華麗なり、シャンタル・サザーランド

昨日は盛り沢山のアメリカ競馬、何処から行こうか迷ってしまいますが、フロリダのカルダー競馬場からスタートしましょうか。焦らずノンビリ見ていくことにします。終わるのは何時かな?

さてフロリダは「スピード・サミット」と銘打たれているように、G戦4鞍はいずれも6ハロンの短距離戦。馬場はいずれも fast 、レース順に取り上げ、最後はGⅠ戦で締めとします。
先ずは3歳の男馬による キャリー・バック・ステークス Carry Back S (GⅢ、3歳、6ハロン)。去年まではGⅡだった一戦ですが、今年はGⅢに降格されてしまいました。2頭取り消して5頭立て。1対5の圧倒的1番人気には、この後のスマイルにも登録のあったトリンニバーグ Trinniberg 。古馬との対決を避けて安全な同世代戦に回ってきました。出走馬中唯一のG戦勝馬。スウェイル(GⅢ)、ベイ・ショア(GⅢ)と連勝し、ケンタッキー・ダービーは17着、そのあとウッディー・スティーヴンズ(GⅡ)も制して4つ目のG勝利を狙います。
ところがトリンニバーグの逃げは最後で2番手追走の2番人気(9対5)フォート・ラウドン Fort Laudon に捉まってしまいます。最後の直線は人気2頭のマッチレース、外のフォート・ラウドンに首差軍配が上がりました。3着は13馬身4分の3差というトンデモナイ大差が付いてエンジェルオブディスティンクション Angelofdistinction 。
スタンレー・ゴールド厩舎、フェルナンド・ジャラ騎乗のフォート・ラウドンは、ここカルダーで一般ステークスの連勝も含めて3連勝でG戦初勝利を飾りました。フロリダ産馬で、フロリダ・ダービーは6着だった馬。

続いては3歳牝馬のみのアザレア・ステークス Azalea S (GⅢ、3歳牝、6ハロン)。こちらは取り消しも無く9頭が出走してきました。2対1の1番人気はシチズン・アドヴォケイト Citizen Advocate 、2歳時に一般ステークスを3勝しながら、今シーズンは未勝利の馬。
イクスクルーシヴリー・マリア Exclusively Maria の2番手から抜け出したシチズン・アドヴォケイトでしたが、4番人気(9対2)の伏兵アナザー・ロマンス Another Romance の急襲に1馬身4分の3差で脚を掬われてしまいました。前半は最後方、第4コーナーでも後ろから4番手で回り、内から抜け出しての逆転劇です。3着は1馬身半差で3番人気(4対1)のレッドバド・ロード Redbud Road 。
ウイリアム・カプラン厩舎、ルカ・パチーニ騎乗のアナザー・ロマンスは、前走リーヴ・ミー・アローン・ステークス(一般ステークス)に続くステークス2連勝。前走でも本命シチズン・アドヴォケイトを差し切っていましたが、今回はペナルティーで負担重量を5ポンドも課せられていたために人気を落としていたもの。終わって見れば強かったということでしょうか。

6ハロン戦3鞍目は、勝馬にはブリーダーズ・カップ・スプリントの優先出走権が与えられるスマイル・スプリント・ハンデキャップ Smile Sprint H (GⅡ、3歳上、6ハロン)。3歳戦に回ったトリンニバーグを含む2頭が取り消して8頭立てで行われました。1番人気(9対5)は5歳せん馬のガントリー Gantry 。前走チャーチル・ダウンズ・スプリント(GⅡ、7ハロン)でシャックルフォード Shacleford 、アマゾンビー Amazonbie とスピードを競い3着した馬、それに先立ってフェアグラウンズの6ハロンの一般ステークスに連勝したスピード馬です。フロリダは初見参。
大外10番枠スタートのガントリー、4番手から徐々に進出し、直線では2番手に上がって逃げるアーテファクト Artefacto を捉えると後は一人旅。3頭の2着争いを尻目に5馬身差の圧勝です。2着はハナ差でインディアノ Indiano がクローズ・イット・アウト Close It Out を抑え、逃げたアーテファクトが4着。レース中、2番人気(2対1)のフィールド・コミッション Field Commission が故障を発症してレースを中止しました。
ロン・フォショーノ厩舎、リチャード・エラミア騎乗のガントリーは、これで6ハロン戦は6戦して負けなし。当然ながら出走権を獲得したBCスプリントを目指すでしょう。

