2月最終週のグレード戦、クラシックの足音

2月最終週のレポートです。今週も土日の二日間に亘って注目のG戦が行われますが、特に昨日の土曜日は4場で合計9鞍のグレード・レースが組まれ、久し振りに忙しい思いをしました。
今年もクラシックをほぼ2か月後に控え、3歳世代の各種トライアルにも熱が入ってきました。今週はフェア・グラウンズとガルフストリーム・パークが大注目です。

そのフェア・グラウンズ競馬場、4鞍の重賞をレース順に見ていきましょう。
先ずは第6レースのフェア・グラウンズ・ハンデキャップ Fair Grounds H (芝GⅢ、4歳上、9ハロン)。去年はレースの歴史など紹介出来ませんでしたので、改めて簡単に。正確な創設年は判りませんが、恐らく1988年と思われます。GⅢに格付けされたのは最近のことで、2006年から。
今年は当初マインシャフトとの掛け持ち組も含めて10頭が登録していましたが、最終的には3頭が取り消して7頭立てで行われました。121のトップハンデを背負うスマート・ビッド Smart Bid が去年9月以来の休み明けながら、9対5の1番人気に支持されています。
レースは2番人気(5対2)のミスター・ヴェガス Mr. Vegas がマイペースに落として逃げ、ギリギリ逃げ切ったと思われましたが、5番手を進んだ本命スマート・ビッドが直線でジリジリと追い上げ、ゴール寸前で頭差交わして期待に応えました。3着は1馬身半遅れてデュビアス・ミス Dubious Miss 。
グレアム・モーション師が調教、エドガー・プラードが騎乗したスマート・ビッドは6歳牝馬。去年3月にここフェアー・グラウンズでマーヴィン・H.ムニッツ・ジュニア・メモリアル・ハンデ(芝GⅡ)に勝っており、G戦はこれが2勝目となります。

続いて第7レースのレーチェル・アレキサンドラ・ステークス Rachel Alexandra S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。このレースについては既に去年紹介済み。
今年は1頭取り消して6頭立て。前哨戦となるシルヴァーバレットデイ・ステークス(1月12日、フェアー・グラウンズ、ノン・グレード)の上位3頭の争いと見られていました。3対2の1番人気は、同レースに勝ったビリーヴ・ユー・キャン Believe You Can です。
レースは伏兵エイヴィーズ・センス Avie’s Sense が逃げましたが、抜け出したのは4番手から進んだ3番人気(3対1)の前哨戦2着のサマー・アプローズ Summer Applause でした。直線で逃げたエイヴィーズ・センスを1馬身捉えての優勝。3馬身半差の3着には前哨戦3着のインニー・ミニー Inny Minnie が食い込み、本命ビリーヴ・ユー・キャンは4着に終わりました。
ここまで5戦3勝、これがステークス初勝利となるサマー・アプローズを調教するのはブレット・カルホーン師、勝利騎手はロビー・アルバラード。陣営の最終目標はケンタッキー・オークスであることを宣言しました。これまでは逃げて競馬していた同馬でしたが、今回はオークスを意識してか控える競馬。プランは順調に進んでいるようです。

第9レースのマインシャフト・ハンデキャップ Mineshaft H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)は、第6レースのフェア・グラウンズ・ハンデのメイン・コース版に相当する一戦で、芝とダートの両刀使いの馬は双方に登録し、相手関係で最終的に出走レースを決めることもあるようです。1992年創設で、GⅢに格付けされたのは2004年から。その翌年にそれまでのファーラウェイ・ステークスから現在の名称に変更されました。
当初登録から3頭が取り消して6頭立て。1番人気(5対2)にはルイジアナ・ハンデに勝ったディスカイハズノーリミット Thiskyhasnolimit が推されていました。しかしレースは波乱、13対1の最低人気だったネイツ・マインシャフト Nates Mineshaft がスローペースに落として逃げ切ってしまいました。終始2番手に付けていた本命ディスカイハズノーリミットが向正面の半マイル地点で突然故障を発生して後退、後続馬は多少なりとも影響を受けたかもしれません。2着は2馬身4分の3差でファスト・アレックス Fast Alex 、更に1馬身半差3着がアルマ・ドーロ Alma d’Oro 。トレ・ボラチョス Tres Borrachos は4着、ミスター・マルティ・グラスも5着と人気馬は総崩れの結果に終わってしまいました。
馬名にレース名が入っているネイツ・マインシャフトは3連勝ながら、これがステークス初勝利、G戦初挑戦でもありました。調教師はオースチン・スミス、騎手はジェッシー・キャンベル。

