アイル・ハヴ・アナザー、二冠達成!!

速報は呟きましたので、ここでは土曜日のG戦をゆっくりレポートして行きましょう。昨日G戦が組まれていたのは3場ですが、先ずはピムリコ競馬場から。

クラシック当日のピムリコはステークスが8鞍、内5レースがG戦でした。レース順に取り上げていくと、
最初は第3レースのギャロレット・ハンデキャップ Gallorette H (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。firm の芝コースに7頭が出走してきました。この日はコースの内側が観客に解放され、競馬場の雰囲気はチョッとエプサム競馬場を連想させますね。中々グッドですワ。
フランスでGⅢに勝ち、昨夏のサラトガでダイアナ・ステークス(芝GⅠ)を制したザゴラ Zagora がトップ・ハンデの121ポンドを背負いながらもイーヴンの1番人気、レースでも見事期待に応えて快勝しています。
ザゴラはスタートで出遅れるも鞍上ハヴィエル・カステラノは慌てず内ラチ沿いをキープ、徐々に順位を上げ、直線でもうまく開いたインを通って鋭く伸び、逃げたスピーク・イージー・ギャル Speak Easy Gal を1馬身4分の3差し切って優勝。3着には4分の3馬身で2番手追走のラーフィング Laughing が流れ込みました。
チャド・ブラウン師が調教するザゴラは、これで今シーズン4戦3勝。2月にタンパ・ベイでエンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)、3月にはヒルスボロー・ステークス(芝GⅢ)と連勝し、前走キーンランドのジョニー・ワイリー・ステークス(芝GⅠ)では5着に終わっていました。

続いては第8レースに組まれていたメリーランド・スプリント・ハンデキャップ Maryland Sprint H (GⅢ、3歳上、6ハロン)。こちらはメインコースで、馬場状態は fast 。3頭取り消して7頭立てで行われ、ここも1番人気(5対2)のハメイジング・デスティニー Hamzaing Destiny が期待に応えました。
インモータル・アイズ Immortal Eyes の逃げを3番手でマーク、直線入口で先行する2頭を捉えると、差の無い2番人気バンドボックス Bandbox を1馬身半差抑えての優勝。更に1馬身4分の3差でアクション・アンディ― Action Andy が3着。
連敗を11で止めたハメイジング・ディスティニーはウェイン・ルーカス師にとって久しぶりのG戦勝利、コーリー・ナカタニが騎乗していました。同馬はG戦初勝利ですが、2010年のBCスプリントでは2着に食い込んだスピードの持ち主でもあります。

G戦の三つ目は、第10レースのアレール・デュポン・ディスタッフ・ステークス Allaire duPont Distaff S (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。1頭取り消して8頭立て。これまた1番人気(7対5)オウサムムンド Awesomemundo が期待通りの走りを見せての優勝です。
スタートで出遅れたオウサムムンドでしたが、マイク・スミス騎手はジックリ最後方から徐々に進出、直線では馬4頭分の大外を衝いて早目先頭のラヴ・アンド・プライド Love and Pride に並び掛け、やや内に切れ込みながらも頭差で差し切りました。3着は4馬身半の大差が付いてキャッチ・ア・ジーフ Catch a Thief 。ラヴ・アンド・プライド騎乗したジョン・ヴェラスケス騎手が異議を申し立てましたが、審判により却下されています。
オウサムムンドはこれがステークス・デビューでしたが、見事にデビュー戦での初勝利。調教するボブ・バファート師の夫人・ジルが所有している馬で、言わばファミリー・ヴィクトリーでもあります。