スピード・サミットの最終戦は、愈々GⅠのプリンセス・ルーニー・ハンデキャップ Princess Rooney H (GⅠ、3歳上牝、6ハロン)です。11頭が出走し、何と出走馬中6頭がマーティー・ウルフソン厩舎の馬というメンバー構成。しかしイーヴンの1番人気に支持されたのは、ウイリアム・カプラン厩舎のミュージカル・ロマンス Musical Romance でした。去年のBCフィリー・アンド・メアを制した短距離牝馬のチャンピオン、前走インサイド・インフォメーション・ステークス(GⅡ)にも勝って万全に見えましたが、陣営の自信は今一つのようです。
しかし終わって見れば強かった。レースは描いていたシナリオ通りに進み、逃げるゴールデン・ミステリー Golden Mystery を3番手でマークし、直線で外から逃げ馬を捉えると、外から追い込む2番人気(5対2)のニコール・エイチ Nicole H を半馬身抑えて堂々期待に応えました。3着は2馬身4分の3差でナカノ Nakano (中野?)という馬。
フアン・レイヴァの落ち着いた、自信に溢れた騎乗が目立ったミュージカル・ロマンスは、二つ前のアザレアを制したアナザー・ロマンスと同じオーナーの馬。去年のこのレースはサッシー・イメージ Sassy Image に首差2着と涙を呑みましたが、見事に雪辱を果たした形です。陣営の不安は去年の苦い経験があったからかも。それを吹き飛ばし、今年もBCに向かって2連覇を目指します。

次はシスルダウン競馬場に行きましょうか。オハイオ州では唯1鞍行われるグレード戦のオハイオ・ダービー Ohio Derby (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。馬場は fast 最初から登録は5頭と少なかったのですが、1頭取り消して僅かに4頭立て。何とも単調なダービーになった感は否めません。
結果も全くシンプルなもの。3番手に付けた3対5の1番人気プロスペクティヴ Prospective が、逃げた2番人気(3対2)ポリティカリーコレクト Politicallycorrect を直線で捉え、2馬身半差の快勝。3着は8馬身4分の3差でズィー・ロックスター Z Rockstar が入り、力の差が歴然のデフィアント・フライアー Defiant Flyer は途中からペースに付いて行けずどん尻負け。
今年ステークス3勝目となるプロスペクティヴは、マーク・カッセ厩舎、ジェルメーヌ・ブリッジモーハン騎乗。カナダで出走することが多く、タンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)に勝った後ケンタッキー・ダービーは18着。そのあとカナダでステークスに勝ち、ここに臨んでいました。

ここでニューヨークに飛びましょう。ベルモント・パーク競馬場から2鞍です。先ずはヴィクトリー・ライド・ステークス Victory Ride S (GⅢ、3歳牝、6ハロン)。fast の馬場に6頭が出走してきました。1対4の圧倒的支持を集めたアガーヴェ・キス Agave Kiss はここまでシカーダ・ステークス(GⅢ)を含め6戦全勝。一度もハナを奪われたことの無い快速馬で、ここでも負けるわけはない、という評価でした。
ところが競馬は何が起きるかわからないもの、いつものように好ダッシュでハナに立ちましたが、3番人気(7対1)のジャマイカン・スモーク Jamaican Smoke に競り掛けられるアッサリと後退、信じられない5着ブービーに惨敗してしまいました。驚愕はそれだけではありません。前半は離れた5番手、ペースに付いて行けないようにも見えた最低人気(39対1!)のエマズ・アンコール Emma’s Encore が直線で一気に加速、あれよあれよと見る間にジャマイカン・スモークに2馬身4分の3差を付けて快勝する大波乱です。3着は首差でトゥー・エンディー・ウェイ Tu Endie Wei という人気薄(11対1、4番人気)。
アレン・ジャーケンス厩舎、ジュニア・アルヴァラド騎乗のエマズ・アンコールは、これが3勝目でステークスはもちろん初勝利。ペースが速かったのか初めて競り掛けられたのが響いたのか、本命馬の思わぬ失速に漁夫の利を得た感がしないでもない短距離戦でした。