この日のメインに相当する第11レースがリズン・スター・ステークス Risen Star S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。これも詳しくは去年のレポートを参照して下さい。
11頭立て。これがステークス・デビューながら、プレッチャー厩舎がクラシックを狙う大物として評判のエル・パドリーノ El Padrino のレース振りに大きな期待が集まっていました。この馬が期待も込めて4対5の1番人気。レースは、2番手から先に先頭に立ったこれまたステークス初挑戦のマーク・ヴァレスキ Mark Valeski (3対1の2番人気)と、3番手から外を回って追い上げるエル・パドリーノとの追い比べ。最後は両馬が馬体を接するような叩き合いとなり、本命馬がハナ差マーク・ヴァレスキを抑えていました。ジー・ダガー Z Dager が5馬身半差離されての3着。2着のロージー・ナプラヴニク騎手が進路妨害の廉でハヴィエル・カステラノ騎手を訴えましたが、却下されています。
トッド・プレッチャー期待のエル・パドリーノ、2歳時にアケダクトのレムゼン・ステークス(GⅡ)で勝馬から1馬身ほどの3着していた馬で、これで5戦3勝2着1回3着1回となります。当然、今後はクラシック路線を歩むことになりましょう。

ガルフストリーム・パーク競馬場は、土曜と日曜の二日間亘ってクラシックに向けた重要なトライアルが組まれています。メインは第11レースのダヴォナ・デールですが、その前に古馬牝馬による芝コースとメインコースのG戦が行われました。
第8レースがセービン・ステークス Sabin S (GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)。1992年に創設、創設から3年目の1994年にはGⅢに格付けされています。登録は僅か5頭でしたが、GⅠ馬2頭の対決で興味津々の一戦となりました。その2頭とはBCレディーズ・クラシックを制したロイヤル・デルタ Royal Delta と、オグデン・フィップス・ステークス勝馬のオウサム・マリア Awesome Maria 。この2頭が123ポンドのトップ重量で対決します。人気は去年6月以来の実戦ながらオウサム・マリアが4対5で1番人気、対するロイヤル・デルタもイーヴンで差無く2番人気で続いていました。
しかしレースは一方的。スタートこそ後方に控えた2頭でしたが、オウサム・マリアは向正面で一気に3番手に上がり、3~4コーナー中間地点で積極的に先頭を奪うと、直線は独走態勢。対するロイヤル・デルタも懸命にオウサム・マリアを追って2番手に上がりましたが、ゴールでは8馬身の大差が付いていました。ロイヤル・デルタは頭差グルーピー・ドール Groupie Doll を辛うじて捉えて2着を死守。
トッド・プレッチャー師、ジョン・ヴェラスケス騎手の名チームで臨んだオウサム・マリアは脚毛の5歳牝馬。これで13戦して8つめの勝利となります。セービン・ステークスは去年に続いて2連勝。

続いて第10レースは芝コースのザ・ヴェリー・ワン・ステークス The Very One S (芝GⅢ、4歳上牝、11ハロン)。このレースの詳しい経緯は依然として不明です。
14頭が登録していましたが、3頭が取り消しても11頭の多頭数。11対1の伏兵、1番枠のヒア・トゥー・ウイン Here to Win は終始内ラチ沿い、最後方に待機。直線入口でもポッカリ空いた最内を抜け、外を通って追い込むキルターナ Keertana (去年のこのレース勝馬)に1馬身差を付けての快勝です。3着は4馬身半の大差が付いてウッドフォード・ベル Woodford Belle 。BCフィリー・アンド・メア・ターフに勝ったパーフェクト・シール Perfect Shirl はこれがシーズン初戦、8着と力を出せずに終わりました。
勝ったヒア・トゥー・ウインはブラジル産の6歳牝馬、南アフリカでクラシックを含めGⅠに2勝した国際派。アメリカに転戦してからはキアラン・マクローリン師が管理しています。騎手はジョー・ブラーヴォ。

そしてメインのダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。ケンタッキー・オークに向かう馬にとっては絶好のトライアルです。
9頭立ての1番人気(4対5)は、スピナウェイ・ステークス(GⅠ)勝馬でBCジュヴェナイル・フィリーズで2着したグレース・ホール Grace Hall 、ドモワゼル・ステークス(GⅡ)の覇者ディスポーザブルプレジャー Disposablepleasure が3対1の2番人気で続いていました。
しかし優勝は64対1のヤラ Yara 、大波乱です。スタートで先頭、向正面で一旦は本命グレース・ホールにハナを譲りましたが、直線に入っても脚色衰えず、逆にグレース・ホールを首差捉えての番狂わせを演じました。3着は3馬身半差でキャプティヴェイティング・ラス Captivating Lass 、2番人気のディスポーザブルプレジャーは3番手追走も2馬身半差されて4着に終わりました。
ヤラはホセ・ガロファッロ厩舎の管理馬、ヘスス・ロペス・カスタノンが騎乗していました。1月29日に行われたフォワード・ギャル・ステークス(GⅡ)では勝馬から22馬身も遅れた4着に敗退していた馬ですが、意外な名誉挽回。彼女もまた、ケンタッキー・オークスを究極の目標にするでしょう。

タンパ・ベイ・ダウンズ競馬場からはタンパ・ベイ・ステークス Tampa Bay S (芝GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。
12頭立ての混戦、結果も大荒れでした。ブラジル産でアメリカでのステークス初勝利を目指すモリバ Moryba が4対1の押し出されるような1番人気。
5番枠から飛び出した伏兵(33対1)エル・コモドーレ El Commodore が逃げ切るかに見えましたが、1番枠スタートから終始経済コースを通ったて中団に待機したローマン・タイガー Roman Tiger が直線でも内ラチ沿いに抜け、写真判定の結果ハナ差で差し切っていました。3着には半馬身差で後方から急襲したスイフト・ウォリオー Swift Warrior (11対1)が突っ込んでいます。勝ったローマン・タイガーは28対1の大穴、4着アリーズ・イヴェント Allie’s Event も10対1の人気薄という波乱。2005年のケンタッキー・ダービー馬バルバロ Barbaro の全弟レンテナー Lentenor が5着。本命モリバは7着敗退でした。
13連敗中だったローマン・タイガーの調教師はデニス・マニング、騎手はエンジェル・セルパ。24戦目にしてG戦初制覇となる7歳せん馬。

最後はサンタ・アニタ競馬場から、7ハロンでのスピード対決が期待されるサン・カルロス・ステークス San Carlos S (GⅡ、4歳上、7ハロン)。
今年は5頭立てながら、去年のチャンピオン・スプリンター、アマゾンビー Amazombie とGⅠ2勝馬のザ・ファクター The Factor との短距離対決に注目が集まりました。人気はザ・ファクターが先行して3対5の1番人気、アマゾンビーが2対1で続きます。
結果は、ロスコ Rothko とのハナ争いを制したザ・ファクターが、そのままスピードで押し切っての逃げ切り勝ち。3番手を追走したアマゾンビーは直線伸びず、置かれた最後方から追い込んだスウェイ・アウェイ Sway Away が勝馬にあわや逆転劇の半馬身差2着に食い込みます。アマゾンビーは1馬身4分の3差離された3着に終わりました。直線最後の1ハロン、ガルシア騎手(ザ・ファクター)の激しい右ムチで寄れた勝馬が4着馬(キャノナイズ Canonize)に騎乗したヴィクター・エスピノザ騎手の進路を妨害したという理由で審議になりましたが、結局は着順通りで確定しています。
ボブ・バファート師が調教、マーチン・ガルシアが騎乗したザ・ファクターは、これがシーズン・デビュー。去年の年末(12月26日)にマリブー・ステークス(GⅠ)を制したのに続き7ハロンのG戦2連勝です。サンタ・アニタの公式記録によると、バファート師は出走させたここ17戦のうち16頭が優勝、11連勝をマークした由。今年59歳の師も、ただ“エキサイティング”とのみ、スタッフの努力を称賛していました。

以上、オークスに向けての2騎、ダービーに向かう新星の登場です。

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