続いてはプリークネス・ステークスの前に行われることが伝統になっているディクシー・ステークス Dixie S (芝GⅡ、3歳上、9ハロン)。11頭が出走してきました。このレースを二度制覇しているグレアム・モーション厩舎のスマート・ビッド Smart Bid が1番人気(7対2)に支持されていました。
レースはストレート・ストーリー Straight Story が逃げましたが、終始3~4番手の内ラチ沿いの経済コースを走った2番人気(3対1)のハドソン・スティール Hudson Steele が抜け出し、伏兵(16対1)ハンブル・アンド・ハングリー Humble and Hungry に2馬身半差を付けて快勝。3着は更に半馬身で英国産のフォルテ・デイ・マルミ Forte Dei Marmi 。人気のスマート・ビッドは5着敗退です。
トッド・プレッチャー師が管理、ハヴィエル・カステラノが騎乗したハドソン・スティールは、先月ピムリコの芝コースで行われた一般ステークス(ヘンリー・S.クラーク・ステークス)に勝った馬。思えば出走馬中、ピムリコの芝コースで勝利した経験のある唯一の馬でした。

そして愈々プリークネス・ステークス Preakness S (GⅠ、3歳、9.5ハロン)。出走馬はダービーより遥かに少なく11頭。アメリカ三冠はどうしてもスケジュール的にきついので、ここをパスしてベルモントで捲土重来という馬もいます。今年の例では、ダービー3着のデューラハン Dullahan 、7着に終わったユニオン・ラグス Union Rags がその組。ダービー上位入線したメンバーからは、1・2・4・5着が夫々駒を進めてきました。
1番人気に支持されたのは、驚異的なペースで逃げながらも直線僅かに(1馬身半)交わされたボウディマイスター Bodemeister の2対1。距離がやや短いこと、小回りコース、出走頭数が少なくなることなどから、今回は先行有利、逃げ切れるだろうという期待感です。
ダービー馬アイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another は当然ながらクラシック馬に敬意を表しての2番人気(3対1)。勝てば二冠だけに、心情的にはここも勝って三冠にチャレンジして欲しいもの。
レースは予想通りの展開。7番枠スタートのボウディマイスターが果敢に先頭に立ちます。鞍上マイク・スミスも、ダービーほどのハイペースは取りません。ダービー5着のクリエイティヴ・コース Creative Caise (6対1)が2番手に付け、アイル・ハヴ・アナザーもコースを意識して早目4番手の位置。
直線はダービーの再現。直線入口で3馬身ほど後続を引き離したボウディマイスターがゴールに向けてスパートしますが、ダービーに続いてマリオ・グティエレス騎乗のアイル・ハヴ・アナザーが徐々に差を詰めていきます。直線コースの長さ一杯を使ってのスリリングな追い込みが、最後は首差届いたところがゴール。3着は8馬身4分の3もの大差が付いてクリエイティヴ・コースの順。以下、ゼターホーム Zetterholm が4着、ティース・オブ・ザ・ドック Teeth of the Dog 5着。ダービー4着のウエント・ザ・デイ・ウェル Went the Day Well は10着に終わりました。
結局は南カリフォルニアを本拠とする馬のワン・ツー・スリー、今年のクラシックは西高東低と言えましょうか。ダービーに続いてプリークネスも初制覇したダグ・オネイル師、勝馬のここまでの経歴などはダービーで詳しく紹介済。6月9日のベルモント・ステークスで三冠に挑戦しますが、三冠の期待がかかるのは2008年のビッグ・ブラウン Big Brown 以来。達成すれば1978年のアファームド Affirmed 以来のこととなります。思えばアファームドにはアリダー Alydar という好敵手がいました。今年のアイル・ハヴ・アナザーに対するボウディマイスターのように。