続いてはアメリカでも最も長い歴史を持つレースの一つ、サバーバン・ハンデキャップ Suburban H (GⅡ、3歳上、9ハロン)。かつてはGⅠでしたが、今はGⅡに格下げされてしまいました。それでも1頭取り消しの7頭立ては、GⅠ馬が3頭。競馬のレヴェルはGⅠ並みと評しても良いでしょう。その3頭とは、トラヴァース・ステークスの勝馬ステイ・サースティー Stay Thirsty 、ドン・ハンデ勝馬のヒム・ブック Hymn Book 、それにシガー・マイルの覇者トゥー・オナー・アンド・サーヴ To Honor and Serve 。トゥー・オナー・アンド・サーヴが7対5の1番人気に支持されていました。
しかしここでも本命馬は敗退。トリックマイスター Trickmeister の逃げにヒム・ブックが競り掛ける展開になりましたが、3番手に押し上げてきた5対1(3番人気)のムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man が鮮やかに抜け出し、追い縋るヒム・ブックに2馬身半差を付けて快勝。更に3馬身差でトリックマイスターが粘り、本命トゥー・オナー・アンド・サーヴは2馬身遅れて4着。ステイ・サースティーは5着に終わりました。
キャサリン・リトヴォ厩舎のムチョ・マチョ・マン、今回はマイク・スミスがカリフォルニアから駆け付けての初騎乗で、名手の期待が見事に花を咲かせました。3月にはガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)に勝ち、本命で臨んだアリシェバ・ステークス(GⅡ)は惜しくも3着。次は待望のGⅠ制覇を目指すでしょう。

モンマス・パーク競馬場からも2鞍、最初は fast のメインコースで行われたモンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅡ、3歳上、8ハロン)から。1頭取り消しがあり5頭立て。去年のジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)の勝馬フラット・アウト Flat Out が7対5の1番人気に支持されていました。
レースはスローン・レンジャー Sloane Ranger の逃げ、本命フラット・アウトは3~4番手に待機します。しかし3コーナーでそれまで2番手に付けていた3番人気(5対2)のルール Rule が積極的に並び掛け、先行2頭が並んで直線に。最後は叩き合いに競り勝ったルールが、追い上げたフラット・アウトに1馬身半差を付けて優勝。頭差3着にスローン・レンジャーが粘り込みんでいます。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のルールは、去年10月のホーソン・ゴールド・カップで7着に終わって以来の実戦。5歳のデビュー戦を見事休み明けで飾りました。3歳時にはフロリダ・ダービー、去年はドン・ハンデ、ウッドワード・ステークスとGⅠ戦線で好走してきた馬、今シーズンの活躍が期待されます。

モンマスの2鞍目は、BCターフへの優先出走権が与えられるユナイテッド・ネイションズ・ステークス United Nations S (芝GⅠ、3歳上、11ハロン)。firm の芝コースに7頭が顔を揃えました。ターフ・クラシック、チャールズ・ウィッティンガム・メモリアル・ハンデと2戦続けてGⅠレースで2着してきたスリム・シェイディー Slim Shady が120ポンドのトップ・ハンデにも拘わらず2対1の1番人気に支持されています。
レースは並んだ2番人気(5対2)に支持されたターボ・コンプレッサー Turbo Compressor の逃げ、11ハロンの長丁場は淡々と進みます。2番手を進んだ最低人気(65対1)のフロイズ・オナー Freud’s Honour も終始競り掛けることは無く、そのまま2着に1馬身4分の3差を付ける逃げ切り勝ち。2着には早目に上がったエア・サポート Air Support が食い込み、2馬身差でこれも前に付けていたアル・カリ Al Khali 。本命スリム・シェイディーは5着、並んだ2番人気のブリリアント・スピード Brilliant Speed も6着と、後方に待機した馬はいずれも末脚不発に終わりました。
ターボ・コンプレッサーで4度目のユナイテッド・ネイションズを制したトッド・プレッチャー師、これが同レース初勝利となるジョー・ブラーヴォ騎手共にモンマス・カップに続きG戦ダブル達成。 勝馬はこれで芝コースは4戦して3勝目となり、G戦初勝利を記録。芝で唯一敗れたターフ・クラシック(GⅠ、8着)は good (稍重)の馬場でのもの。馬場が硬いここでは馬本来の実力を出せたのでしょう。もちろんBCターフが最大の目標となります。

