乱戦の仏ダービー

土曜のエプサムに続いて、日曜日はシャンティーのダービーが行われました。ジョッケ=クラブ賞 Prix Jockey Club (GⅠ、3歳、2100メートル)。馬場は good to soft 。
英ダービーが9頭と小頭数だったの対し、こちらはフル・ゲートの20頭立て。レース前から混戦が予想されます。

その中から最終的に1番人気に指示されたのは、ニューマーケットの2000ギニーで2冠馬キャメロット Camelot の2着したフレンチ・フィフティーン French Fifteen 。しかし1番人気といってもオッズは5対1、抜けた存在ではないことがこれを見ても判るでしょう。
あとはギッシュ賞に勝って2連勝、これまで連を外していない堅実なサン・ボードリーノ Saint Baudolino が11対2で2番人気、前日エプサムを席巻したオブライエン父子が英仏ダービー・ダブルを狙うインペリアル・モナーク Imperial Monarch が3番人気(63対10)、サンダウンのトライアルを勝った馬ですね。
これに続くのはグレフュール賞を制して4戦無敗のケサンプール Kasampour (13対2、4番人気)。アガ・カーンの所有馬ですが、グレフュールの内容には評価が分かれていて、通常ならこの成績で1番人気にならないのが不思議。今年のフランス3歳牡馬のレヴェルを象徴するような人気だったと言えなくもありませんな。
さすがに20頭となると枠順の有利不利は否めず、レース中のゴチャ付が結果に大きく左右することは避けられそうにありません。

先手を取ったのは8番枠スタートのティフォンゴ Tifongo 。これを1番枠スタートのヌテロ Nutello とアガ・カーンのペースメーカーを務めるリュナイール Lunayir が追走。一方スタートで出遅れたのはメンディザバル騎乗のヒドゥン・フレーム Hidden Flame 、本命フレンチ・フィフティーン、オブライエンのインペリアル・モナーク共々後方で待機。
直線、ティフォンゴを交わしてアマロン Amaron が先頭、リュナイールが続きます。後方に控えていたサオノア Saonois が馬群を縫うように進出し、どの馬にもチャンスがある展開。
残り200メートルではケサンプール、ヌテロ、サン・ボードリーノの争いと思われましたが、間隙を衝いて抜け出したのが33対1の伏兵サオノア。混戦を4分の3馬身抜けての逆転劇でした。2着争いは3頭が横一線、写真判定の結果、2着サン・ボードリーノ、頭差3着ヌテロ、ハナ差4着ケサンプール、1馬身4分の1差でオカール賞勝馬トップ・トリップ Top Trip が5着という結果。
人気上位組では、本命フレンチ・フィフティーンが10着。3番人気のインペリアル・モナークは直線で前が塞がり、ジョセフ・オブライエンが馬を最後方まで下げる大きな不利があって8着。その他の有力馬では、ダンテ・ステークス2着のエクティハーム Ektihaam 15着、デューハースト・ステークス3着のモースト・インプルーヴド Most Improved 14着、仏2000ギニー4着馬アマロン17着、グラン・クリテリウム2着のソーファスト Sofast 13着、ノアイユ賞勝馬ハード・ドリーム Hard Dream 7着。
一応直線のゴチャゴチャが審議になりましたが、最終的には着順通りで確定しています。

勝ったサオノアは、4月8日にラ・フォース賞(GⅢ)に勝ち、5月5日のグレフュール賞は4着だった馬。不良馬場のグレフュール賞は4着ながら勝ったケサンプールとは4分の3馬身差で、展開の綾での敗北でしょう。これを含めて7戦4勝という成績は、勝たれて見れば人気の盲点だったと言わざるを得ません。
同馬を管理するジャン=ピエール・ゴーヴァン師は、ラ・フォース賞の際に詳しく紹介したように、リヨンを根拠とする小厩舎。アマチュアからプロに転向したばかりという勝利騎手アントワーヌ・アムランにとっても、クラシックは初制覇の大金星でした。
サオノアの父は、今春日本で亡くなったチチカステナンゴ Chichicastenango 。2008年のヴィジョン・デ・タ Vision d’Etat に続く2頭目の仏ダービー馬です。更に去年の2着馬(勝馬はリライアブル・マン Reliable Man)バブル・シック Bubble Chic もチチカステナンゴ産駒、仏ダービーの距離が短縮されて(2005年以降)からでは最も成功した種馬となりました。
当初チチカステナンゴは余り人気が無く、2年目の産駒は僅か28頭。その中からヴィジョン・デ・タが出現したわけで、仏競馬サークルでは日本への輸出と、その余りにも早い死が悔やまれています。

