シーズン初期のクラシック・トライアルから

昨日の日曜日、フランスとアイルランドからパターン・レースの結果が入ってきました。いずれもクラシックに向けたトライアルです。

先ずはロンシャン、very soft という厳しい馬場状態の中、牡牝夫々の前哨戦。牝馬によるグロット賞 Prix de la Grotte (GⅢ、3歳牝、1600メートル)は5頭立て。去年はビューティー・パーラー Beauty Parlour が制し、そのまま仏1000ギニー馬の栄冠を手にしたと言えば思い出されるファンも多いでしょう。
2歳時レゼルヴォアール賞(GⅢ)を含め3戦無敗のタサデイ Tasaday が9対10の断然1番人気に支持され、マルセル・ブーサック賞(GⅠ)2着のトパーズ・ブランシュ Topaze Blanche が2対1の2番人気で続きます。

馬場を考慮してかタサデイが先手を取って逃げに出ますが、4番手、即ち後方2番手を進んだ4番人気(92対10)のケンホープ Kenhope が直線で外から伸び、タサデイを1馬身差し切っての番狂わせ。最後方から外に出して猛追したトパーズ・ブランシュが頭差で3着。
アンリ=アレックス・パンタル厩舎、ティエリー・ジャルネ騎乗のケンホープは、2歳時5戦1勝。2戦目にメゾン=ラフィットで未勝利を脱し、トーマス・ブライアン賞(GⅢ)2着、牝馬ながら牡馬に挑んだクリテリウム・インターナショナル(GⅠ)では5着したあと、フォンテンブロー競馬場のリステッド戦ではどん尻に大敗してシーズンを終了。今期は3月13日にサン=クルーの条件戦に勝って2勝目、使われた強みを活かしての勝利でした。

上位人気の2頭もシーズン初戦の不良馬場という点を考慮すれば、この敗戦は決してマイナスではないでしょう。あくまでも仏1000ギニーが本番なのですから。

続いては牡馬によるフォンテンブロー賞 Prix de Fontainebleau (GⅢ、3歳牡、1600メートル)。去年本命ダバーシム Dabirsim を破って勝ったドラゴン・パレス Dragon Palace は本番では9着と大敗でしたが、仏2000ギニーへの最も重要なトライアルであることは間違いありません。
7対10の1番人気は、2歳時6戦4勝、コンデ賞(GⅢ)とクリテリウム・ド・サン=クルー(GⅠ)の覇者モランディ Morandi 。シーズン末に3連勝したクラシック候補です。既に2000メートルを経験した同馬、むしろ1マイルに短縮された距離への適応が課題でしょうか。

逃げたのは3番人気(7対1)のユーエス・ロウ US Law 、モランディは3番手から抜けようとしましたがやや寄れ、態勢を立て直して追い込むも勝馬に半馬身届かず2着まで。優勝は最後方に待機し、あと2ハロンで外に出し、ゴール寸前で先頭に立った5番人気(113対10)のジェンジス Gengis 。短頭差で逃げたユーエス・ロウが粘り込みました。こちらも人気馬が敗れる波乱です。
観衆をアッと言わせたジェンジスは、大穴を出すことでも有名なヴェテラン調教師ジョルジュ・ドルーズ師。1979年の仏オークスで本命スリー・トロイカス Three Troikas を破ったデュネット Dunette の調教師さんと言えば、思い当たる方もおられるでしょう。鞍上はステファン・パスキエ。
ジェンジスは2歳時は5戦3勝。ドーヴィルで新馬勝ちし、フォンテンブローのリステッド戦優勝でシーズンを終えています。これがシーズン初戦、G戦は初挑戦での快挙です。

グロット賞同様、上位3頭ともシーズン初戦での試走。いずれも仏2000ギニーに向かう旨のコメントが出されました。

最後にロンシャンからもう一つ。第1レースとして行われた3歳新馬戦で優勝したスピリットジム Spiritjim という馬。2着に3馬身半差を付ける楽勝、父がガリレオ Galileo ということで成長が期待される1頭でしょう。密かに期待するクラシック候補。

