ムーア騎手、仏ダービー初制覇

昨日はダービーに沸いた東京競馬場でしたが、フランスのシャンティー競馬場でもダービーが行われています。正式なタイトルはジョッケ=クラブ賞 Prix du Jockey Club (GⅠ、3歳牡牝、2100メートル)。
この日はG戦5鞍の豪華版、仏ダービーは三つのG戦として組まれていましたが、今回は最初にダービーからレポートして行きましょう。

馬場は good 。16頭が出走し、その枠順は既に紹介してあります。仏2000ギニーの1・2着馬が不利とされる大外を引いたことに加え、距離適性にも不安があって2対1の1番人気に支持されたのは、ダービー・トライアルのグレフュール賞に勝ったプリンス・ジブラルタール Prince Gibraltar 。
2番人気(5対1)は前走3戦目で初勝利を挙げたばかりのシャムキール Shamkiyr 、その勝利が2着に8馬身差を付けた圧勝だったこととオーナーがアガ・カーンであることが人気の要因でしょう。仏2000ギニー勝馬カラコンティー Karakontie は68対10の3番人気に甘んじていました。

2005年にフランスの競馬体系が大幅に見直されてから今年は10年目の節目の年、仏ダービーが伝統的に行われてきた2400メートルから300メートルも短縮されたことは英国馬には有利と考えられてきました。しかし現実は最初の2005年にゴドルフィンのシャマーダル Shamardal (デットーリ騎乗)が勝って以来、8年連続でフランス調教馬が制してきました。これも見どころの一つ。

レースは積極的に先行する馬がいない中、押し出されるようにミスター・ポムロイ Mr Pommeroy が先行。有力馬は中団から後方に待機します。直線、多くの馬が包まれるのを嫌って外に回る中、前半はジッと後方のインコースで我慢していた7番人気(189対10)のザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby が巧みに馬群を縫いながら間隙を突くと、一気に末脚を爆発させて外を回ったシャムキールに3馬身差を付ける完勝。
人気のプリンス・ジブラルタールも、前半は勝馬と同じような競馬をしながら外を回ったため追い込むも届かず、短首差の3着に終わりました。以下、ドイツから遠征した伏兵(72対1)ワイルド・チーフ Wild Chief 4着、ここまで3戦無敗の上がり馬で5番人気(9対1)のゴンナ・ラン Gonna Run が5着。仏2000組のカラコンティーは好位の外に付けながら伸びず8着、2着のプレスティージ・ヴァンドーム Prestige Vendome も10着敗退。枠順と言うより純粋にステイ出来なかったのが敗因でしょうか。

勝ったザ・グレイ・ギャッツビーは、改めて紹介するまでもなく英国のケヴィン・ライアン厩舎、ライアン・ムーア騎乗。ライアン師はクラシックそのものが初制覇で、ムーア騎手も仏ダービーは初勝利。英国馬の優勝は2005年以来で、勝ちタイムの2分5秒58は2100メートルに変わってからのダービー・レコードでした。
レース前は入れ込みが激しかったザ・グレイ・ギャッツビー、この時点で好走は無いと心配されていましたが、そこは名手ムーア、内で我慢して馬を宥め、僅かな隙を抜けるテクニックは名手の証。真の名人は内から抜けるという格言を実証して見せました。
同馬は今期、クレイヴァン2着から2000ギニーに挑戦して10着敗退。ヨークのダンテ・ステークスを制して仏ダービーに照準を合わせてきたもの。ダンテは本命のトゥルー・ストーリー True Story が3着に敗れたこともあって評価が低かったのですが、仏ダービーの結果を見て見直しが急。2着だったアロッド Arod 、3着のトゥルー・ストーリーは共に今週のダービーに参戦予定で、夫々のオッズも16対1、12対1と評価を上げています。

このあとザ・グレイ・ギャッツビーは、小休養を経てジャドモント・インターナショナルに向かう路線が有力。1マイル半のスタミナについてムーア騎手は楽観しているとのこと。凱旋門賞には登録がありませんが、追加登録を検討する価値は充分にあるという見解でした。
一方3着に敗れたプリンス・ジブラルタール、距離には問題なく、当然ながらパリ大賞典を目指すことになりましょう。

