マカヒキの評価は?

お待たせしました、という程のことでもありませんが、昨日の日曜日にシャンティー競馬場で行われたトライアル・シリーズを紹介していきましょう。施行されたレース順にレポートします。

この日の馬場は good 。先ずアベイ・ド・ロンシャン賞のトライアルとなるプティ・クーヴェール賞 Prix du Petit Couvert (GⅢ、3歳上、1000メートル)は流石に13頭立てと頭数も多く、去年のアベイ勝馬で今期もキング・ジョージ・ステークス(GⅡ)で3着している英国馬ゴールドリーム Goldream が23対10の1番人気。
7番人気(197対10)の伏兵ジャスト・グラマラス Just Glamorous が飛び出すと、先行グループから伸びた2番人気(5対2)のマーシャ Marsha に3馬身差を付ける圧巻の逃げ切り勝ち。2番手を追走したゴールドリームは、1馬身半差の3着でした。短距離に強い英国馬が1着から3着まで独占したということでは順当と言えるでしょう。

勝ったジャスト・グラマラスは、ロナルド・ハリス厩舎、ピエール=シャルル・ブードー騎乗の3歳馬。本来は英国からテッド・ダンカン騎手が遠征してくるはずでしたが、フライトにトラブルが発生して飛べず、ブードーに乗り替わっていました。ウイリアム・ビュイックも同じトラブルで渡仏できず、乗り替わった馬も出ています。
ジャスト・グラマラスはここまでほとんどハンデ戦ばかりで戦ってきた馬で、前走もヨーク競馬場の5ハロン・ハンデ戦。この勝利で次はアベイ、という欲望も生まれてきたのじゃないでしょうか。

続いては、この日行われた凱旋門賞のトライアルでもあるG戦3鞍の第一弾、ニエル賞 Prix Niel (GⅡ、3歳牡牝、2400メートル)。3歳馬限定と言うこともあり、参戦は僅かに5頭。ご存知のように2013年にはキズナが勝ったこともあり、日本ダービー馬マカヒキ(現地では Makahiki と表記)が2対5の圧倒的な1番人気。日仏の競馬レヴェル比較が難しいのですが、レーシングポスト紙の独自レーティングではマカヒキの135が他を断然圧しています(第2位はミッドターム Midterm の124)。
5月以来の競馬で評価を下げている4番人気(8対1)のミッドタームが逃げ、例によって最後は3頭の瞬発力勝負に。前半3番手に付けたマカヒキが3頭の中では最後にスパートし、外からミッドタームを首差捉えて人気に応えました。2番手を進んだ2番人気(42対10)のドーハ・ドリーム Doha Dream が短頭差で3着。

マカヒキについては紹介するまでもないでしょう。騎乗したクリストフ・ルメールは、僅差勝ちだったことを5月以来の実戦を理由にしていましたが、それはミッドタームも同じ。なおミッドタームもダンカンが渡仏できず、ヴィンセント・シャミノーに乗り替わっていました。
楽勝でも僅差だったことで、マカヒキの評価はフランスでも割れているようですね。凱旋門賞のオッズは、レース前の8対1から5対1に上げたブックメーカーもあれば、10対1のまま変えていない賭け屋もあります。ネットで見た日本の海外競馬通評論氏によると、ここは3馬身差で楽勝する筈だとか。主力馬たちのほとんどがアイリッシュ・チャンピオンを使い、一方で凱旋門賞直行組も。正直なところ、やってみなければ判りません。2着のミットタームも凱旋門賞の下馬評に挙がっており、こちらは33対1です。

次のヴェルメイユ賞 Prix Vermeille (GⅠ、3歳上牝、2400メートル)も6頭立ての少頭数。去年はトレーヴ Treve が圧勝して凱旋門賞の本命に推されたレースですが、今年は去年の2着馬カンダリーヤ Candarliya が6対4の1番人気。4頭出走してきた3歳馬を抑え、ここは負けられないところでしょうか。
逃げたのはもう1頭の4歳馬で5番人気(12対1)のエンドレス・タイム Endless Time 、この馬もビュイックが乗れずバルザロナに乗り替わっています。カンダリーヤはこれをマークして進み、2番手まで上がりましたがそこまで。やはり先行していた3番人気(7対2)のレフト・ハンド Left Hand が残り50ヤードで突き抜けると、粘るエンドレス・タイムを半馬身差し切っての優勝。4分の3馬身差で、2番手でマークしていた最低人気(14対1)のザ・ジュリエット・ローズ The Juliet Rose が3着。