以上でロンシャンを離れ、アイルランドのレパーズタウン競馬場に向かいます。G戦は2鞍、馬場状態は yielding 所により good の冬ならではの重馬場。

レパーズタウン1000ギニー・トライアル Leopardstown 1000 Guineas Trial S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)は1頭が取り消して8頭立て。何故か去年7月にカラーで新馬勝ちした1勝のみのヒント・オブ・ア・ティント Hint of A Tint が9対4の1番人気に支持されていました。レヴェルの高いメンバーだったこと、馬場が heavy だったことも人気の要因でしょうか。
逃げたのはオブライエン厩舎のペースメーカー、グリーク・ゴッデス Greek Goddess 。5番手を進み、唯1頭馬なりのまま直線に入った5番人気(6対1)のラウァーク Rawaaq が、2番手から抜けた2番人気(4対1)ホワット・スタイル What Style に1馬身4分の1差を付ける楽勝でG戦初制覇を果たしました。首差でオブライエン厩舎の3番人気(9対2)スノー・クィーン Snow Queen が3着。ヒント・オブ・ア・ティントは7着と期待を裏切っています。

デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のラウァークは、2歳時4戦1勝。カラーで新馬勝ちしたあとパーク・ステークス(GⅢ)2着の実績があります。ウェルド師は、小柄な馬ながら根性があるタイプで、良馬場でも行けると自信。愛1000ギニーの前にもう一戦使うとの意向です。

そしてダービーのトライアルでもあるバリーサックス・ステークス Ballysax S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。1頭取り消しの5頭立てで、8対13の1番人気は去年のベレスフォード・ステークス(GⅢ)勝馬バトル・オブ・マレンゴ Battle Of Marengo 。エイダン・オブライエン厩舎期待のクラシック候補です。

5頭がばらけて進むゆったりした流れ、2番人気(7対2)のシュガー・ボーイ Sugar Boy 、3番人気(4対1)アルピニスト Alpinist が入れ替わり先頭を窺う中、4番手に待機した本命デューク・オブ・マレンゴがジョセフ・オブライエンのゴーサインに反応して抜けると、シュガー・ボーイに1馬身4分の3差を付けて快勝。更に1馬身半差で最低人気(20対1)のインペリアル・コンコルド Imperial Concorde が3着に入りました。
管理するオブライエン師にとってはこのレース7勝目。過去の勝馬では2001年のガリレオ Galileo と2002年のハイ・シャパラル High Chaparral がダービーを制したほか、ゴールド・カップ優勝のイェーツ Yeats 、フェイム・アンド・グローリー Fame And Glory も輩出したトライアルです。

これで4連勝となるバトル・オブ・マレンゴは、去年レパーズタウン競馬場で鞍ヅレを起こしながらもコースレコードを更新した馬。今回もGⅡ勝のペナルティー5ポンドを背負いながらの楽勝で、着差以上の内容でしょう。ダービーへのオッズは8対1から10対1が提示されていますが、現時点ではお買い得かも。
オブライエン師によれば、ダービー前にもう一戦トライアルを使うとのこと。

エイダン/ジョセフのオブライエン父子、この日もバトル・オブ・マレンゴの他にリステッド戦をデクラレーション・オブ・ウォー Declaration Of War で、最終レースのハンデ戦をジャスティフィケーション Justification で制し、ハットトリックを完成させています。

もう一鞍、この日はレパーズタウン2000ギニー・トライアル・ステークス(3歳、1マイル)も行われましたが、去年までのGⅢから今年はリステッドに降格されています。
簡単に結果だけ紹介しておくと、9頭立て。7対4の1番人気はチーム・オブライエンのザ・ユナイテッド・ステーツ The United States という1戦1勝馬に集まりましたが、6着敗退。優勝は4番人気(7対1)のフォート・ノックス Fort Knox でした。1馬身4分の3差でドント・ボーサー・ミー Dont Bother Me が2着、半馬身差でハイ・オクタン High Octane が3着。
これで3戦2勝となるフォート・ノックスは、2歳時はリチャード・ハノン厩舎に所属してニューバリーで1勝した馬。今年からはアイルランドのトミー・カーモディー厩舎に転じ、ジョニー・ムルタが騎乗していました。

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