に付けた1番人気(3対5)のシークレット・サークル Secret Circle が、ゴール手前で逃げ粘ったスキャットマン Scatman を半馬身捉えて優勝、期待に応えました。3着は5馬身半差離されてアディロンダック・キング Adirondack King の順。勝ったシークレット・サークルは、もちろん去年のBCジュヴェナイル・スプリントの覇者で、BC以来2戦目となります。ここまで5戦4勝で、敗戦は前走シャム・ステークス(GⅢ)での2着だけ(1月8日のレポート参照)。距離不安はあるものの、ケンタッキー・ダービーに向かう資格は充分に得たと言えましょう。こちらの勝ち時計は1分37秒08。馬場状態は同じですから、前評判とは逆に、第2組が1秒01上回るタイムとなります。競馬はタイムだけで優劣を決められるスポーツではありませんが、第2組の方が最後まで接戦となった結果かもしれませんね。
こちらもボブ・バファート厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗で、調教師/騎手コンビにとってはサウスウエスト・ダブル達成です。

特別ゲストとして元チャンピオン・ボクサーのダニー・ロペスを迎えて行われたサンタ・アニタ競馬場からはブエナ・ヴィスタ・ハンデキャップ Buena Vista H (芝GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。去年の紹介はレース名のみでした。1988年に創設され、1990年にはGⅢに格付けされています。1995年には順調にGⅡに格上げされました。
今年は11頭立て。補欠としてもう1頭が登録していましたが、こちらは最大11頭の制限枠を超えたために(レースの分割にはならず)発走除外になっています。去年まで英国でサー・マイケル・スタウト厩舎に所属していたストローベリーダイキリ Strawberrydqiquiri がタフさと堅実さを買われて3対1の1番人気でしたが、チリのGⅠ馬ヴァモ・ア・ガルピアー Vamo a Galipiar も未知の魅力が買われ、3対1で並んだ1番人気に支持されていました。他にもアメリカン・オークス(GⅠ)勝馬のキャンビーナ Cambina (7対2の2番人気)、昨夏パロマー・ステークス(GⅡ)を制したシティー・トゥー・シティー City to City (8対1で並んだ3番人気)など多士済済の顔ぶれが揃い、混戦が期待されます。
それを証明するように最後の直線は5頭ほどが一団でゴールを通過する大混戦。一歩先に抜け出したストローベリーダイキリ を5番手から追い上げたシティー・トゥー・シティー が捉え、更に外から急襲するアップ・イン・タイム Up in Time (同じく8対1)を頭差凌いで混戦を制しました。半馬身差3着には伏兵(10対1)ワイルド・ミア Wild Mia が内から追い込み、本命ストローベリーダイキリは半馬身交わされて4着惜敗です。気が付けばキャンビーナも最後方から5着に食い込んでいました。先行馬総崩れの中、終始離れた3番手に付けたストローベリーダイキリが敗れたとは言え最後まで優勝争いに加わっていたのですから、この馬の次回は狙い目と言えるでしょう。
調教師ジェリー・ホーレンドルファーは、一昨年のタスカン・イヴニング Tuscan Evening に続いてブエナ・ヴィスタ2勝目。騎手コーリー・ナカタニも1994年、1997年、1999年に続く13年振りの優勝となりました。

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