クリストフ・ラッフォン=パリアス厩舎、マクシム・グィヨン騎乗のレフト・ハンドは、仏オークスでラ・クレソニエール LaCressonniere の2着した馬。夏のドーヴィルでプシケ賞(GⅢ)に勝ってG戦初勝利を果たし、G戦2連勝でGⅠ馬となりました。
この馬も凱旋門賞とアスコットを二股に賭けていて、凱旋門賞のオッズは33対1。一方アスコットのチャンピオン・フィリーズ・アンド・メアーズは12対1となつています。その一方で、凱旋門賞直行が伝えられるラ・クレソニエールは7対1。敵陣が何処へ向かうのか、相手は誰になるのか、オッズはいくらか等々が最終判断の材料になるのでしょう。

凱旋門はここで一服し、次はマイルのチャンピオン決定戦的なムーラン・ド・ロンシャン賞 Prix du Moulin de Longchamp (GⅠ、3歳上牡牝、1600メートル)。それにしてはここも6頭立てと寂しく、前走ジャン・プラ賞(GⅠ)を制した3歳馬のゼルザル Zelzal が17対10の1番人気。
2番人気(21対10)のザラク Zarak が飛び出し、その後フランス特有のスローに落として逃げます。ゼルザルは後方2番手から末脚に賭けましたが、2番手を進んだ3番人気(12対5)のヴァダモス Vadamos が抜け、第4コーナーでは1馬身差で直線。後方から最低人気(24対1)のスペクトル Spectre が追い上げましたが、ヴァダモスが1馬身4分の1差を付けて快勝。更に1馬身4分の1差で本命ゼルザルは3着に終わりました。

5歳にしてGⅠ戦初勝利となったヴァダモスは、ムーラン6勝目となるアンドレ・ファーブル師の管理馬で、ヴィンセント・シャミノー騎乗。今期はミュゲ賞(GⅡ)、前々走メッシドール賞(GⅢ)に勝っており、前走ジャック・ル・マロワ賞(GⅠ)は2着でした。
彼もまたアスコットのクィーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ)を狙っており、オッズは8対1。今年のQEⅡもかなりのハイ・レヴェルな戦いになることが期待されます。オーナーがオーストラリア人ということもあり、コックス・プレートも青写真に入っている由。アメリカのBC遠征も含め、馬場が良いことが参戦の条件になるでしょう。

凱旋門賞トライアルの最後は、古馬のためのフォア賞 Prix Foy (GⅡ、4歳上牡牝、2400メートル)。この日のトライアルでは最も頭数が少ない4頭立てとなり、前走サン=クルー大賞典に勝ってGⅠ馬となったシルヴァーウェイヴ Silverwave がイーヴンの1番人気。
一番人気の無い(78対10)のイトウ Ito が逃げましたが、2番手に付けたシルヴァーウェイヴがこれを1馬身捉えて人気に応えました。1馬身4分の3差で3番手を進んだ3番人気(33対10)のエリプティク Eliptique が3着。

パスカル・ベイリー厩舎、ヴェルメイユ賞に続きマクシム・グィヨンのG戦ダブルとなったシルヴァーウェイヴは、去年の仏ダービー9着、パリ大賞典4着。秋はニエル賞で仏ダービー馬ニュー・ベイ New Bay の2着した後、凱旋門賞は10着でした。
今期はダルクール賞(GⅡ)7着から始動し、ガネー賞2着、イスパハン賞3着を経て、サン=クルー大賞典優勝。これでG戦2連勝となり、凱旋門賞のオッズは25対1となっています。マカヒキの5対1と比べて高いか低いか?

日曜日の最後は、長距離GⅠカドラン賞のトライアルとなるグラディアトゥール賞 Prix Gladiateur (GⅢ、4歳上、3000メートル)。ロンシャンでは3100メートルですが、シャンティーはコースの関係から100メートル短くなります。ここも6頭立てと少頭数で、前走サン=クルー大賞典こそ距離が短く7着に敗れたものの、それまでの長距離戦では無敵だったヴァジラバド Vazirabad が3対5の断然1番人気。
2番人気(19対5)でこれまでローカル競馬が中心だったナフアル Nahual が逃げましたが、後方2番手から末脚を伸ばしたヴァジラバドが、ゴールでは辛うじてナフアルを短首差捉えて面目を保ちました。3馬身半差で内を先行していた4番人気(10対1)のセットラーズ・サン Settler’s Son が3着。

アガ・カーンがオーナー、アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のヴァジラバドは、去年の仏セントレジャーを含めて前走で負けるまでは7連勝していたステイヤー。今年未だ4歳ですが、この秋はカドラン賞から仏セントレジャー連覇へと、ステイヤーとしてのステイタスを極めて行って貰いたいと思います。

 

 

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