嵐に見舞われたケンタッキー・オークス

この週末、全米競馬ファンの眼はケンタッキー州ルイヴィルに釘付けです。チャーチル・ダウンズ競馬場で金曜日にはケンタッキー・オークスが、そして土曜日にはアメリカ最大の競馬であるケンタッキー・ダービーが行われるからですね。
昨日の金曜日、5月4日のG戦はチャーチル・ダウンズの5鞍のみ。レース順にレポートして行きますが、4つ目のGが始まる前に嵐の接近が報じられ、コースの内側で観戦していたファンには避難勧告が出されました。
ということでメインのケンタッキー・オークスも発走時間が大幅に遅れる見込み。気象台の予報では雨風は短時間だそうで、レースが中止になることはなさそうですが・・・。

先ずは平穏無事に行われた第6レースのラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)から。この時点でダート・コースの馬場状態は fast 、7頭が出走してきました。
断然の1番人気(2対5)に支持されたのは、去年のケンタッキー・オークス馬プラム・プリティー Plum Pretty 、今年もアップル・ブロッソム・ハンデ(GⅠ)に勝って順調。1年前を思い出してここは負けられない一戦です。オークス2着のライヴァル、セント・ジョンズ・リヴァー St. John’s River も逆転を掛けて2番人気(6対1)を集めていました。
しかしレースは波乱。プラム・プリティーはいつものようにスタートから先頭に立って快調に飛ばしていましたが、2番手でマークしていた伏兵(16対1、5番人気)フアニータ Juanita に第4コーナーで外から並び掛けられるとまさかの失速。結局はフアニータの差し足に屈し、セント・ジョンズ・リヴァーにも追い込まれて3着に沈んでしまいました。フアニータとセント・ジョンズ・リヴァーの着差は2馬身、更に本命馬とは1馬身の差が付いていました。
マイケル・メイカー厩舎、ラモン・ロドリゲス騎乗のフアニータは、去秋のインディアナ・オークス(GⅡ)を制した馬。今年3月17日にフェア・グラウンズの一般ステークスで、去年の年度代表馬アーヴル・ド・グラース Havre de Grace (既に引退)の2着していたばかり。これが2つ目のG戦勝利となりました。

続い第7レースのエイト・ベルズ・ステークス Eight Belles S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。牝馬ながら2008年のケンタッキー・ダービーに挑戦して2着、直後に故障して悲劇のヒロインとなったエイト・ベルズを記念したレースですね。オークスは距離が長過ぎるというスプリント牝馬の舞台。
8頭が出走、ここは11対10の1番人気・コンテスティッド Contested が見事期待に応えています。逃げるグッド・ディード Good Deed の2番手に付け、第4コーナーで外から並び掛けると後は独走。2着に粘るグッド・ディードに4馬身4分の3差を付けていました。3着は更に6馬身4分の1の大差が付いてオールウェイズ・ヒア・トゥー Always Here Too 。勝時計の1分21秒29はステークス・レコードというオマケ付きです。
マーチン・ガルシア騎乗、調教師はボブ・バファート師ですが、同馬のオーナーは師の夫人であるジル・バファートさん。師にとってこのレース2勝目となります。昨夏デル・マーのデビュー戦は2着でしたが、そのあとサンタ・アニタで連勝し、今回はステークス初挑戦での初勝利。これで通算4戦3勝となりました。

G3戦目はアリシェバ・ステークス Alysheba S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。2頭が取り消して8頭立て。去年のケンタッキー・ダービー3着のムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man が8対5の1番人気、今シーズンG戦に2連勝中のネイツ・マインシャフト Nates Mineshaft が2対1の2番人気で続きます。
レースはプルトニウム Plutonium の逃げにネイツ・マインシャフトが絡む速い流れ。ムチョ・マチョ・マンも4番手から早目に仕掛けましたが、ハイペースが堪えたか後方3番手を進んだ3番人気(4対1)のサクセスフル・ダン Succesful Dan の大外を通る差し足に屈してしまいました。1馬身差2着にも4番人気(5対1)のフォート・ラーンド Fort Larned が入り、漸く6馬身離された3着にムチョ・マチョ・マン。ネイツ・マインシャフトは6着に沈んでしまいます。このレースも1分41秒04のコース・レコード、ペースが速かった証左でもありましょう。
チャールズ・ロプレスティ―師が管理、ジュリアン・ルパルーが騎乗したサクセスフル・ダンは、チャーチル・ダウンズを得意とする馬。このダート・コースは3戦して2勝、一度ある3着もクラーク・ハンデ(GⅠ)を先頭でゴールインしたものの進路妨害により降着なった時のもの。去年は故障のために全休しましたが、一昨年はファイエット・ハンデ(GⅡ)も制しており、今年はアローワンスからクレーミングと連勝して臨んでいました。

そして冒頭に紹介した嵐がチャーチル・ダウンズを襲います。ブラッド・ホース電子版にはその様子がハイビジョン・ビデオで紹介されていました。なんだか皆、雨を楽しんでいるみたい。現地時間5時45分発送予定のケンタッキー・オークスは、6時20分にずれたようですね。

