ベルモントに挑戦する新星
今週のアメリカ競馬はクラシック二冠の間とあって、G戦の数も少なく、小欄としては落ち着いた気分で過ごせそうです。
5月10日土曜日のG戦はニューヨークとカリフォルニアの一鞍づつ、最初はベルモント・パーク競馬場で行われたピーター・パン・ステークス Peter Pan S (GⅡ、3歳、9ハロン)から。今年60回目を迎える伝統の3歳戦は、三冠最後のベルモント・ステークスへの挑戦者を決める一戦でもあります。1984年から87年の4年間だけGⅠに格付けされていたことでも知られる一戦。今年は雨のため馬場は sloppy 、それでも予定通り7頭が出走してきました。6対5の1番人気には、ステークスはデビューながら3戦1勝のトーナリスト Tonalist が選ばれています。
そのトーナリスト、スタートが悪く後ろから2頭目で前を追いましたが、直ぐに2番手、続いて先頭を奪うと、そのまま馬場の中央を通って独走。4番手から伸びた3番人気(7対2)のコミッショナー Commissioner に4馬身の大差を付けて見事期待に応えました。更に2馬身4分の1差が付いてブービー人気(19対1)のアイリッシュ・ユー・ウェル Irish You Well が3着。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のトーナリストは、1月18日に2戦目で初勝利(ガルフストリーム・パーク競馬場、2着に4馬身差)を挙げ、前走2月22日に行われた同じガルフストリームのアローワンス戦では、そのあとフロリダ・ダービー(GⅠ)に勝ったコンスティテューション Constitution の2着していました。この実績が人気に繋がったワケ。調教師・騎手共にピーター・パンは初制覇。クレメント師はニューヨーカーでもあり、ベルモントが本拠、爾後の様子見ではありましょうが、当然ながらベルモント・ステークスを視野に入れたと思われます。
土曜日のもう一鞍は、サンタ・アニタ競馬場で初めて行われるラザロ・バレラ・ステークス Lararo Barrera S (GⅢ、3歳、7ハロン)。もちろんハリウッド競馬場のG戦でしたが去年は施行されず、新たな地での再スタートとなります。fast の馬場に7頭が出走し、同じ距離のサン・ヴィセンテ・ステークス(GⅡ)を圧勝したコービーズ・バック Kobe’s Back が3対5の圧倒的1番人気。前走ベイ・ショア・ステークス(GⅢ)でも断然1番人気に支持されましたが、スタートで出遅れての3着、そこからの巻き返しに期待が掛かかっていました。
しかしコービーズ・バックは又しても出遅れ、後方2番手からの苦しい展開になってしまいます。1番枠から飛び出した2番人気(3対1)のフェロシアス Ferocious が逃げましたが、3番手を追走していたブービー人気(30対1)のトップ・フォーティテュード Top Fortitude が第3コーナーで並び掛けると、直線では一気に先頭。5番手から伸びた4番人気(9対1)でプエルト・リコのGⅠ馬トニート・エム Tonito M (今回がアメリカ・デビュー)に1馬身半差を付ける大波乱となりました。内ラチ沿いに粘ったフェロシアスが更に半馬身差で3着に入り、コービーズ・バックは直線で先頭に並び掛ける位置に進出するも最後はワンペースのまま4着敗退です。出遅れが響いたのか、済し崩しに脚を使ったのか、二戦続けての凡走となってしまいました。
コリー・オーウェンス厩舎、ケイラ・ストラ騎乗という恐らく当ブログ初登場の陣営が管理するトップ・フォーティテュードは、去年11月にハリウッドの6.5ハロン新馬戦でデビュー勝ちし、前走は4月12日に行われた好メンバーが揃ったアローワンス戦で10着最下位に敗れていた馬。そのときの1・2着(勝ったのがフェロシアス、2着は今回3番人気で最下位)馬も出走していたのですから、如何に勝馬に人気が無かったか、如何に波乱だったかが判るでしょう。G戦初挑戦が未だ3戦目、これで3戦2勝の同馬は、実はGⅡ(サン・パスカル・ハンデ)勝馬でサンタ・アニタ・ハンデ3着のウー・オー・バンゴ Uh Oh Bango の全弟という良血。前走を度外視すれば、前途有望な1頭でもあります。
今回がアメリカでのステークス初勝利となったストラ騎手は女性、先日ママになったばかりだそうで、この日のウイナーズ・サークルには赤ちゃんを抱いて記念撮影に応ずるなど、微笑ましい光景も見られました。それにしてもアメリカでは女性騎手の活躍が目立ちますネ。
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