雨に祟られたカラー競馬場

昨日もヨーロッパではGⅠ戦が続きました。アイルランドとフランス、順に取り上げましょう。

カラー競馬場は金曜日からの3日間開催で、昨日はその最終日でした。G戦は4鞍。
最初はグランジコン・スタッド・ステークス Grangecon Stud S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)、土曜日のレイルウェイ・ステークスの牝馬版に相当するものです。以前はバランシン・ステークス Balanchine S として知られていたレースで、去年からGⅢに格付けされたばかり。

馬場は雨が続いて前日よりも悪化、soft to heavy という公式発表はほとんど「不良」という状態です。予定されていた出走馬から1頭が取り消し、7頭立てで行われました。
1番人気(11対8)に推されたトゥルー・ヴァーディクト True Verdict は、ナース競馬場で2着を2度続けている馬ながら未勝利。2番人気(10対3)のセント・オブ・ロージズ Scent of Roses もまた2着が1度だけという未勝利馬です。

しかし勝ったのは3番人気(9対2)のセンドマイラヴトゥーローズ Sendmylovetorose 、ナヴァン競馬場の新馬戦(5ハロン)に勝っていた馬でした。1馬身4分の1差で本命トゥルー・ヴァーディクトが2着、更に4馬身差3着はスロープ Slope 。
勝馬の名前を聞いて思い出された方もあろうかと思いますが、ロイヤル・アスコットのアルバニー・ステークスでゲートに潜り込んで発走除外になっていたあの馬ですね。アスコットの悪夢が馬にどう影響するかに不安がありましたが、今回はスタートから積極的にレースを進め、先頭を奪った後は2着以下を寄せ付けない楽勝でした。
管理するアンドルー・オリヴァー師、騎乗したコーム・オダナヒュー共に安堵したことでしょう。1番人気にならなかったのは、あのアクシデントがあったためでしょうか。

続いてはフライアースタウン・スタッド・インターナショナル・ステークス Friarstown Stud International S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)、去年は3日間開催初日に組まれていましたが、今年は最終日に行われました。ここも取り消しが1頭、5頭立てです。

ここは順当、2009年と去年の2度に亘ってこのレースを制しているフェイマス・ネーム Famous Name が4対7の圧倒的1番人気に応え、3度目の勝利を飾りました。2着は3馬身4分の3差で逃げたディファイニング・イヤー Defining Year 、更に3馬身4分の1差でネイティヴ・カーン Native Khan が3着。
フェイマス・ネームはデルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗の7歳牡馬。ハーリッド・アブダッラー殿下の持ち馬で、何とこれが通算17勝目という馬主孝行のタフな馬。今年初産駒を出すニュー・アプローチ New Approach と同世代ですが、未だ馬自身に気力があり、フェイマス・ネームが“引退したい”と言うまでは現役を続ける意向だそうです。

そしてGⅠのプリティー・ポリー・ステークス Pretty Polly S (GⅠ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。当初7頭が登録していましたが、その中には今年のオークス馬ウォズ Was と同5着のメイビー Maybe の名前がありました。結果的には両頭を含め3頭が取り消して4頭立てのレースになってしまいます。翌週に愛オークスを控えていてもウォズが登録していたのは、日本的感覚から言えば不思議だと言わざるを得ません。

1番人気(10対11)のサファイア Sapphire はGⅠ初出走ですが、前走コーク競馬場のノーブレス・ステークス(GⅢ)に勝った4歳の上がり馬、スタートから先頭に立って逃げ切りを図ります。
しかしこれを2番手でがっちりマークしていた2番人気(6対4)のイッツィ・トップ Izzi Top が並び掛けると、あとは2頭のマッチレース。より馬場への適性が高いイッツィ・トップが本命に1馬身4分の1差を付けてGⅠ初制覇。半馬身差3着にアイム・ア・ドリーマー I’m A Dreamer が入り、更に半馬身で唯一の3歳馬アップ Up がしんがり。

勝ったイッツィ・トップは去年のオークス3着馬。GⅠ出走経験はオークスだけでしたが、4歳の今シーズンはニューマーケットのダーリア・ステークス(GⅢ)、ヨークのミドルトン・ステークス(GⅡ)と順当にランクを上げて連勝してきました。
管理する英国のジョン・ゴスデン師は、現在の拠点であるニューマーケットのクレアヘヴン・ステーブルがかつて名牝プリティー・ポリーの調教地点だったことを強調して勝利の喜びを表現しています。ウイリアム・ビュイック騎乗。

カラーの最後はカラー・カップ Curragh Cup (GⅢ、3歳上、1マイル6ハロン)。ここも1頭が取り消して7頭立て。古馬3頭に3歳馬4頭というメンバー構成です。
2対1の1番人気は、昨シーズンからハンデ戦、リステッド戦と5連勝中のミッドナイト・ソプラノ Midnight Soprano 。重馬場も得意で、G戦初挑戦のここでも連勝記録を伸ばせると期待を集めていました。