さて、仏ダービー当日は他に4鞍のG戦が組まれていました。ダービー前の2鞍、終了後の2鞍を続けてレポートしましょう。但し余り詳しい記事は入っていませんので、大雑把な結果のみとなります。

最初は3歳牝馬のクラシック距離戦、ロヨーモン賞 Prix Royaumont (GⅢ、3歳牝、2400メートル)。7頭立て。
未だ余り実績の無いメンバーで、アガ・カーンのマンディスターナ Mandistana が2対1の1番人気に支持されましたが、直線一旦先頭も3着敗退。優勝は3番手から抜けた26対5のセディシオサ Sediciosa 。1馬身4分の1差2着にイエロー・アンド・グリーン Yellow And Green が入り、更に1馬身半差でマンディスターナ。

Y.バルべロ厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗のセディシオサは、今期になってデビューし、ここまで3戦2勝の馬。前走リステッド戦が2着で、もちろんG戦は初挑戦での初勝利。凱旋門賞でディープインパクトを破ったレール・リンク Rail Link の初年度産駒の1頭です。

続いて3歳牝馬の1マイル戦、残念仏1000ギニー的性格のサンドリンガム賞 Prix Sandringham (GⅡ、3歳牝、1600メートル)。9頭立て。
仏1000ギニー3着のトピカ Topeka が5対2の1番人気に支持されていましたが、7着と期待を裏切りました。優勝は108対10のラフ・アウト・ラウド Laugh Out Loud の逃げ切り勝ち。2馬身差2着は英1000ギニー12着のマシューラ Mashoora 、更に2馬身でロック・ミー・ベビー Rock Me Baby が3着。

勝馬はイギリスのミック・シャノン師が遠征した馬で、ウイリアム・ビュイック騎乗。英1000ギニーは8着でしたが、前走ヨークのリステッド戦(1マイル)に続く連勝です。

ダービー後に行われたシャンティー大賞典 Grand Prix de Chantilly (GⅡ、4歳上、2400メートル)は、エプサムで言えばコロネーション・カップに相当するようなレース。5頭立て。
去年暮れに香港ヴァーズを制し、今期初戦のジョッキー・クラブ・ステークスで3着したデュナデン Dunaden がイーヴンの断然1番人気に支持されましたが、ここでも本命馬は期待に応えられず3着敗退。優勝はこれまた逃げ切りのアイケン Aiken (13対5、2番人気)でした。4分の3馬身差でマクシオス Maxios が2着、更に2馬身半で本命デュナデンの順。

これまた英国から遠征のアイケンはジョン・ゴスデン厩舎。鞍上ウイリアム・ビュイックは、サンドリンガム賞に続きパターン・ダブル達成。今期はエプサム春開催のメトロポリタン・ハンデ、アスコットのリステッド戦と連勝、去年の夏から通算で6連勝と急成長してきた4歳馬です。今日のように馬場が柔らかい時に力を発揮するタイプとのこと。

最後は短距離のグロ=シェーヌ賞 Prix Gros-Chene (GⅡ、3歳上、1000メートル)。11頭立て。
この日のG戦5レース、最後で漸く本命馬が期待に応えました。去年のこのレースを制したウィズ・キッド Wizz Kid が23対10の1番人気に支持され、後方待機から前が塞がる場面を克服しての差し切り勝ち。2着は1馬身4分の3差でステッパー・ポイント Stepper Point 、更に半馬身差でハミッシュ・マッゴナゴール Hamish McGonagall が3着。

ロベール・コレ厩舎、ジェラール・モッセ騎乗のウィズ・キッドは、これで10戦3勝の4歳牝馬。勝鞍はドーヴィルのリステッド戦とグロ=シェーヌ2回のみですが、短距離のパターン戦の常連。フランス短距離界のスターとして、今期も英仏を股にかけての活躍が期待できそうです。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【乱戦の仏ダービー】

    土曜のエプサムに続いて、日曜日はシャンティーのダービーが行われました。ジョッケ=クラブ賞 Prix Jockey Club (GⅠ、3歳、2100メートル)。馬場は good to soft 。英ダービーが9頭と

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