愈々最後はハリウッド・パーク競馬場。ここもG戦は2鞍で、メインはGⅠのハリウッド・ゴールド・カップ、これもBC出走権の掛かった重要なステップ・レースとして大注目ですね。最初はロイヤル・ヘロイン・マイル・ステークス Royal Heroine Mile S (芝GⅡ、3歳上牝、8ハロン)。芝コースは firm 、8頭が出走してきましたが、こちらは追い込み馬が制しています。
8対5の1番人気に支持されたのは、去年の10月からラス・パルマス・ステークス(芝GⅡ)を含めて3連勝のオール・スター・ハート All Star Heart 。しかし追い込みを決めたのは2番人気(3対1)だったクワイエット・オアシス Quiet Oasis の方。先行馬を5番手で待機し、直線でグイグイ加速、ゴール寸前で頭差差し切っての優勝。頭差2着は2番手追走のメガ・ドリーム Mega Dream が入り、首差3着に逃げたブリーキャット Briecat 。クワイエット・オアシスの直後、6番手を進んだ本命オール・スター・ハートは全く伸びず8着のどん尻負けを喫しました。
ベン・セシル厩舎のクワイエット・オアシスは、2歳の終わりに英国ブライアン・ミーハン厩舎から買われた馬。何と新しい馬主(レッダム・レーシングLLC)と同馬に騎乗したマリオ・グティエレス騎手は、2冠馬アイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another と同じコンビ。G戦勝利は今年4月のウィルシャー・ハンデ(芝GⅢ)に続く2勝目となります。

盛り沢山だった土曜日最後のレポートは、BCクラシックへの優先出走権が付与されるハリウッド・ゴールド・カップ Hollywood Gold Cup (GⅠ、3歳上、10ハロン、BC)。fast のオール・ウェザー・コースに7頭が出走してきました。2対5の圧倒的1番人気は、去年GⅠに2勝(3月のサンタ・アニタ・ハンデと10月のグッドウッド・ステークス)したゲーム・オン・デュード Game On Dude 。ドバイ・ワールド・カップは12着敗退に終わりましたが、今期はサン・アントニオ・ステークス(GⅡ、2月5日)、カリフォルニアン・ステークス(GⅡ、6月2日)と連勝して復調をアピールしています。
レースはスパッド・スパイヴンス Spud Spivens が逃げましたが、2番手に付けたゲーム・オン・デュードは早くも向正面で先頭を奪い、そのまま他馬との差を開いて独走態勢に。前半6番手を進んだリチャーズ・キッド Richard’s Kid が直線で差を詰めてきましたが、最後まで1馬身半の差は縮まらず、堂々のGⅠ3勝目を飾りました。3着は6馬身4分の1の大差が付いてケトル・コーン Kettle Corn 、更に4馬身4分の1差でスパッド・スパイヴンスが4着。
ボブ・バファート調教師は1・2着両頭を管理しており、去年に続きゴールド・カップのワン・ツー・フィニッシュ達成。勝馬とコンビを組むシャンタル・サザーランドは、女性騎手としてゴールド・カップ初勝利となります。シャンタルは去年のゴールド・カップではゲーム・オン・デュードに女性として同レース初騎乗、惜しくも僚友ファースト・デュード First Dude の2着していた経緯があります。

この日、我が福永ジョッキーもハリウッドで一鞍騎乗していたはず。噂の美人ジョッキー、シャンタルの華麗な騎乗を目の前で見ていたことでしょう。いつかサザーランドと同じレースで腕前を競う日が近からんことを・・・。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【華麗なり、シャンタル・サザーランド】

    昨日は盛り沢山のアメリカ競馬、何処から行こうか迷ってしまいますが、フロリダのカルダー競馬場からスタートしましょうか。焦らずノンビリ見ていくことにします。終わるのは何時か…

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