さてこれに続いてはダービー・デイのG戦4鞍、レース順に取り上げます。
最初はロヨーモン賞 Prix de Royaumont (GⅢ、3歳牝、2400メートル)。来週の仏オークス・トライアルではなく、寧ろ秋のヴェルメイユ賞から凱旋門賞へという馬たちのレースでしょう。6頭が出走してきましたが、内3頭はアンドレ・ファーブル厩舎の馬たちというメンバーです。イーヴンの1番人気は、ジャドモントのデリヴェリー Delivery 。前走2戦目でサン=クルーの未勝利戦に勝ったばかりの若馬です。

しかし結果は4番人気(134対10)サヴァンヌ Savanne がスローペースに落としての逃げ切り勝ち。2着は1馬身4分の1差で2番人気(9対5)のボール・ダンシング Ball Dancing が入り、更に1馬身4分の3差で3番人気(4対1)のザルシャナ Zarshana が3着。デリヴェリーは4着敗退。
勝ったサヴァンヌはやはりアンドレ・ファーブル厩舎で、ピエール=シャルル・ブードー騎乗。前走2戦目、シーズン・デビューでシャンティーの条件戦(2200メートル)を勝ったばかり。これから秋に向けて本格化して行くタイプでしょう。ファーブル師はこのレース、何と11勝目となります。

次はサンドリンガム賞 Prix de Sandringham (GⅡ、3歳牝、1600メートル)。仏1000ギニーから間隔も良く、勝てなかった馬、間に合わなかった馬の再戦とも言うべき一戦。8頭が出走し、仏1000ギニー2着のヴェダ Veda が4対5の断然1番人気。

もちろんヴェダはアガ・カーン所有、ロワイヤー=デュプレ厩舎ということでペースメーカーを務めるザヴァルヤ Zavallya がレースを引っ張ります。最後方から差す作戦のヴェダは疲労が残っていたのか全く精彩なく6着敗退。優勝は2番手の内に付け、残り2ハロンで先頭に立った2番人気(29対10)のフィントリー Fintry でした。1馬身4分の1差で3番人気(78対10)のラ・ホゲット La Hoguette が2着、頭差で4番人気(10対1)ケンザダルジャン Kenzadargent が3着。
フィントリーは前のレースに続きアンドレ・ファーブル厩舎で、早々とダブル達成。鞍上はマクシム・グィヨン、ゴドルフィンの所有馬です。前走シャンティーのリステッド戦(重馬場の1600メートル)で2着以下を6馬身離して勝った馬で、その前のロンシャン条件戦ではヴェダに2馬身差で2着していました。今回の本命馬との再戦で雪辱を果たした形です。

続いてはダービーの後に組まれていたG戦2鞍。
シャンティー大賞典 Grand Prix de Chantilly (GⅡ、4歳上、2400メートル)は、閉鎖されたエヴリ―競馬場のエヴリ―大賞典を引き継いだもの。8頭が出走し、去年から3連勝中のスピリットジム Spiritjim が21対10の1番人気。

長距離は先に行った方が勝ち、とばかり先手を取ったスピリットジム、結局は4番人気(48対10)ナウ・ウィー・キャン Now We Can の追い込みを頭差凌いでの逃げ切り勝ちです。1馬身半差で3番人気(33対10)のノーズ・キング Norse King が3着。ゴーイング・サムホェア Going Somewhere が故障を発症して競走中止。
パスカル・ベイリー厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のスピリットジムは、前走デドーヴィル賞(GⅢ)に続いてG戦連勝。Ⅲ→Ⅱとランクを上げてきましたから、次はGⅠ制覇が目標でしょう。

最後は短距離のグロ=シェーヌ賞 Prix du Gros-Chene (GⅡ、3歳上、1000メートル)。短距離はイギリスが強いという伝統で、英国から挑戦の3頭を含めて6頭立て。しかし4対5の断然1番人気に支持されたのは前走サン・ジョルジュ賞(GⅢ)に勝った地元のキャットコール Catcall でした。

レースは英国のフスティーノ Justino が逃げ、これも英国馬ステッパー・ポイント Stepper Point が追走。これを追った3番人気(63対10)のランガリ Rangali が瞬発力を発揮して前を捉えると、後方から追い込むキャットコールに2馬身差を付ける快勝です。更に4分の3馬身差で2番人気(4対1)のディバージ Dibajj が3着に入り、英国勢は残り3頭に敗退。短距離界の流れに変化が来たというより、今回の挑戦馬は人気も無く、やはり実力が出たということなのでしょう。
アンリ=アレックス・パンタル厩舎、ファブリース・ヴェロン騎乗のランガリは、出走馬中唯一の3歳馬。前走メゾン=ラフィットのリステッド戦(重馬場の1200メートル)に勝っての連勝となりました。

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