続いてピムリコ競馬場以外のG戦を簡単に。

最初はアーリントン・パーク競馬場で行われたハンシン・カップ・ステークス Hanshin Cup S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。馬場は fast 、1頭取り消して9頭立ての競馬です。
スタートはどの馬も先に行きたがらず、一団で様子を見るアメリカでは珍しい展開。先頭はタップタウン Taptowne とローンサム・ストリート Lonesome Street が入れ替わり立ち代わり状態。ゴールも3頭が並ぶ混戦でしたが、首差で勝ったのは、スタートは先頭ながら一旦最後方まで下げ、馬4頭分の外から追い込んだハヴロック Havelock 、2着ローンサム・ストリートと3着スコータス Scotus との着差も首でした。
勝ったハヴロックはダリン・ミラー厩舎、フローレント・ジェルー騎乗の5歳せん馬で、去年の阪神カップは3着でした。去年は同じアーリントンのアーリントン・スプリント・ハンデにも勝っており、このコースを得意にしていると言えるでしょう。

続いてはハリウッド・パーク競馬場から2鞍。先ずはクラシック世代牝馬のレイルバード・ステークス Railbird S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。こちらも fast の馬場。当初登録は僅かに5頭でしたが、2頭を予定していたジェリー・ホーレンドルファー厩舎がGⅠ馬のキラー・グレース Killer Grace を取り消し、4頭立ての寂しいレースになってしまいました。
1対20という馬鹿馬鹿しいほどの1番人気に支持されたのは、ここまで3戦して二度の逃げ切り圧勝を演じたシスター・ムーン Sister Moon 。そのシスター・ムーンが逃げ、先頭のまま直線に入りましたが、内から2番人気(10対1)のヴィア・ヴィラッジョ Via Villaggio が、外から3番人気(11対1)の英国産馬ディジャーヴォ Dijarvo が並び掛け、3頭の叩き合い。結局はインを衝いたヴィア・ヴィラッジョがシスター・ムーンを半馬身差捉えての優勝。ディジャーヴォは4馬身半離された3着。
2頭を登録していたジェリー・ホーレンドルファー師が管理、マーチン・ペドローザが騎乗したヴィア・ヴィラッジョは、5月5日のセニョリータ・ステークス(芝GⅢ)で5着していた馬、今回はオール・ウェザーにコースを変えてのステークス初勝利です。

最後にマージョリー・L.エヴェット・ハンデキャップ Marjorie L. Evette H (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。何やら聞き慣れないレース名ですが、去年まではミレディー・ハンデ Milady H として行われていたレース。今年3月に亡くなった元ハリウッド競馬場のチェアマン(ウーマン)だったエヴェット女史を偲んで改名されたもの。レースの条件等はミレディー時代と全く同じです。
1頭が取り消して6頭立て。6対5の1番人気に支持されたのは、今年3月に泥んこ馬場のサンタ・マルガリータ・ステークス(GⅠ)を制したインクルード・ミー・アウト Include Me Out 。それに先立つラ・キャニャーダ・ステークスに続きG戦連勝中と絶好調です。
スタートで3番枠のラヴ・ザウエイ・ユーアー Love Theway Youare のキノネズ騎手がいきなり落馬、事実上5頭立てのレースになってしまいます。2番人気(2対1)エラフィッツ Ellafitz の逃げを2番手でマークしたインクルード・ミー・アウトが直線で危なげなく抜け出してエラフィッツを4分の3馬身捉え、見事期待に応えてのG戦3連勝です。3着は1馬身半差で英国差のケアリス Caelis 。スタートの落馬について審議が行われましたが、直ぐに他馬とは関係ないアクシデントということで入線通りで確定しました。
勝利調教師はロナルド・エリス、師にとって4度目のミレディーです。騎乗していたのはジョセフ・タラモ。タラモ騎手は去年のミレディーで1着入線も進路妨害で降着の苦い経験もあり、今回はその雪辱を果たす結果でもありました。このレース、タラモ騎手にとっては2007年のナショバズ・キー Nashoba’s Key に続く二度目。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【アイル・ハヴ・アナザー、二冠達成!!】

    速報は呟きましたので、ここでは土曜日のG戦をゆっくりレポートして行きましょう。昨日G戦が組まれていたのは3場ですが、先ずはピムリコ競馬場から。クラシック当日のピムリコは…

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