50分遅れでスタートした第10レースのアメリカン・ターフ・ステークス American Turf S (芝GⅡ、3歳、8.5ハロン)、幸いにも嵐は短時間で止み、芝コースも firm の状態を保ったまま無事にスタートが切られました。制限枠をオーバーした1頭の他に取り消した馬が1頭で、13頭立て。
ブルー・グラス・ステークス(GⅠ)3着のガング・ホー Gung Ho が7対2の1番人気に支持されていましたが、同5着でハットトリック Hat Trick 産駒のハウ・グレート Howe Great も差無く4対1の2番人気で続きます。
しかし勝ったのは3番人気(5対1)のシルヴァー・マックス Silver Max 。スタートから先手を取り、そのまま2着トラヴェル・アドヴァイズリー Travel Advisory に2馬身4分の3差を付ける楽勝です。スタートで外に寄れやや出遅れたハウ・グレートが4分の3馬身差3着。本命ガング・ホーは不発の7着に終わりました。直線に入って直ぐにスター・チャンネルが落馬、審議になりましたが、後方のアクシデントで結果には関係なく着順通りで確定しています。騎乗していたハヴィエル・カステラノ騎手はオークスで本命馬に騎乗する予定、救急車で運ばれてファンを心配させましたが、幸い軽症で済んだようです。
シルヴァー・マックスを管理するデール・ロマンス師にとってはこれがアメリカン・ターフ3勝目。また当初はロビー・アルバラード騎手が乗る予定でしたが、同騎手がプライヴェートな事件で逮捕されるという意外な展開になり、ラファエル・ベハラノ騎手に乗り替わっていたという椿事も。シルヴァー・マックスはこれで3連勝、前走トランシルヴァニア・ステークス(芝GⅢ)でG戦初勝利を飾っていた馬です。

そして愈々第138回ケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)、ダービーが Run for the roses と呼ばれるのに対し、こちらは Run for the lilies 。予定の5時45分スタートは、45分遅れの6時20分にゲートが開きました。馬場は画面で見る限り所々水溜りが出来ているようでしたが、発表は fast のまま。予定通りフル・ゲートの14頭立てとなり、獲得G賞金が及ばなかったオークス・リリー Oaks Lily が皮肉にも除外になっています。
1番人気(5対2)はガルフストリーム・パーク・オークス(GⅠ)を制したグレース・ホール Grace Hall 、前のレースで落馬したカステラノ騎手も無事に手綱を取ることが出来ました。2番人気は2頭が並び、ハネービー・ステークス(GⅢ)の覇者オン・ファイア・ベビー On Fire Baby と、フォワード・ギャル・ステークス(GⅡ)とカムリー・ステークス(GⅢ)の勝馬ブロードウェイズ・アリバイ Broadway’s Alibi が4対1で続きます。有力馬のほとんどが内枠を引いていました。
レースはブロードウェイズ・アリバイの逃げを、並んだ5番人気(13対1)のビリーヴ・ユー・キャン Believe You Can が2番手でマークする展開。直線に入っても先行2頭の脚色は衰えず、直線半ばでは後続を引き離しての一騎打ち。結局は追走したビリーヴ・ユー・キャンが4分の3馬身ブロードウェイズ・アリバイを抑えて栄冠を勝ち取りました。本命グレース・ホールも直線で追い上げましたが、やや外に寄れるシーンもあって2馬身半差の3着。以下並んだ3番人気(6対1)のサマー・アプローズ Summer Applause 4着、オン・ファイア・ベビーが5着。最終的には有力馬が上位を占める順当な結果だったと言えましょう。
ビリーヴ・ユー・キャンはラリー・ジョーンズ師の管理馬、師にとっては2008年のプラウド・スペル Proud Spell に次ぐ2度目のオークス制覇。一方、騎乗したロージー・ナプラヴニクはご存知のように女性騎手。ケンタッキー・オークスを制した最初の女流騎手の名誉を手にしました。彼女は去年は惜しくも2着(セント・ジョンズ・リヴァー)、GⅠ勝利も彼女にとって初めてだけに、思わず叫んでしまったとか。未だ興奮冷めやらず、泣くのはもう少し時間が経ってからになりそう。
2歳時にベルモント競馬場でテンプテッド・ステークス(GⅢ)に勝ったビリーヴ・ユー・キャン、3歳の今シーズンはフェア・グラウンズで過ごし、1月に一般ステークスに勝ち、レーチェル・アレクサンドラ(GⅢ)が4着、前走フェア・グラウンズ・オークス(GⅡ)を制しての挑戦でした。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【嵐に見舞われたケンタッキー・オークス】

    この週末、全米競馬ファンの眼はケンタッキー州ルイヴィルに釘付けです。チャーチル・ダウンズ競馬場で金曜日にはケンタッキー・オークスが、そして土曜日にはアメリカ最大の競馬で…

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