2012桜花賞馬のプロフィール
今年もクラシック・シーズンがやってきました。ここ何年か取り組んできたクラシック馬の血統紹介を始めましょう。その第一弾は、先週の桜花賞を制したジェンティルドンナ。
血統面での最大の話題は、何と言ってもディープインパクト産駒が初年度産駒マルセリーナに続いて2年連続制覇したことでしょう。2着ヴィルシーナ共々ワン・ツー・フィニッシュ、1番人気で6着に終わったジョワドヴィーヴルもディープ産駒でしたね。
また、勝馬はディープインパクトにヨーロッパのGⅠ牝馬を配合して生まれた牝馬、という点でも去年のマルセリーナと共通していました。ここでは例によって牝系にスポットを当てて行きましょう。
さてジェンティルドンナは父ディープインパクト、母ドナブリーニ Donna Blini 、母の父ベルトリーニ Bertolini という血統。この母ドナブリーニがGⅠ馬なのです。
ドンカスターの競りで2万ギニーで取引されたドナブリーニ、現役時代はブライアン・ミーハム師が管理していました。2歳時は4戦3勝。5月にニューマーケットで新馬(5ハロン)勝ち、3週間後にビヴァリー競馬場で行われたニードラー・トロフィー(5ハロン)は若さが出て2着。
ロイヤル・アスコットはパスし、7月のニューマーケット・ジュライ・ミーティングでチェリー・ヒントン・ステークス(GⅡ、6ハロン)を12対1で勝ち、パターン・レース勝馬の仲間入りを果たします。そして2か月半後、2歳最後のレースとしてチーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ、6ハロン)に出走。人気はここでも12対1と低い評価でしたが、クィーン・メアリー・ステークスとラウザー・ステークスに勝った本命のフラッシー・ウィングス Flash Wings を破って優勝します。名手マイケル・キネーンが騎乗していました。
陣営では当初2歳の終わりに手放すべく競売にかける予定でしたが、クラシックに挑戦すべく3歳もミーハム厩舎に留まります。ぶっつけで臨んだ1000ギニーは13頭立てのどん尻に負け(勝馬はスペシオザ Speciosa)、ロイヤル・アスコットではコロネーション・ステークスにも挑戦しましたが15頭立ての13着(勝馬はナンニーナ Nannina)に惨敗。血統的に不安があった1マイル挑戦はこの2回だけにし、あとは5~6ハロンの短距離路線に変更しましたが、勝鞍は7月にニューマーケットの小レース(5ハロン)のみ。
結局3歳時は7戦1勝の成績で、シーズンの終わりに50万ギニーで売却、繁殖牝馬として日本へ送られます。購入価格と売却価格の差、3勝の内G戦2鞍は馬主孝行だったと言って良いでしょう。
オーナーが替り、繁殖に入っても馬主孝行は更に続きます。初産駒がドナウブルー(2008年、鹿毛、牝馬、父ディープインパクト)。未だバリバリの現役である同馬については解説の必要もありますまい。2歳時に白菊賞(京都1600メートル)に勝ち、3歳時は未勝利でしたが4歳の今年は京都牝馬特別(GⅢ、京都1600メートル)に優勝。今後の活躍次第ではGⅠ馬になるチャンスもありそう。姉妹対決が見られるかも。
そして主題のジェンティルドンナは2番仔で、ドナウブルーの全妹に当たります。
話を2代母に移す前に、ジェンティルドンナの母の父であるベルトリーニ(1996年、鹿毛、父ダンジグ Danzig)にも簡単に触れておきましょう。
ベルトリーニは、グリーン・デザート Green Desert の4分の3兄弟で早熟なタイプ。2歳時にジュライ・ステークスに勝ったあと、ロベール・パパン賞とミドル・パーク・ステークスで2着。その後の勝鞍は3歳時のフリー・ハンデキャップ(7ハロン)だけでしたが、ジュライ・カップ、スプリント・カップ、ナンソープ・ステークスと何れも短距離の重賞で入着。あくまでもスピードが主体で、スタミナとは無縁の成績でした。
さて2代母カル・ノーマズ・レディー Car Norma’s Lady (1988年、栗毛、父リファーズ・スペシャル Lyphard’s Special)。この馬の血統もベルトリーニよりは若干スタミナがあった程度。2歳デビューから6ハロンと7ハロンでいきなり3連勝しましたが、その後は勝てず。1マイル半の距離にも挑戦したものの、結局は17戦3勝で現役を終えます。