しかし結果は2番人気(5対2)の3歳馬ハータニ Hartani の逃げ切り勝ち。ミッドナイト・ソプラノも中団から差を詰めましたが、勝馬から5馬身半差の2着。3着は更に4分の3馬身差でオファー Offer の順。

ジョン・オックス厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗のハータニはアガ・カーンの持馬。これが未だ4戦目で、未勝利戦、一般戦といずれも12ハロンのレースに連勝、これで3連勝。長距離向きの馬で、セントレジャーはイギリスとアイルランドの両方に登録があります。陣営ではよりスタミナを要求される愛セントレジャーが向いていると考えている由。

日曜日、これでアイルランドを後にしてフランスはシャンティー競馬場に行きましょう。こちらは good の馬場で、アイルランドよりは暖かい空気が楽しめます。
シャンティーのG戦は、GⅠを含め3鞍。レース順にレポートして行きましょう。

最初はフランス最初の2歳G戦となるボア賞 Prix du Bois (GⅢ、2歳、1000メートル)。9頭が出走し、ロイヤル・アスコットのクィーン・メアリー・ステークス(GⅡ)で3着したヘアリー・ロケット Hairy Rocket が9対5の1番人気に支持されていました。2歳馬のレヴェルを測る基準でもありましょう。

しかし英国からリチャード・ハノン師が送り込んだヘアリー・ロケットは7着敗退、優勝は108対10(5番人気)の伏兵スノーデイ Snowday でした。1馬身差2着トゥー・マイ・ヴァレンタイン To My Valentine 、短頭差3着のサージュ・メロディー Sage Melody 共々単勝10倍以上の波乱です。
先行抜け出して最初のG戦を制したスノーデイはカルロス・ラッフォン=パリアス厩舎、オリヴィエ・ペリエ騎乗の牡馬。これが4戦目で、前走ローカル競馬(ル・クロワーズ=ラロッシュ競馬場)で初勝利を挙げたばかりでした。

続いてGⅠのジャン・プラ賞 Prix Jean Prat (GⅠ、3歳牡牝、1600メートル)。8頭が出走してきましたが、出走馬中GⅠ馬はクリテリウム・インターナショナルに勝ったフレンチ・フィフティーン French Fifteen 1頭だけという寂しいメンバー。GⅠとは名ばかりのレヴェルの低いレースになった感は否めません。
2000ギニー2着、仏ダービー10着(20頭立て)の実績もあるそのフレンチ・フィフティーンが6対4の1番人気。

レースは英国(ミック・シャノン厩舎)から挑戦したアーノルド・レーン Arnold Lane が逃げ、フレンチ・フィフティーンは後方待機策。
2番手を進んだセント・ジェームス・パレス・ステークス(GⅠ)3着馬グレゴリアン Gregorian (8対1、4番人気)が直線でこれを交わし先頭に立ちましたが、遅巻きながら4番手を追走していた伏兵(101対10、6番人気)イソップス・ファーブル Aesop’s Fables のエンジンが漸く掛かり、グレゴリアンを1馬身捉えてG戦初勝利。2馬身差で3着にはこれまた人気薄(42対1)のクー・ド・テアター Coup De Theatre が食い込む大波乱です。人気のフレンチ・フィフティーンは7着と不発。2番人気(3対1)のザナドゥ Xanadou が漸く4着、3番人気(4対1)ソーファスト Sofast 5着、ドイツ2000ギニーを制して挑戦したカスパー・ネッチャー Caspar Netcher も6着と総崩れでした。

アンドレ・ファーブル師が管理、マキシム・グィヨン騎乗のイソップス・ファーブルは2歳時のシャンティー競馬場での勝利に続く未だ2勝目。前走パレ・ロワイアル賞(GⅢ、ロンシャン)では3着していた馬です。ファーブル師のジャン・プラ制覇は、1989年のローカル・タレント Local Talent 、1992年キットウッド Kitwood 、去年のミューチュアル・トラスト Mutual Trust に続き4勝目。鞍上グィヨンは去年に続く2連覇となりました。

昨日最後のパターン・レースはクロエ賞 Prix Chloe (GⅢ、3歳牝、1800メートル)。前日のダフニス賞とセットになる一戦です。1頭取り消しがあり、13頭立て。
この日のG戦は続けて波乱となりましたが、最後は本命馬(イーヴン)がシッカリ勝って内容を引き締めました。優勝はミケール・デルザングレ厩舎、クリストフ・ルメール騎乗のリダシーナ Ridasiyna 、アガ・カーンの所有馬です。2着は2馬身差でロマンティカ Romantica 、3着は更に1馬身4分の1差でロック・ミー・ベビー Rock Me Baby 。

好位差しで強い競馬、見事期待に応えたリダシーナは3歳デビュー、ロンシャンの未勝利戦(11ハロン)とメゾン=ラフィットのリステッド戦(10ハロン)に連勝して3戦無敗。秋に向けて新たなスターの誕生と言えるでしょう。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【雨に祟られたカラー競馬場】

    昨日もヨーロッパではGⅠ戦が続きました。アイルランドとフランス、順に取り上げましょう。カラー競馬場は金曜日からの3日間開催で、昨日はその最終日でした。G戦は4鞍。最初は…

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