繁殖牝馬としては並みの成績でしょうか。交配した種馬に一流の馬がいない割には、産駒から8頭の勝馬が出たことは評価して良いと思います。勝馬はドナブリーニの前に6頭、後に1頭。他に名前が残るのは、15戦6勝でられるのはウィル・ロジャース・ハンデ(アメリカGⅢ、1マイル)に勝ったマジカル Magical (1995年、鹿毛、牡馬、父マジック・リング Magic Ring)だけでしょう。
3代母ジューン・ダーリング June Darling (1983年、鹿毛、父ジュニアス Junius)は未出走。早逝したようで、調べた範囲では産駒はカル・ノーマズ・レディーのみでした。
続いて4代母ボー・ダーリング Beau Darling (1966年、栗毛、父ダーリング・ボーイ Daring Boy)は23戦1勝と、これまた競走馬としては地味な成績。繁殖牝馬としてはインドの基礎牝系を築きつつあるサーテンティー Certainty (1972年、鹿毛、父ウェルシュ・セイント Welsh Saint)やオーストラリアでG勝馬の母となったスイフト・オスプレイ Swift Osprey (1975年、栗毛、父オン・ユア・マーク On Your Mark)もありますが、我々の注目は1980年生まれの娘カダーシ Cadasi (黒鹿毛、父パーシャン・ボールド persian Bold)でしょう。
カダーシの娘ボールド・スターレット Bold Starlet (1987年、鹿毛、父プレコシアス Precocius)は、イタリア1000ギニーに勝ったスーア Xua (1997年、鹿毛、父フェアリー・キング Fairy King)を産み、このスーアが日本で繁殖入りして成功します。
日本での産駒は、ゴールドマイン(2004年、鹿毛、せん馬、父ダンスインザダーク)、ソーマジック(2005年、鹿毛、牝馬、父シンボリクリスエス)、サトノエンペラー(2006年、鹿毛、牡馬、父シンボリクリスエス)が活躍。
ゴールドマインは中央と地方で走る未だ現役で、ダートの7ハロンから10ハロンに勝鞍あり。ソーマジックは春菜賞(7ハロン)、アネモネ賞(8ハロン)、立川特別(8ハロン)に勝ち、桜花賞はレジネッタの3着、オークスがトールポピーの8着、秋華賞はブラックエンブレム(岩田康誠)の7着だったことは記憶に新しいところ。またソーマジックの全弟サトノエンペラーは松前特別(13ハロン)、安房特別(12.5ハロン)とスタミナを武器にするタイプ。
ドナブリーニとスーアは4代母が共通、かなり遠い関係とは言え、ドナブリーニのスタミナ特性を考える上ではある種のヒントになるかも知れませんネ。
最後に5代母フェア・アストロノマー Fair Astronomer (1960年、鹿毛、父スター・ゲイザー Star Gazer)にも言及しておきましょう。
この馬はコーンウォリス・ステークスや英国のプリティー・ポリー・ステークスなどに勝った馬で、ボー・ダーリングの他には3頭の娘が繁殖牝馬として成功しています。列記すると、
1965年生まれのフェア・ダーリング Fair Darling の娘アフェール・ダムール Affaire d’Amour は、ム―ジェーン Mourjane とアンカ・ジェルマニア Anka Germania の半兄妹の母となりました。
ム―ジェーンはアーリントン・ハンデ(GⅠ)など仏米でG戦に5勝し、BCターフではペッブルス Pebbles の3着した牡馬。また、アンカ・ジェルマニアはソード・ダンサー・ハンデ(GⅠ)などアメリカのG戦に7勝した名牝です。
1969年生まれのフェアレスト・チャント Fairest Chant からもトレンチャント Trenchant 、フォレスト・フェアー Forest Fair がアメリカのG勝馬となりました。
更に1977年生まれのフェア・アストロロガー Fair Astrologer が、サン・フェリペ・ステークス(GⅠ)に勝ったチャート・ザ・スターズ Chart the Stars の母となっています。
ジェンティルドンナのファミリー・ナンバーは、16-f 。このファミリー(16-f として)から桜花賞に勝ったのは彼女が初めてです。
まとめteみた.【2012桜花賞馬のプロフィール】
今年もクラシック・シーズンがやってきました。ここ何年か取り組んできたクラシック馬の血統紹介を始めましょう。その第一弾は、先週の桜花賞を制したジェンティルドンナ。血統面で…